空間魔法って実は凄いんです

真理亜

文字の大きさ
上 下
30 / 462

カリナの邂逅

しおりを挟む
 ミネルバを追い払って、やっと笑いが収まったアクセル様が私に告げる。

「午後からは孤児院に慰問に行くからそのつもりでいてくれ」

「孤児院ですか...フフッ」

「ん? どうした?」

「あぁ、いえいえ。すいません、ちょっと昔を思い出しまして」

 思い出し笑いってヤツよん。

「というと?」

「昔、元実家に居た頃なんですが、私も良く孤児院へ慰問に行ってたんですよ」

 貴族の義務だからね。なんつったっけ? あぁそうそう、ノブレス・オブリージュだっけ。
 
「そうだったのか」

「えぇ、その時にですね、私って同年代の中でも昔から背が高かったので、明らかに私と同年代か1つ2つ歳上ぐらいの子供達から『お姉ちゃん』って呼ばれてしまって...フフッ、くすぐったいような何とも言えない気分になったのを思い出しました」

 懐かしい思い出だよねぇ。あの子達みんな元気でやってるかなぁ?

「なるほどなぁ、まぁそれも無理ないか」

「えぇ、一緒に行った元婚約者もそう言って笑ってました」

「なにぃ!? 婚約者だとぅ!? 婚約者が居るのかぁ!? 聞いて無いぞぉ! どぉして言わなかったぁ!」

 うわぉ! なんだかアクセル様の食い付きが凄いんですけど!? どうしちゃったの一体!? 私なにか変なこと言った!?

「あ、あの...元ですよ!? 元。今は婚約してませんよ!? とっくに解消されてるはずですし、特に言う必要も無いかと思って...」

「はず!? はずってことはちゃんと確認して無いってことか!?」

「え、えぇ、まぁ...その前に国を出ちゃいましたし...」

 な、なんかアクセル様の顔が怖いんですけど...ホントにどうしちゃったの!?

「なんてことだ...」

 今度は頭抱えちゃったよ...大丈夫!?

「あ、あの...婚約者と言っても歳が離れてますし、きっと私のことは妹みたいに思っていたと」

「そんな訳あるかぁ!」

「ぴぎっ! 」

 び、ビックリしたぁ! 思わず変な声出ちゃったよ!

「あっ!...大声出してスマン...」

「い、いえ...」

「コホン、そ、それでカリナとは何歳離れていたんだ?」

「5歳です」

「...俺と同い年か...断言しよう、カリナ。その婚約者は君のことを妹だなんて思っていなかったはずだ」

「そ、そうなんでしょうか...」

「あぁ、間違いない...俺がそうなんだからな...」

「えっ!? 今なんて!?」

 最後の方、声が小さくて聞き取れなかったよ。

「...なんてことだ...こうなったら多少強引にでも事を進めて...」

 なんだかブツブツ呟き出したアクセル様。良く聞こえないけど、不穏な言葉を発しているような!? き、気のせいだよね!?

 それにしても、なんでイアン様のことをそんなに気にすんのかな? きっとイアン様は私のことなんか忘れて、今頃は別の人と上手くやってるはずだよ。それを思うとちょっぴり胸が苦しくなるけど、こればっかりはしょうがないよね...

 この時の私は、まさかイアン様が私のことを探しにこの国まで来ているだなんて夢にも思ってなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:3,013

みんながまるくおさまった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:177

不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:2,643

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

出ていけ、と言ったのは貴方の方です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:536

この国に私はいらないようなので、隣国の王子のところへ嫁ぎます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,412pt お気に入り:1,452

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:305

処理中です...