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6.さあ、リリアーナ嬢。鏡を見てみるがよい
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シャミールさんに連れられてやってきたのは、壁一面が鏡張りになった広い衣装部屋だった。
「さて、始めるかの」
部屋の中央に立つと、シャミールさんは杖を一度、床に突き立てた、
すると、先端の宝玉が淡い光を放ち始める。
「──空間魔法、収納展開」
彼が短く詠唱すると、何もない空間に波紋が広がり、そこから次々と煌びやかなドレスが飛び出してきた。
赤、青、黄色、ピンク……。
色とりどりのドレスが意思を持っているかのように宙を舞い、部屋の中のトルソーへと収まっていく。
「わ、わぁっ……!」
私は目を輝かせた。
まるで魔法のショーを見ているようだ。いや、実際に魔法なのだけれど。
「リリアーナ嬢の瞳はエメラルドグリーン、髪はハニーブロンドじゃ。ならば、それに映える色は……」
シャミールさんは顎髭を撫でる仕草をしながら、鋭い眼光でドレスを品定めしていく。
その視線は真剣そのもので、さながら戦場に赴く将軍のようだ。
「これと、これ。いや、今日の天気ならこちらの色味か。……よし、決まりじゃ」
彼が杖を振ると一着のドレスがふわりと私の前に舞い降りた。
それは淡いミントグリーンを基調とした、上品なドレスだった。
派手な装飾は少ないけれど生地自体に光沢があり、動くたびに水面のようにきらめく。
「これは妖精の織物じゃ。軽くて動きやすく、しかも汚れにくい。薬草いじりが好きなリリアーナ嬢にはぴったりじゃろう?」
「す、すごいです……! こんな素敵な生地、初めて見ました!」
そっと触れてみると、驚くほど滑らかで、手に吸い付くような肌触りだった。
「さあ、着付け係の者たちよ。出番じゃ」
シャミールさんが手を叩くと、どこからともなく数人のメイドさんたちが現れた。
彼女たちもまた、耳が尖っている。どうやらエルフのようだ。
「失礼いたします、リリアーナ様」
「精一杯、お支度させていただきます」
彼女たちは手際よく私を囲み、ガウンと寝間着を脱がせていく。
恥ずかしがる暇もないほどの早業だ。
「肌のキメが細かくてお綺麗ですわ」
「ええ、白くて透き通るようです」
コルセットを締め上げられながら、メイドさんたちに褒めちぎられ私は顔から火が出そうだった。
今まで地味だの華がないだのとしか言われてこなかったから、褒められることに慣れていないのだ。
「そ、そんなことありません……」
「いいえ、ご自身の魅力にもっと自信をお持ちになってください」
一人のメイドさんが私の髪を丁寧に梳かしながら微笑みかけてくれた。
鏡越しに見る彼女の瞳は優しくて、少しだけ泣きそうになる。
ドレスに袖を通し髪を結い上げ、最後に薄く化粧を施す。
全ての工程が終わるのにそれほど時間はかからなかった。
エルフの美的感覚と技術力の高さゆえだろうか。
「完成じゃな」
シャミールさんが満足げに頷いた。
「さあ、リリアーナ嬢。鏡を見てみるがよい」
促されて、私は目の前の大きな姿見に視線を向けた。
そこには――。
「え……これ、私……?」
信じられない光景が映っていた。
ミントグリーンのドレスを身に纏い、髪を華やかにアップにした少女。
少し頬を紅潮させ、驚いたように目を見開いている。
いつも実家の研究室で泥だらけになっていた私とは、まるで別人のようだった。
「綺麗……」
自分の口から、自然とそんな言葉が漏れる。
ナルシストみたいで恥ずかしいけれど、本当に綺麗だと思ってしまったのだ。
魔法にかけられたシンデレラとは、こんな気持だったのだろうか。
「フォッフォッフォ。素材が良いと言ったじゃろう? 磨けば光る原石どころか、すでに輝いておったのじゃよ」
シャミールさんは嬉しそうに目を細めた。
「これで準備は万端じゃ。さあ、アレクシス様がお待ちかねじゃぞ」
謁見の間への扉を開く。
その先には、私を待つアレクシス様がいるはずだ。
今の私を見たら、彼はどんな顔をするだろうか。
期待と不安で胸を高鳴らせながら、私は一歩を踏み出した。
「さて、始めるかの」
部屋の中央に立つと、シャミールさんは杖を一度、床に突き立てた、
すると、先端の宝玉が淡い光を放ち始める。
「──空間魔法、収納展開」
彼が短く詠唱すると、何もない空間に波紋が広がり、そこから次々と煌びやかなドレスが飛び出してきた。
赤、青、黄色、ピンク……。
色とりどりのドレスが意思を持っているかのように宙を舞い、部屋の中のトルソーへと収まっていく。
「わ、わぁっ……!」
私は目を輝かせた。
まるで魔法のショーを見ているようだ。いや、実際に魔法なのだけれど。
「リリアーナ嬢の瞳はエメラルドグリーン、髪はハニーブロンドじゃ。ならば、それに映える色は……」
シャミールさんは顎髭を撫でる仕草をしながら、鋭い眼光でドレスを品定めしていく。
その視線は真剣そのもので、さながら戦場に赴く将軍のようだ。
「これと、これ。いや、今日の天気ならこちらの色味か。……よし、決まりじゃ」
彼が杖を振ると一着のドレスがふわりと私の前に舞い降りた。
それは淡いミントグリーンを基調とした、上品なドレスだった。
派手な装飾は少ないけれど生地自体に光沢があり、動くたびに水面のようにきらめく。
「これは妖精の織物じゃ。軽くて動きやすく、しかも汚れにくい。薬草いじりが好きなリリアーナ嬢にはぴったりじゃろう?」
「す、すごいです……! こんな素敵な生地、初めて見ました!」
そっと触れてみると、驚くほど滑らかで、手に吸い付くような肌触りだった。
「さあ、着付け係の者たちよ。出番じゃ」
シャミールさんが手を叩くと、どこからともなく数人のメイドさんたちが現れた。
彼女たちもまた、耳が尖っている。どうやらエルフのようだ。
「失礼いたします、リリアーナ様」
「精一杯、お支度させていただきます」
彼女たちは手際よく私を囲み、ガウンと寝間着を脱がせていく。
恥ずかしがる暇もないほどの早業だ。
「肌のキメが細かくてお綺麗ですわ」
「ええ、白くて透き通るようです」
コルセットを締め上げられながら、メイドさんたちに褒めちぎられ私は顔から火が出そうだった。
今まで地味だの華がないだのとしか言われてこなかったから、褒められることに慣れていないのだ。
「そ、そんなことありません……」
「いいえ、ご自身の魅力にもっと自信をお持ちになってください」
一人のメイドさんが私の髪を丁寧に梳かしながら微笑みかけてくれた。
鏡越しに見る彼女の瞳は優しくて、少しだけ泣きそうになる。
ドレスに袖を通し髪を結い上げ、最後に薄く化粧を施す。
全ての工程が終わるのにそれほど時間はかからなかった。
エルフの美的感覚と技術力の高さゆえだろうか。
「完成じゃな」
シャミールさんが満足げに頷いた。
「さあ、リリアーナ嬢。鏡を見てみるがよい」
促されて、私は目の前の大きな姿見に視線を向けた。
そこには――。
「え……これ、私……?」
信じられない光景が映っていた。
ミントグリーンのドレスを身に纏い、髪を華やかにアップにした少女。
少し頬を紅潮させ、驚いたように目を見開いている。
いつも実家の研究室で泥だらけになっていた私とは、まるで別人のようだった。
「綺麗……」
自分の口から、自然とそんな言葉が漏れる。
ナルシストみたいで恥ずかしいけれど、本当に綺麗だと思ってしまったのだ。
魔法にかけられたシンデレラとは、こんな気持だったのだろうか。
「フォッフォッフォ。素材が良いと言ったじゃろう? 磨けば光る原石どころか、すでに輝いておったのじゃよ」
シャミールさんは嬉しそうに目を細めた。
「これで準備は万端じゃ。さあ、アレクシス様がお待ちかねじゃぞ」
謁見の間への扉を開く。
その先には、私を待つアレクシス様がいるはずだ。
今の私を見たら、彼はどんな顔をするだろうか。
期待と不安で胸を高鳴らせながら、私は一歩を踏み出した。
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