【完結】君が教えてくれたモノ

pino

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5章 突然の別れ

28.告白と笑顔

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 時間は10時ちょい過ぎ。とにかく俺は夜道を走っていた。
 着替えながら電話を掛けてみたけど、結局飯野さんは出なかったんだ。

 初めはまだ怒ってるのかと思ったけど、出ない理由をすぐに思い付いてから俺は走って飯野さんの所へ向かっていた。

 目的地はバイト先のコンビニだ。
 多分飯野さんはバイト中なんだ。
 あのクソ真面目な性格だから少し前に出勤して引き継ぎとかしてて電話にも出なかったんだと思う。
 俺ならこっそり出ちゃうけどな~。そんで飯野さんに見つかって怒られるの。えへへ♪

 そう遠くないコンビニへは走ったら早く着いた。外からレジの所に飯野さんがいるのが見えて俺の心は踊った。

 飯野さんだー♡さっき会ったばかりなのにまた会えて嬉しいー♡
 俺は飯野さんを怒らせたままなのも忘れてテンション高くコンビニの自動ドアを通過する。

 急いで店の中に入ると、ドアが開く音を聞いて飯野さんがチラッと見ながら声掛けをして来た。


「いらっしゃいま……!」

「飯野さーん♡」


 俺の姿を確認すると、ゲッと言う顔をした。それを見なかった事にしつつ俺は構わずに飯野さんがいるレジの前に立つ。
 平日のこの時間は飯野さん一人での出勤のはずだ。つまり俺だけが飯野さんを独占出来るって事!

 語尾に♡を付けて名前を呼ぶと、とても嫌そうな顔で出迎えてくれた。


「お前、何しに来たんだよ」

「そりゃ飯野さんに会いに来たんですよー♡」

「いや、迷惑だ。帰ってくれ」


 俺から顔を逸らしつつレジから出て、店の後ろの方へ歩いて行こうとする飯野さん。勿論俺も後を追う。幸い客が居ないから良かった。さすがに俺でも他に客いたら気は使うぜ?

 ドリンクとかが並ぶバックヤードへ入って行く飯野さん。俺は当たり前のように後を追っていつものようにドアを開けて行くと、入ってすぐの所で立ち止まっていた飯野さんにぶつかった。


「おわっ!何でそんなとこ突っ立ってるんです!?」

「ハラリは?」

「え?ああ、家にいますよ」


 だからなるべく早く帰らないといけない。
 こうしてる間にもハラリがまた危険な目に遭ってるかも知れないからな。俺はそれを悟られないように自然に言って、今日はハラリは連れていない事をアピールする。

 飯野さんはふぅとため息を漏らした後、俺を軽く見下ろして見つめて来た。


「どうして来たんだ?」

「飯野さんに会いたかったからです♡」

「どんな風の吹き回しだよ。さっきはあんなに反抗的だったじゃないか」

「あの後ですね、俺なりに考えてみたんですよ。てか飯野さんが俺の事をそう言う風に思ってるなんて知らなかったんです。だから驚いちゃいました」

「前書きはいらん。長く店を空けたくない。手短に話せ」

「もう!どこまでも真面目なんだから!」

「それで?俺がお前の事をそう言う風に思ってるって知ってどう感じたんだ?」


 せっかく良い雰囲気で告白の返事が言えると思ったのに、この仕事人間がぁ!
 でも今日は飯野さんしか出勤してないし、あまり迷惑になるような事は辞めておこう。
 たまには飯野さんの言う事を聞いてあげなきゃな~♪


「めちゃくちゃ嬉しいです♡俺も飯野さんの事が大好きです♡」


 とびきりの笑顔で言ってやろうと思ったら、ちょっと照れが入ってしまった。
 こんなに堂々と誰かに好きって言う事なんてないからな。ただでさえ飯野さんはかっこいいから余計にな。

 ぎこちない笑顔になっちゃったと思っていたら、案外そうでもなかったらしい。
 だって、飯野さんがとても優しく笑っていたから。

 今度はちゃんと笑ってるって分かったよ。
 ずっと見たかった飯野さんの笑顔だけど、散々ハラリで見ていたから慣れていると思っていたんだ。
 だけど、ハラリの笑顔とは違って見えた。
 似ている筈なのに、こうして見る飯野さんの笑顔は安心したような、とても大切なものを見るかのような、見ているこっちが蕩けてしまいそうな甘くて優しい笑顔だったんだ。

 この人こんな武器持ってたなんてズルい!
 

「バイト終わったら連絡する。勉強も大事だけど、体にも気を付けろよ」

「い、い、飯野さんっ!?今の笑顔反則です!」

「うるさいぞ。明日も学校なんだろ?早く帰って寝ろよ」

「あーもー!帰りたくないけど帰らなきゃ~!飯野さん、バイト頑張って下さいね♡」

「ああ」


 飯野さんの表情はすっかり元に戻ってしまったけど、いつもの無表情がとても穏やかで落ち着いて見えた。
 こうして飯野さんとの距離が縮む度に、新しい飯野さんを知れて俺は嬉しく思う。


 帰り道に俺は飯野さんの甘い笑顔の余韻に浸りつつこう思った。
 あの笑顔はとても素敵だけど、あまり他の人には見せたくないかな?特に若い女子には毒だ。
 俺は初めて飯野さんが無愛想で良かったと思えた。

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