王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「ちょっとぉ~! なんなのよこの扱いはぁ~!」

 馬車から下ろされたライラは不満たらたらだった。

「あぁ、もう...うるせー女だな...お望み通り両手両足の拘束は解いてやったじゃねぇか...じゃないと山道を登れないって騒ぐから...」

 ルイスはため息を吐きながらライラの相手をする。そう、一行の目の前には密入国ルートの一つである険しい山が聳え立っていたのだった。

「そんなん当ったり前でしょうがぁ~! 山道舐めんなぁ~!」

 ライラ激おこである。

「じゃあ一体なにが不満だって言うんだよ?」

「これよこれ!」

 ライラは自分の首元を指差した。

「首輪がどうかしたか?」

「どうかしたかじゃないっつーの! 私ゃ犬か! 犬扱いなのか! ご丁寧にリードまで付けやがって!」

「いやまぁそりゃあ...お前に逃げられちゃ敵わんし...」

「だからって犬扱いはないでしょうがぁ~! せめて人間扱いしろぉ~!」

「あぁもう...ホントうるせー...」

 ルイスは愚痴りながらもリードを握る手は放さない。

「ハハハッ! 本当に威勢の良い女だな! 退屈しないで済みそうだ!」

 そんな二人の様子をマクシミリアンはさもおかしそうに笑いながら見守っていた。 

「ねぇ、ちょっと?」

 ライラはチラッとマクシミリアンの方に目をやりながら、ルイスに向かって問い掛けた。

「うん? なんだ?」

「あの偉そうに笑ってるオッサン誰よ?」

「お、オッサンってお前なぁ...」

 ルイスはほとほと呆れ果ててため息を吐いた。

「お前、マクシミリアン大公様のことも知らねぇのかよ...そんなんで良くもまぁ王妃候補だなんて言えたもんだな...」

「そんな雲の上の人のことなんて知る訳ないじゃん! 田舎貴族舐めんな!」

「いやいや、威張って言うことじゃねぇって...」

 本当のことを言えば、ライラは名前だけは知っていた。王族のマナー教育の賜物である。ただ顔は見たことが無かったので、ライラからしてみたら単なる偉そうなオッサンでしかなかった訳だ。

「ほら、行くぞ?」

「ちょっと! 引っ張んないでよ! 犬の散歩じゃないんだから!」

 ルイスにリードを引っ張られたライラは激しく抗議した。


◇◇◇


 しばらくはなだらかな山道をゆっくり歩いていたが、

「ここから道が険しくなる。注意しろ」
 
 ルイスは握っていたリードの長さを調整し、ライラに少し余裕を持たせるよう配慮した。

「ねぇ、ちょっと...不穏な立て看板があるんですけど...」

 看板にはデカデカとした赤文字で『落石注意!』と書かれていた。

「私、この先に進みたくないんですけど...」

「あぁ、心配すんな。あれはカムフラージュだ」

「カムフラージュ?」

「ああいう風に書いておけば、このルートを避けようと思うだろ? それが狙いだ」

 ルイスはしたり顔でそう言った。
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