161 / 171
161
しおりを挟む
「殿下っ!? 何事ですかっ!?」
ただ事じゃないことを感じ取ったライアンがミハエルの元に駆け付ける。
「あぁ、騎士団長か...実はな...」
ミハエルは物憂げに状況を語った。
「な、なんと...ライラ嬢が...」
ライアンは絶句するしかなかった。
「という訳なんで、しばらくここを離れることが出来なくなった。もう大丈夫だとは思うが念のため辺りの警戒を怠るな」
「わ、分かりましたが...しかし...別の問題が...」
ライアンが口ごもった。
「なんだ!?」
「ここは山ですので天候が急変する恐れがあります...現に今もほら、かなり風が強くなってきました...」
言われてみれば確かに。山合を吹き抜ける風は先程よりも強さを増している。少し湿り気を帯びているようにも感じる。気温も下がって来ているようだ。
「風だけならまだしも雨まで降ってくるとなると...更にこの季節だと雨が雪に変わる可能性もありますし...」
ミハエルはライラが寝ている救護テントを振り返った。急拵えで作った簡易的なものなので強度が足りない。
「騎士団長、救護テントの補強を頼む。石でもなんでも重しに使って、どうにか風で吹っ飛ばされることのないようにしてくれ」
「やってみます...」
ライアンは悲壮感を漂わせながらそう言った。
◇◇◇
救護テントの中では衛生兵がライラの点滴を替えているところだった。
「具合はどうだ?」
ミハエルはライラの傍らに寄り添い手を握り締めた。
「今はまた眠ったところです」
「そうか...」
「脱水状態は緩和されたみたいなので、次は栄養剤の点滴に切り替えます」
「なるほど...」
「栄養状態が改善すれば、少しは症状が好転するかも知れませんので...まぁ、気休め程度の期待にしかならないんですけどね...」
「フムフム...」
「それでもなにもしないよりは遥かにマシ...」
「...」
「...殿下...殿下...」
「ハッ...」
疲れからか、ミハエルはウトウトと船を漕いでいたのだった。
「ライラ嬢のことは私に任せて殿下も少しお休みください」
見かねた衛生兵が苦笑しながら気遣うが、
「いや、そうも言っておれん...」
ミハエルは頑として譲らなかった。
「殿下...ライラ嬢が回復した時に殿下が体調を崩してしまっていたら、今度はライラ嬢が悲しみますよ?」
「それでも...だ...」
衛生兵の諭すような口調にもミハエルは断固として首を縦に振らなかった。
「ではご自由に...」
衛生兵は説得することを諦めた。
ただ事じゃないことを感じ取ったライアンがミハエルの元に駆け付ける。
「あぁ、騎士団長か...実はな...」
ミハエルは物憂げに状況を語った。
「な、なんと...ライラ嬢が...」
ライアンは絶句するしかなかった。
「という訳なんで、しばらくここを離れることが出来なくなった。もう大丈夫だとは思うが念のため辺りの警戒を怠るな」
「わ、分かりましたが...しかし...別の問題が...」
ライアンが口ごもった。
「なんだ!?」
「ここは山ですので天候が急変する恐れがあります...現に今もほら、かなり風が強くなってきました...」
言われてみれば確かに。山合を吹き抜ける風は先程よりも強さを増している。少し湿り気を帯びているようにも感じる。気温も下がって来ているようだ。
「風だけならまだしも雨まで降ってくるとなると...更にこの季節だと雨が雪に変わる可能性もありますし...」
ミハエルはライラが寝ている救護テントを振り返った。急拵えで作った簡易的なものなので強度が足りない。
「騎士団長、救護テントの補強を頼む。石でもなんでも重しに使って、どうにか風で吹っ飛ばされることのないようにしてくれ」
「やってみます...」
ライアンは悲壮感を漂わせながらそう言った。
◇◇◇
救護テントの中では衛生兵がライラの点滴を替えているところだった。
「具合はどうだ?」
ミハエルはライラの傍らに寄り添い手を握り締めた。
「今はまた眠ったところです」
「そうか...」
「脱水状態は緩和されたみたいなので、次は栄養剤の点滴に切り替えます」
「なるほど...」
「栄養状態が改善すれば、少しは症状が好転するかも知れませんので...まぁ、気休め程度の期待にしかならないんですけどね...」
「フムフム...」
「それでもなにもしないよりは遥かにマシ...」
「...」
「...殿下...殿下...」
「ハッ...」
疲れからか、ミハエルはウトウトと船を漕いでいたのだった。
「ライラ嬢のことは私に任せて殿下も少しお休みください」
見かねた衛生兵が苦笑しながら気遣うが、
「いや、そうも言っておれん...」
ミハエルは頑として譲らなかった。
「殿下...ライラ嬢が回復した時に殿下が体調を崩してしまっていたら、今度はライラ嬢が悲しみますよ?」
「それでも...だ...」
衛生兵の諭すような口調にもミハエルは断固として首を縦に振らなかった。
「ではご自由に...」
衛生兵は説得することを諦めた。
49
あなたにおすすめの小説
婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます
りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。
初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。
それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。
時はアンバー女王の時代。
アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。
どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。
なぜなら、ローズウッドだけが
自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。
ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。
アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。
なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。
ローズウッドは、現在14才。
誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。
ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。
ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。
その石はストーン国からしか採れない。
そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。
しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。
しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。
そして。
異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。
ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。
ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる