28 / 43
5章 突然の別れ
27.思ったら行動
しおりを挟む飯野さんに言われているようで、俺はハラリから目が離せなかった。
飯野さんが言いたい事を代弁するかのようなセリフに、俺は改めて飯野さんの気持ちを知った気がする。
誰にでも良い顔して、笑顔振り撒いてる俺に対して飯野さんはずっとそんな事を思っていたのかな。
俺は自分が楽だと思っていたからそうしていただけだけど、それで誰かを傷付ける事もあるんだと知った。
それを教えてくれたのは飯野さんだ。
そして、そんな飯野さんの気持ちを教えてくれたのはハラリだ。
「どうなんだ?出来るのか?」
「出来るかー!俺からしたらハラリも飯野さんも同じぐらい大事なの!どちらかを捨てるなんて出来ねぇっての!」
「……ぷっ!あはは!やっぱ奏多最高~♡」
「あ!からかったのか!?」
俺の本気の想いをぶつけると、吹き出して笑い始めた。
馬鹿にされてるようでちょっとムカついた。
「からかってねぇよ。なんか懐かしいなって♪安心しろ。俺はここにいるから。て事は今お前がしなきゃならないのはなーんだ?」
「飯野さんにも同じ事を言う!」
ハラリと飯野さんは同じ人間だって言うなら、今みたいに言えば飯野さんに伝わるんじゃないか?
俺が自信満々にそう言うと、ハラリは困ったように笑った。
「うーん、ちょっとちげぇな。まずさ、告白の返事したら?」
「あー!俺飯野さんに告られたんだ!」
「自分が何で悩んでたのか忘れるなっての」
ハラリに言われて思い出したけど、それも何とかしなきゃだよな。
飯野さんに告られたのは嫌じゃない。あの時は混乱しててそれどころじゃなかったけど、こうして落ち着いて考えると凄い事だなって思う。
バイト先の先輩で、初めは嫌われてるなぁと思ってたけど、少しずつお互いの距離を縮めていって、今では夕飯を作ってくれるぐらいの仲にまでなった。
こうして振り返って良く考えたら飯野さんはいつも俺の事を想ってくれてたんだなって思う。
それじゃあ俺にとって飯野さんは?
バイト先の先輩。すぐに怒るちょっと難しい先輩。だけど、かっこよくて本当は優しいヤキモチ妬きのお兄さんだ。
俺はそんな飯野さんの笑った顔が見たくて距離を縮めようと近付いていたけど、ほんの少しだけ見れた笑顔を思い出すとその先も見てみたいと思った。
その気持ちが飯野さんと同じ好きなのかは今はまだ分からない。だけど、俺は今堪らなく飯野さんに会いたいと思う。
飯野さんに会えたら何て言おうかとか、どんな顔すればいいとかすぐに出て来ないけど、それって好きって事なんかなぁとも思うんだ。
だって話したい事や見られたい自分を迷うって事は意識してるって事だろ?
俺は相手にこう思われたらとか気にしながら話すのってあまりないから慣れなくてくすぐったい気持ちだ。
「何ニヤけてんだ」
「はは、飯野さんを思い出したら笑いたくなっちゃった」
ハラリにほっぺをつねられながら俺は笑った。
飯野さんともこうして出来たらいいな。
その時は今と同じ気持ちになるのかは分からない。ハラリとは楽しい気持ちになれるけど、飯野さんとはもっと他の気持ちも含まれるのかも。
俺はそれを考えたら居ても立っても居られなくなった。
「ハラリ!俺飯野さんに会って来る!」
「今からかぁ?」
「きっと飯野さんも待ってるから♪」
「おー、ポジティブ~。奏多らしいな」
勢い良く体を起こしてベッドから飛び出る。
飯野さんはもう家に着いちゃったかな?てかどこに住んでるのか知らないから電話するしかないんだけど、出てくれるかなぁ?
あの人頑固そうだけど、俺からだとすんなり出そうな気がしてまた笑えた。
何でかな、飯野さんの気持ち知ったら俺って飯野さんからガチで愛されてるんだってすげぇ分かるわ。
0
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
握るのはおにぎりだけじゃない
箱月 透
BL
完結済みです。
芝崎康介は大学の入学試験のとき、落とした参考書を拾ってくれた男子生徒に一目惚れをした。想いを募らせつつ迎えた春休み、新居となるアパートに引っ越した康介が隣人を訪ねると、そこにいたのは一目惚れした彼だった。
彼こと高倉涼は「仲良くしてくれる?」と康介に言う。けれど涼はどこか訳アリな雰囲気で……。
少しずつ距離が縮まるたび、ふわりと膨れていく想い。こんなに知りたいと思うのは、近づきたいと思うのは、全部ぜんぶ────。
もどかしくてあたたかい、純粋な愛の物語。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる