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ライラは非常に困っていた。薄らと目を開けると相変わらずミハエルは自分の手を握っているし、衛生兵は忙しそうに動き回っている。
(ど、どうしよう...こ、これ、いつ目を覚ましたフリをすればいいのかな...)
実はライラ、最初っから意識があったのだ。ちょっと困らせてやろうかなんて悪戯心が疼いたせいで、意識が混濁しているという演技を続けていただけなのだ。それが思いも依らぬ大事に発展してしまったせいで、ライラとしては戸惑いを隠せないというのが現状だったりする。
(困ったなぁ...私はただ『ここは誰? 私はどこ?』的なシチュエーションに憧れてただけなんだよねぇ...物書きとして記憶喪失物は一度やってみたかったっていうかさぁ...うん? なんか変だな? 逆だったかな? まぁいいや...それをあの衛生兵が瞳孔反射がどうこうなんて大袈裟に騒ぐもんだから...あ、駄洒落じゃないよ? ありゃ単にちょっと眠かっただけだっちゅうの...あぁ、お腹空いたし喉も渇いたなぁ...点滴だけじゃ腹は膨れねぇし喉の渇きも潤せねぇっての...目を覚ますタイミングはいつがベストなんかなぁ...)
そんなことをつらつらと考えていたライラだったが、
「グウッキュウウウッ!」
生理的欲求には抗えなかったようで腹の虫が盛大に鳴った。そりゃもう、これ以上ないってくらいに盛大に。
途端にライラの顔は羞恥で真っ赤になった。そりゃもう、熟れたトマトみたいに真っ赤っかに。
こりゃもう仕方ないとばかりにライラは恐る恐る目を開けて、
「え、え~と...こ、ここは誰? わ、私はどこ?」
あくまでも記憶喪失のフリをし続けたのだった。
◇◇◇
あまりの急展開に一瞬ポカンとしたミハエルだったが、目が泳ぎ捲っているライラを見てピンッときた。
こいつ! あんなに心配させやがったクセに! 安堵と共に怒りも一緒に湧いてきたミハエルは、ちょっとライラにお灸を据えることにした。
「あぁ、もう大丈夫だ。なにも心配要らないよ? 君はただ怖い夢を見てただけなんだ。君の名はライラっていうんだよ?」
「ら、ライラ...そ、それが私の名前...」
ライラ(自分の中では)迫真の演技である。
「そう、そして僕の名はミハエル。君の夫だよ? 君は僕の妻なんだ」
「おおお夫ぉっ!? つつつ妻ぁっ!?」
ライラの演技が呆気なく崩れた。
「そうだよ。あぁ、愛しいライラ! 無事で良かった!」
ミハエルもまた芝居掛かった演技でライラに口付けしようとした。
「ふっざんけんなぁ! こんの色ボケ王子がぁ! 誰が夫で誰が妻じゃーいっ!」
ライラは弾かれたように跳ね起きた。
(ど、どうしよう...こ、これ、いつ目を覚ましたフリをすればいいのかな...)
実はライラ、最初っから意識があったのだ。ちょっと困らせてやろうかなんて悪戯心が疼いたせいで、意識が混濁しているという演技を続けていただけなのだ。それが思いも依らぬ大事に発展してしまったせいで、ライラとしては戸惑いを隠せないというのが現状だったりする。
(困ったなぁ...私はただ『ここは誰? 私はどこ?』的なシチュエーションに憧れてただけなんだよねぇ...物書きとして記憶喪失物は一度やってみたかったっていうかさぁ...うん? なんか変だな? 逆だったかな? まぁいいや...それをあの衛生兵が瞳孔反射がどうこうなんて大袈裟に騒ぐもんだから...あ、駄洒落じゃないよ? ありゃ単にちょっと眠かっただけだっちゅうの...あぁ、お腹空いたし喉も渇いたなぁ...点滴だけじゃ腹は膨れねぇし喉の渇きも潤せねぇっての...目を覚ますタイミングはいつがベストなんかなぁ...)
そんなことをつらつらと考えていたライラだったが、
「グウッキュウウウッ!」
生理的欲求には抗えなかったようで腹の虫が盛大に鳴った。そりゃもう、これ以上ないってくらいに盛大に。
途端にライラの顔は羞恥で真っ赤になった。そりゃもう、熟れたトマトみたいに真っ赤っかに。
こりゃもう仕方ないとばかりにライラは恐る恐る目を開けて、
「え、え~と...こ、ここは誰? わ、私はどこ?」
あくまでも記憶喪失のフリをし続けたのだった。
◇◇◇
あまりの急展開に一瞬ポカンとしたミハエルだったが、目が泳ぎ捲っているライラを見てピンッときた。
こいつ! あんなに心配させやがったクセに! 安堵と共に怒りも一緒に湧いてきたミハエルは、ちょっとライラにお灸を据えることにした。
「あぁ、もう大丈夫だ。なにも心配要らないよ? 君はただ怖い夢を見てただけなんだ。君の名はライラっていうんだよ?」
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「そう、そして僕の名はミハエル。君の夫だよ? 君は僕の妻なんだ」
「おおお夫ぉっ!? つつつ妻ぁっ!?」
ライラの演技が呆気なく崩れた。
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ミハエルもまた芝居掛かった演技でライラに口付けしようとした。
「ふっざんけんなぁ! こんの色ボケ王子がぁ! 誰が夫で誰が妻じゃーいっ!」
ライラは弾かれたように跳ね起きた。
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