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5章 突然の別れ
26.後悔
しおりを挟む俺は今までにないぐらい落ち込んでいた。
嫌な事は寝たら忘れられるタイプの俺は、こればかりは寝てもも忘れられないんじゃないかと思うぐらいに混乱していた。
と言うかモヤモヤし過ぎて眠れない案件だろ。
そんな俺を察してか、ハラリがテーブルの上を片付けてくれて、丁寧に俺をベッドまで運んでくれようとした。甘えん坊な俺はされるがままにハラリに身を任せていた。
途中で「歯磨きをしたい」と言うと、笑いながら洗面所に連れてってくれて、歯を磨いてくれた。
うん優しい♡
って甘えてる場合かー!
こういうとこだろ!?俺のこうやって誰にでも甘えちゃうとこが飯野さんは嫌だってんだろ!?
でもさ、仕方ないじゃん。だってこれが俺だもん!
しかもその嫌だってのが、俺の事を好きだからなんだろ?好きは好きでもラブね!
さすがにアレは告白でしょうよ。
俺も伊達に告られて来てないよ?
いろんな子がいて、いろんな告白のされ方して来たけど、アレは結構重いやつよ?
だってさ、俺にその気が無かったらウザいだけじゃん?何勘違いして盛り上がって勝手にキレてんのってやつ。
でもさ、飯野さんの場合ウザくないんだわ。
むしろ今までの俺の行いを振り返って後悔すらしてんだわ。
飯野さんの気持ちにもっと早く気付けてたら、あんな風に怒らせたり、傷付けたりしなかったんかなって……
俺を抱き上げてベッドまで運んでくれたハラリは、そのまま隣に寝てくれた。
ずっとハラリのTシャツを握って離さなかったからだろう。
どこまでも優しい♡
そんな良いお兄さんなハラリは微笑みながら俺の頭を撫でながら隣にいてくれた。
そのハラリの顔がさっき見た飯野さんの笑った顔にそっくりで思い出して俺は泣きたくなった。
「うう……ハラリ、俺……」
「泣いていいんだぜ?」
「飯野さん、めちゃくちゃ怒ってた……俺の事、好きなんだって……」
「だから言ったじゃねぇか。目一杯愛してあげろって。それはお前にしか出来ねぇんだから」
「そう言う意味だったのかよっ俺は友達とかにするノリかと思ったんだよっ」
「まぁこれは比良里本人から言って欲しかったから俺も曖昧にしてたけどよ、比良里はずっとお前の事を好きだったみてぇよ?多分一目惚れってやつ?」
「知らなかった……どうして俺なんかを……」
ずっとって、バイト先のコンビニで初めて挨拶した時からかぁ?
そんなの分かる訳ないじゃんっ!だって、飯野さんはずっと無表情だったし、初めて一緒のシフト入った時もボロクソに言って来たし!
不器用過ぎるだろ飯野さん……
分かりにくいんだよ……
「俺には分かるぜ、奏多を好きになる理由」
「どうして?教えて?」
「可愛いからだよ♪」
ハラリはチュッと音を立てておでこにキスをして来た。
少し驚いて何も言わずにいると優しく抱き締められた。
まるで飯野さんにされてるようでとても居心地が良かった。
「奏多はいつも笑顔だろ?性格も明るくてちょっとやそっとじゃへこたれない。相手の立場とかにも臆する事なく接したりするとことか俺は好き。て事は比良里もそうだって事だ」
「本当に?でも飯野さんは怒るじゃん」
「あいつが気に入らないのは俺だろ」
「ハラリ、飯野さんにちゃんと説明した方がいいんじゃないか?そしたら事情を分かってハラリが俺のとこにいるのも許してくれるんじゃないか?」
「いや、辞めとこうぜ。本当なら奏多にも話すべきじゃなかったんだ。俺はこの次元ではバグみてぇなもんだからな~。誰にも本当の事は知られずそっといなくなるべきだったんだ」
ハラリが言う事は分かるよ。
でもさ、そんなの嫌だ。ハラリは違う次元から来たかも知れない。だけどそれが何だよ。ハラリはこうしてちゃんと生きてんじゃん。俺とだってこうやって抱き合って話だってしてんじゃん。
今ハラリがいなくなるって考えたら俺、本当に泣いちゃうよ?
「ハラリはバグなんかじゃねぇ!俺は、ハラリがいなくなるの嫌だっ」
「嬉しい事言ってくれるね~♪それだけでもお前に会えて良かったと思えるよ。比良里にもな」
「ハラリは俺が守るよ!だからずっとここにいてくれよ!飯野さんは嫌がるけど、俺はハラリにいて欲しいよ」
「サンキューな♡そんじゃ比良里の事振れるか?」
「え?」
「ちゃんと比良里を突き離せるのかって聞いてんだ。俺は比良里みてぇなもんだ。あいつ並に独占欲強いぜ?俺といたいってんなら比良里にもう関わるなって言え」
「ハラリ、急になんて事言うんだよ……」
俺が飯野さんと仲良くなるのを、ハラリはずっと応援しててくれたんじゃないのか?
なのに何でそんな酷い事言うんだよ。
冗談かと思ってハラリの顔を見ると、そこにはいつもの笑顔は無くて、まるで飯野さんのような無表情があった。
飯野さんと同じ顔で同じようにキツい事を言うハラリ。
そうか、二人は本当に同じ人間なんだ……
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