14 / 18
精霊祭へ
しおりを挟む
今日は精霊祭の日だ。
慣例に従い、貴族だとわからないよう、リリーに町娘風の装いに仕立ててもらった。
「どう? リリー」
「最高ですお嬢様。銀髪はどうしても目立つので茶髪のカツラをつけましたが、それでもお嬢様の美貌は隠れるどころか白い肌を引き立てていてとても魅力的ですし、髪色と服装を地味にしたせいでいつもと違って親しみやすい雰囲気があるのでナンパが心配です。やはり精霊祭へ行くのは止めにしませんか?」
「もう、リリーったら……」
リリーはまだベルダ様を信用していないので、二人で出かけることに難色を示しているのだ。
「ベルダ様と一緒に行くのだから、ナンパなんてされないわよ。もしされたとしても、私ならきっと問題なくあしらえるはずだし」
これでも、氷の精霊の加護を受けた魔法使いなのだ。たとえ暴漢に襲われたとしても、返り討ちにできる自信はある。
「お嬢様が愛らしすぎるのでむしろそのベルダ様に警戒しないといけないのでは……」
「まぁ。リリーったら、どうしてベルダ様を警戒するの? 彼が私に危害を加えるはずないでしょう?」
「いや、危害といっても色々種類があると言いますか……」
「……まさか、ベルダ様がそういう意味で私を襲うと言っているの?」
リリーが心配性すぎる。
確かにベルダ様は最近私に対しての感情が暴走気味なところはあるが、さすがにそんな馬鹿なことをする人ではないはずだ。
「大丈夫よ。そんなに心配しないで?」
「お嬢様……。仕方ないので、今日は奴にお嬢様を預けることにしますが、もし何かあれば絶対に言ってくださいね。何としても私が処理しますから」
「リ、リリー……」
何をどう処理するというのだろうか。最近、うちのメイドが過激になってきているようで、心配になってしまう。
トントントン。
「お嬢様、ラングストン様がお越しですが、いかがされますか?」
「あっ、今行くわ。ありがとう」
「チッ」
メイドから報告を受け、私はベルダ様が待つ客間へ急いだ。リリーのと思われる舌打ちが聞こえたような気もするが、きっと気のせいだ。
「ベルダ様。お待たせいたしました」
「ルッ、ルナリア……!?」
私が部屋へ入ると、ソファに座っていたベルダ様がガバッと立ち上がった。そして、驚いたように私の姿をまじまじと見つめている。
「……あの、やっぱり茶髪はおかしいでしょうか?」
「いっ、いえ、何もおかしくありません。何も問題はございませんとも」
……どうして、また敬語になっているのかしら?
ブンブンと激しく首を横に振るベルダ様も、今日は裕福な平民といった様子のシンプルな装いだ。それでも、背が高くてスタイルがいい彼は、そんな服も完璧に着こなしている。赤い髪は平民にもいないわけではないので、そのままのようだ。
「はぁ、推しのコスチュームチェンジやばい。しかもそれが俺とデートするためって何のご褒美ですか。生きてて良かった神様ありがとうございます」
「……ベルダ様? 大丈夫ですか? もしかして体調が悪いのでは」
「大丈夫大丈夫! めちゃくちゃ元気だから。ルナリア、今日の格好も最高に可愛いよ!」
胸を押さえ、うつむき加減で何事か早口で喋っていた彼を心配して声をかければ、次の瞬間にはものすごく元気そうに顔を上げた。彼の情緒がよくわからない。
「さぁ、行こう。ルナリア」
「はい、ベルダ様」
ベルダ様が自然に差し出してきた手を、素直に取る。彼のエスコートを受けるのも、なんだか慣れてきた気がする。
そうして、若干ベルダ様に厳しい視線を送るリリーや他のメイドたちに見送られながら、私たちは精霊祭へと向かったのだった。
慣例に従い、貴族だとわからないよう、リリーに町娘風の装いに仕立ててもらった。
「どう? リリー」
「最高ですお嬢様。銀髪はどうしても目立つので茶髪のカツラをつけましたが、それでもお嬢様の美貌は隠れるどころか白い肌を引き立てていてとても魅力的ですし、髪色と服装を地味にしたせいでいつもと違って親しみやすい雰囲気があるのでナンパが心配です。やはり精霊祭へ行くのは止めにしませんか?」
「もう、リリーったら……」
リリーはまだベルダ様を信用していないので、二人で出かけることに難色を示しているのだ。
「ベルダ様と一緒に行くのだから、ナンパなんてされないわよ。もしされたとしても、私ならきっと問題なくあしらえるはずだし」
これでも、氷の精霊の加護を受けた魔法使いなのだ。たとえ暴漢に襲われたとしても、返り討ちにできる自信はある。
「お嬢様が愛らしすぎるのでむしろそのベルダ様に警戒しないといけないのでは……」
「まぁ。リリーったら、どうしてベルダ様を警戒するの? 彼が私に危害を加えるはずないでしょう?」
「いや、危害といっても色々種類があると言いますか……」
「……まさか、ベルダ様がそういう意味で私を襲うと言っているの?」
リリーが心配性すぎる。
確かにベルダ様は最近私に対しての感情が暴走気味なところはあるが、さすがにそんな馬鹿なことをする人ではないはずだ。
「大丈夫よ。そんなに心配しないで?」
「お嬢様……。仕方ないので、今日は奴にお嬢様を預けることにしますが、もし何かあれば絶対に言ってくださいね。何としても私が処理しますから」
「リ、リリー……」
何をどう処理するというのだろうか。最近、うちのメイドが過激になってきているようで、心配になってしまう。
トントントン。
「お嬢様、ラングストン様がお越しですが、いかがされますか?」
「あっ、今行くわ。ありがとう」
「チッ」
メイドから報告を受け、私はベルダ様が待つ客間へ急いだ。リリーのと思われる舌打ちが聞こえたような気もするが、きっと気のせいだ。
「ベルダ様。お待たせいたしました」
「ルッ、ルナリア……!?」
私が部屋へ入ると、ソファに座っていたベルダ様がガバッと立ち上がった。そして、驚いたように私の姿をまじまじと見つめている。
「……あの、やっぱり茶髪はおかしいでしょうか?」
「いっ、いえ、何もおかしくありません。何も問題はございませんとも」
……どうして、また敬語になっているのかしら?
ブンブンと激しく首を横に振るベルダ様も、今日は裕福な平民といった様子のシンプルな装いだ。それでも、背が高くてスタイルがいい彼は、そんな服も完璧に着こなしている。赤い髪は平民にもいないわけではないので、そのままのようだ。
「はぁ、推しのコスチュームチェンジやばい。しかもそれが俺とデートするためって何のご褒美ですか。生きてて良かった神様ありがとうございます」
「……ベルダ様? 大丈夫ですか? もしかして体調が悪いのでは」
「大丈夫大丈夫! めちゃくちゃ元気だから。ルナリア、今日の格好も最高に可愛いよ!」
胸を押さえ、うつむき加減で何事か早口で喋っていた彼を心配して声をかければ、次の瞬間にはものすごく元気そうに顔を上げた。彼の情緒がよくわからない。
「さぁ、行こう。ルナリア」
「はい、ベルダ様」
ベルダ様が自然に差し出してきた手を、素直に取る。彼のエスコートを受けるのも、なんだか慣れてきた気がする。
そうして、若干ベルダ様に厳しい視線を送るリリーや他のメイドたちに見送られながら、私たちは精霊祭へと向かったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
102
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる