【完結】君が教えてくれたモノ

pino

文字の大きさ
27 / 43
5章 突然の別れ

26.後悔

しおりを挟む

 俺は今までにないぐらい落ち込んでいた。
 嫌な事は寝たら忘れられるタイプの俺は、こればかりは寝てもも忘れられないんじゃないかと思うぐらいに混乱していた。
 と言うかモヤモヤし過ぎて眠れない案件だろ。

 そんな俺を察してか、ハラリがテーブルの上を片付けてくれて、丁寧に俺をベッドまで運んでくれようとした。甘えん坊な俺はされるがままにハラリに身を任せていた。
 途中で「歯磨きをしたい」と言うと、笑いながら洗面所に連れてってくれて、歯を磨いてくれた。
 うん優しい♡

 って甘えてる場合かー!
 こういうとこだろ!?俺のこうやって誰にでも甘えちゃうとこが飯野さんは嫌だってんだろ!?
 でもさ、仕方ないじゃん。だってこれが俺だもん!

 しかもその嫌だってのが、俺の事を好きだからなんだろ?好きは好きでもラブね!
 さすがにアレは告白でしょうよ。
 俺も伊達に告られて来てないよ?
 いろんな子がいて、いろんな告白のされ方して来たけど、アレは結構重いやつよ?

 だってさ、俺にその気が無かったらウザいだけじゃん?何勘違いして盛り上がって勝手にキレてんのってやつ。
 でもさ、飯野さんの場合ウザくないんだわ。
 むしろ今までの俺の行いを振り返って後悔すらしてんだわ。
 
 飯野さんの気持ちにもっと早く気付けてたら、あんな風に怒らせたり、傷付けたりしなかったんかなって……

 俺を抱き上げてベッドまで運んでくれたハラリは、そのまま隣に寝てくれた。
 ずっとハラリのTシャツを握って離さなかったからだろう。
 どこまでも優しい♡

 そんな良いお兄さんなハラリは微笑みながら俺の頭を撫でながら隣にいてくれた。
 そのハラリの顔がさっき見た飯野さんの笑った顔にそっくりで思い出して俺は泣きたくなった。


「うう……ハラリ、俺……」

「泣いていいんだぜ?」

「飯野さん、めちゃくちゃ怒ってた……俺の事、好きなんだって……」

「だから言ったじゃねぇか。目一杯愛してあげろって。それはお前にしか出来ねぇんだから」

「そう言う意味だったのかよっ俺は友達とかにするノリかと思ったんだよっ」

「まぁこれは比良里本人から言って欲しかったから俺も曖昧にしてたけどよ、比良里はずっとお前の事を好きだったみてぇよ?多分一目惚れってやつ?」

「知らなかった……どうして俺なんかを……」


 ずっとって、バイト先のコンビニで初めて挨拶した時からかぁ?
 そんなの分かる訳ないじゃんっ!だって、飯野さんはずっと無表情だったし、初めて一緒のシフト入った時もボロクソに言って来たし!

 不器用過ぎるだろ飯野さん……
 分かりにくいんだよ……


「俺には分かるぜ、奏多を好きになる理由」

「どうして?教えて?」

「可愛いからだよ♪」


 ハラリはチュッと音を立てておでこにキスをして来た。
 少し驚いて何も言わずにいると優しく抱き締められた。

 まるで飯野さんにされてるようでとても居心地が良かった。


「奏多はいつも笑顔だろ?性格も明るくてちょっとやそっとじゃへこたれない。相手の立場とかにも臆する事なく接したりするとことか俺は好き。て事は比良里もそうだって事だ」

「本当に?でも飯野さんは怒るじゃん」

「あいつが気に入らないのは俺だろ」

「ハラリ、飯野さんにちゃんと説明した方がいいんじゃないか?そしたら事情を分かってハラリが俺のとこにいるのも許してくれるんじゃないか?」

「いや、辞めとこうぜ。本当なら奏多にも話すべきじゃなかったんだ。俺はこの次元ではバグみてぇなもんだからな~。誰にも本当の事は知られずそっといなくなるべきだったんだ」


 ハラリが言う事は分かるよ。
 でもさ、そんなの嫌だ。ハラリは違う次元から来たかも知れない。だけどそれが何だよ。ハラリはこうしてちゃんと生きてんじゃん。俺とだってこうやって抱き合って話だってしてんじゃん。
 今ハラリがいなくなるって考えたら俺、本当に泣いちゃうよ?

 
「ハラリはバグなんかじゃねぇ!俺は、ハラリがいなくなるの嫌だっ」

「嬉しい事言ってくれるね~♪それだけでもお前に会えて良かったと思えるよ。比良里にもな」

「ハラリは俺が守るよ!だからずっとここにいてくれよ!飯野さんは嫌がるけど、俺はハラリにいて欲しいよ」

「サンキューな♡そんじゃ比良里の事振れるか?」

「え?」

「ちゃんと比良里を突き離せるのかって聞いてんだ。俺は比良里みてぇなもんだ。あいつ並に独占欲強いぜ?俺といたいってんなら比良里にもう関わるなって言え」

「ハラリ、急になんて事言うんだよ……」


 俺が飯野さんと仲良くなるのを、ハラリはずっと応援しててくれたんじゃないのか?
 なのに何でそんな酷い事言うんだよ。
 
 冗談かと思ってハラリの顔を見ると、そこにはいつもの笑顔は無くて、まるで飯野さんのような無表情があった。
 
 飯野さんと同じ顔で同じようにキツい事を言うハラリ。

 そうか、二人は本当に同じ人間なんだ……


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

握るのはおにぎりだけじゃない

箱月 透
BL
完結済みです。 芝崎康介は大学の入学試験のとき、落とした参考書を拾ってくれた男子生徒に一目惚れをした。想いを募らせつつ迎えた春休み、新居となるアパートに引っ越した康介が隣人を訪ねると、そこにいたのは一目惚れした彼だった。 彼こと高倉涼は「仲良くしてくれる?」と康介に言う。けれど涼はどこか訳アリな雰囲気で……。 少しずつ距離が縮まるたび、ふわりと膨れていく想い。こんなに知りたいと思うのは、近づきたいと思うのは、全部ぜんぶ────。 もどかしくてあたたかい、純粋な愛の物語。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...