恋に臆病なままではいられない

pino

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二章

15.履歴書では分からない事

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 お風呂と夕飯を済ませてリビングのソファで冬真と二人でくつろいでいた。冬真が俺を抱えるように座って、それに俺がもたれているような感じ。もうカップルじゃん。
 冬真はずっと俺に張り付いて首や耳にキスをしていたけど、それを気にする事なく冬真が書いた履歴書を読んでいた。先ほど撮って来たばかりの証明写真もちゃんと貼ってあった。良く撮れてるじゃん。後で余ったやつ貰おっと。


「へー、ちゃんと高校出てるんだ~」

「馬鹿にしてます?地元のですけど一応進学校でしたよ」

「馬鹿にしてないよ。てか俺なんか中卒だし」

「えっ」

「そっからずっと光ちゃんとこで働いてたんだよ。だからちゃんと高校出てるの偉いな~ってさ」


 普通は高校ぐらいは出てるか。やっぱり空を高校へ進学させて正解だったな。そして冬真は字がやたら綺麗だった。難しい漢字もちゃんと使ってるし、進学校だったと聞いて何でホストになったのか余計に気になって来たんだ。この履歴書だと、高校を卒業してから半年ぐらい空けてからホストになったって見えるけど、大学受験に失敗したとかかな?


「この半年空いてるのは何で?」

「フリーターでした」

「何もしてなかったの?ホストになろうと思ったきっかけはー?」

「何もしてませんでした。高校を卒業してからこっちに上京して来たんですけど、なかなか就職出来ずにお金に困ってホストを始めました」

「なるほどね。まぁ学歴に関しては俺は偉い事言えないんだけどね」
 
「雪さんはどうして高校進学せずに就職を?」

「家庭の事情かな。俺んちって母子家庭なんだけど、ガッツリネグレクト食らってさ~。俺と弟は可哀想な子供時代を送った訳。たまたま子供の頃に光ちゃんに会って世話してもらって生きて来れたんだけど、そんなんでとても高校になんて行けなかったよ。弟は4個下なんだけど、せめてまともな人生送らせてあげたいと思ってさ」

「……いいお兄さんですね♪」

「この話はあまり人に話した事がないんだ。だって恥でしかないじゃん?だからもう終わりっ!ねぇ、冬真の家はどういう家なの?」


 俺はクルッと後ろを向いて冬真の目を見て聞いた。書いてある住所を見る限りかなり遠い所から来たみたいだけど、どうして上京して来たのかも気になるんだ。俺はこれを機に冬真の事をいろいろ聞こうと思っていた。


「うちは普通ですよ。父親はサラリーマン、母親はフルタイム勤務のパート。兄弟は弟が一人います」

「冬真ってお兄ちゃんなの?俺と同じじゃん。てっきり上にお兄ちゃんかお姉ちゃんがいるのかと思ってたよ。上京して来た理由は?」

「……ゲイだとカミングアウトしたら追い出されたんです。特に弟から激しく拒絶されました」

「マジ?てか良く言えたな。すごいじゃん」

「このままずっと黙っていてもいつかはバレると思ったからです。元々高校を出たら実家を出ようと思っていたので、その事を伝える時に本当の事を話しました。住んでいた所がとても田舎なので近所同士の交流がこっちより親密で、息子がゲイだって言うのがバレたくなかったみたいで二度と帰らなくていいと言われました」

「そっか。教えてくれてありがとう」


 今冬真が話してくれた事が本当なのかはこの履歴書だけを読んでも分からない。全部作り話で嘘かもしれない。でも、俺は涙ぐむ冬真を見て信じようと思った。手を伸ばして綺麗に黒く染まった頭を撫でてあげると、ホッとしたように微笑んだ。


「頑張ったね冬真。そしてずっと言えなくて辛かったね。でも大丈夫だよ。真っ当に生きていれば必ず理解してくれる人に出会えるよ。これからはきっと良い事ばかりが起こる筈だからね」

「……それ、雪さんじゃないんですか?」

「えー」

「雪さんは俺の事を見た目で判断して冷たくしましたね」

「はい、しましたね」

「その後も警戒しつつも俺の事をちゃんと見て話を聞いて、少しずつ心を開いてくれましたね」

「……冬真」

「初日にこの家で俺をもてなしてくれた事、本当に嬉しかったんです。見ず知らずの俺を、ちゃんと見てくれて……やっぱり雪さんは優しい人だなって。初めは一目惚れでしたけど、話していく内に中身にも惚れました。雪さん、大好きです。俺と付き合って下さい」

「ま、待ってよ!それは冬真の勝手な解釈であって俺は別に……職場に変な奴が入って来て悪さしないか見極めてただけだっ光ちゃんからも世話してやれって業務命令に従ってるだけ!勝手に惚れたりするなよ!」


 違う。本当は嬉しいんだ。冬真に俺の事を分かって貰えて、そして好きと言ってもらえて。
 でも拒否らないといけないんだ。俺まで冬真を好きになっちゃったら、またワタルの時みたいになったら俺……


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