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4章 通い妻
25.怒らせた
しおりを挟む鬼のような顔で怒っている飯野さんに、俺まで姿勢を正してしまった。
えー、怖い怖い!いきなり怒るとかビックリするからやめてくれよー!
「飯野さん、何で怒ってるんですか?」
「どうして俺と出掛けるのにハラリの心配をするんだよ。お前らは親戚なんだよな?それにハラリは成人してる男だ。どうして奏多が親みたいに世話したりしてんだよ」
あ、ハラリの事でご立腹だったんですね!
でもハラリの事は言えない事情があるからな~。
どうしたら飯野さんを納得させられるんだぁ?
「ハラリは帰国子女で、あまり日本の事良く分かってないんです。誰に対してもこんな風にフレンドリーで、一回知らないおじさんに付いてっちゃいそうになった事があるんですよ。だから俺が面倒見てるんです」
自分でも良くスラスラとそんな嘘が出て来たなと感心したぜ。いや、若干自分の幼少期の話も織り交ぜたから全部が嘘ではない。
ハラリは顔を隠して笑いを堪えてるみたいだけど、肝心の飯野さんの反応は?
「はぁ、もういい。俺帰るから、片付け頼む。それが礼でいい」
「えっ!?飯野さん帰っちゃうの!?」
ヤバい!完全に怒ってるじゃん!
てっきり今日も泊まってくのかと思ってたよ!
飯野さんはしっかり残りを食べ切ってから席を立った。
これはマズいと俺も立ち上がり出て行こうとする飯野さんの後を追う。
「待って下さいよ。飯野さん、どうしてそんなに怒るんですか?ちゃんと話し合いましょ?」
「どうして怒るかだって?そんなの……」
「そんなの?」
俺の質問に答えようとして途中で辞めた飯野さんは席に残っていたハラリをチラッと見て、そのままリビングから出て行った。
もしかしてハラリがいるのが嫌なのか?
でもさ、二人って仲良くなってたよな。何で急に嫌がるのかが分からない。
出掛けるのだってハラリも入れて三人で行けば良くないか?
俺は廊下まで付いて行き、飯野さんの腕を両手で掴んでこっちを向かせた。
振り向いた飯野さんの顔は無表情だった。
初めて会った時と同じ、いつもの飯野さんだった。
「飯野さん、怒らせたなら謝ります。とりあえず落ち着いて下さい」
「怒ってる理由も分からないのに謝られても迷惑だ。ハラリが帰るまでは会わないし連絡もしないからな」
「えー!それは酷過ぎません!?どうしてハラリをそんな風に言うんですか!ハラリが飯野さんに何かしたんですか!?」
あまりにもハラリを悪者にしようとするから、俺も少し強く言ってしまった。
てかハラリが帰るまでとかそんなのいつになるか分かんねぇよ!明日かも知れないし、一年後かも知れないじゃん!
「いくら飯野さんでもハラリの事を悪く言うのは許せません。自分の思い通りにいかないからってそんな子供みたいな事言うのも理解出来ません!」
「そうか、お前は俺よりハラリが良いんだな」
「は?そうは言ってないでしょ?」
「そう言ってるようなものだろ!好きな奴が他の男を泊めて、いつでもどこでも連れて来たりしたら腹が立つだろ!挙げ句の果てにそいつの肩持つとか……やってらんねぇ」
「あ!飯野さん!待て!逃げるな!」
大きな声で文句を言った後、飯野さんは俺の腕を振り切って急いで玄関から出て行った。
そして扉がガチャンと音を立てて閉まる。
は?は?はぁぁぁ!?
何だ今の!?めちゃくちゃキレられたけど、俺が悪いのかよ!!
てか何言ってんだあの人!
好きな奴が他の男をって、好きな奴がって……
はぁぁぁ!?
待て待て待て!
好きな奴って誰!?俺!?
飯野さんに聞きたくてももういねぇ!!
ちょ、軽く頭ん中パニックだわ……
とりあえず落ち着こ?
落ち着いて考えたら今のって告白?
飯野さんは俺の事を本当に彼氏とか彼女みたいに思ってて、いつも一緒にいるハラリにヤキモチ妬いた?
そう考えたらこれまでの飯野さんの言動や行動が繋がるじゃねぇか!!
いや、待って……
飯野さんって俺の事、そう言う好きなの?
マジかぁ……
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