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22.自意識過剰です、新人さん。少しは目立たないようにするという努力をしてください
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竜騎士団での一件から、数日後。
私は日常に戻、「陽だまり薬局」のカウンターに立っていた。
「はい、お待たせしました。腰の痛み止めと滋養強壮のハーブティーです」
「ありがとう、リリちゃん! ここは本当に良心的な値段で助かるよ」
常連のお婆ちゃんに薬を渡すと、彼女はニコニコと硬貨を置いていった。
下町の小さな薬屋。
私の正体もこの店のオーナーの正体も、今のところバレていない。
平和で穏やかなスローライフ……のはずだったのだが。
「キャーッ! アレックス様ー!」
「こっち向いてー!」
「今日はクッキー焼いてきたの! 受け取って!」
店の外まで続く若い女性たちの長蛇の列。
視線の先にいるのは、爽やかな笑顔で接客をする店員アレックス――変装したアレクシス様だ。
「やあ、君の瞳は今日も宝石のように綺麗だね。この美容クリームを使えば、さらに輝きが増すはずだよ」
「は、はいぃぃぃ! か、買いますぅぅぅ!!」
客の女性が興奮のあまり卒倒しそうになっている。
アレクシス様、もといアレックスの無自覚タラシ接客のせいで店は連日大盛況……。
(……はぁ。売上が上がるのは嬉しいけど、これじゃ落ち着いて調合もできないなぁ)
私は遠い目をして溜息をついた。
彼は護衛として真面目に働いているつもりらしいが、正直、彼のファンクラブの整理だけで私の仕事が増えている気がする。
「リリ店長。手が止まっているぞ? もしや、俺に見惚れて……?」
客足が途切れた一瞬の隙に、彼が顔を近づけてきた。
変装用の眼鏡越しに、悪戯っぽい瞳が覗く。
「自意識過剰です、新人さん。少しは目立たないようにするという努力をしてください」
「努力はしている。これでも通常の五割程度に抑えているつもりだ」
私が抗議すると彼はくくっと喉を鳴らして笑った。
でも、こうして軽口を叩き合いながら働く時間は不思議と心地よかった。
王宮での堅苦しい彼ではなく、等身大の一人の男性として接してくれる。
それが嬉しくて、ついつい私も甘えたような口調になってしまう。
カランコロン♪
そんな平和な空気を切り裂くように、入り口のベルが鳴った。
と同時に、ズズズン……と店の床が微かに揺れたような気がした。
「?」
私が首を傾げて入り口を見るとそこには巨大な影が立っていた。
身長は二メートルを優に超えているだろうか。
筋肉隆々の肉体。
頭にはライオンのような獣の耳、そしてお尻には太い尻尾。
彼は……。
そうだ、以前謁見の間で私を守ってくれた人の一人。
「ガルフ……?どうしたんだ」
アレクシスさまが言った。
そう、彼は帝国軍・第三部隊将軍、ガルフ様──。
「うっ……うっ……」
しかし、その様子はいつもの豪快な彼とは違っていた。
肩を怒らせてはいるが、足取りはフラフラと覚束ない。
そして何より――。
「聖女さまの……薬屋……ここか……」
目は充血して真っ赤になり、目の下にはどす黒い隈が刻まれている。
殺気というよりは悲痛なまでの殺伐とした気配を撒き散らしていた。
「ひっ」
「ガ、ガルフ様だ……」
どうやら庶民にも彼は知られているらしい。
けれど、あまりの恐ろしい気配にあっという間にお客さんはいなくなってしまった。
それと共にファンクラブは解散……いや、それはいいけど
「あ、あの……いらっしゃいませ? ガルフ……様?」
私が恐る恐る声をかけると、彼はギロリと私を睨みつけ、ドシーン!とカウンターに両手をついた。
「おい、聖女さま……。眠り薬はあるか……?」
「え?」
「一番強いヤツだ……。ドラゴンでも一発で気絶するくらいの……眠り薬をくれ……!」
ガルフ様の声は掠れて震えていた。
よく見れば獣耳も力なく垂れ下がっている。(かわいい……)
不眠症……?。
いや、これはもっと深刻な、精神を蝕むような何かが原因だ。
(……この気配、尋常じゃない)
私は日常に戻、「陽だまり薬局」のカウンターに立っていた。
「はい、お待たせしました。腰の痛み止めと滋養強壮のハーブティーです」
「ありがとう、リリちゃん! ここは本当に良心的な値段で助かるよ」
常連のお婆ちゃんに薬を渡すと、彼女はニコニコと硬貨を置いていった。
下町の小さな薬屋。
私の正体もこの店のオーナーの正体も、今のところバレていない。
平和で穏やかなスローライフ……のはずだったのだが。
「キャーッ! アレックス様ー!」
「こっち向いてー!」
「今日はクッキー焼いてきたの! 受け取って!」
店の外まで続く若い女性たちの長蛇の列。
視線の先にいるのは、爽やかな笑顔で接客をする店員アレックス――変装したアレクシス様だ。
「やあ、君の瞳は今日も宝石のように綺麗だね。この美容クリームを使えば、さらに輝きが増すはずだよ」
「は、はいぃぃぃ! か、買いますぅぅぅ!!」
客の女性が興奮のあまり卒倒しそうになっている。
アレクシス様、もといアレックスの無自覚タラシ接客のせいで店は連日大盛況……。
(……はぁ。売上が上がるのは嬉しいけど、これじゃ落ち着いて調合もできないなぁ)
私は遠い目をして溜息をついた。
彼は護衛として真面目に働いているつもりらしいが、正直、彼のファンクラブの整理だけで私の仕事が増えている気がする。
「リリ店長。手が止まっているぞ? もしや、俺に見惚れて……?」
客足が途切れた一瞬の隙に、彼が顔を近づけてきた。
変装用の眼鏡越しに、悪戯っぽい瞳が覗く。
「自意識過剰です、新人さん。少しは目立たないようにするという努力をしてください」
「努力はしている。これでも通常の五割程度に抑えているつもりだ」
私が抗議すると彼はくくっと喉を鳴らして笑った。
でも、こうして軽口を叩き合いながら働く時間は不思議と心地よかった。
王宮での堅苦しい彼ではなく、等身大の一人の男性として接してくれる。
それが嬉しくて、ついつい私も甘えたような口調になってしまう。
カランコロン♪
そんな平和な空気を切り裂くように、入り口のベルが鳴った。
と同時に、ズズズン……と店の床が微かに揺れたような気がした。
「?」
私が首を傾げて入り口を見るとそこには巨大な影が立っていた。
身長は二メートルを優に超えているだろうか。
筋肉隆々の肉体。
頭にはライオンのような獣の耳、そしてお尻には太い尻尾。
彼は……。
そうだ、以前謁見の間で私を守ってくれた人の一人。
「ガルフ……?どうしたんだ」
アレクシスさまが言った。
そう、彼は帝国軍・第三部隊将軍、ガルフ様──。
「うっ……うっ……」
しかし、その様子はいつもの豪快な彼とは違っていた。
肩を怒らせてはいるが、足取りはフラフラと覚束ない。
そして何より――。
「聖女さまの……薬屋……ここか……」
目は充血して真っ赤になり、目の下にはどす黒い隈が刻まれている。
殺気というよりは悲痛なまでの殺伐とした気配を撒き散らしていた。
「ひっ」
「ガ、ガルフ様だ……」
どうやら庶民にも彼は知られているらしい。
けれど、あまりの恐ろしい気配にあっという間にお客さんはいなくなってしまった。
それと共にファンクラブは解散……いや、それはいいけど
「あ、あの……いらっしゃいませ? ガルフ……様?」
私が恐る恐る声をかけると、彼はギロリと私を睨みつけ、ドシーン!とカウンターに両手をついた。
「おい、聖女さま……。眠り薬はあるか……?」
「え?」
「一番強いヤツだ……。ドラゴンでも一発で気絶するくらいの……眠り薬をくれ……!」
ガルフ様の声は掠れて震えていた。
よく見れば獣耳も力なく垂れ下がっている。(かわいい……)
不眠症……?。
いや、これはもっと深刻な、精神を蝕むような何かが原因だ。
(……この気配、尋常じゃない)
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