空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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イアンの焦り

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 一方その頃、イアンはまたしても苛立っていた。

「まだか!? まだ許可は下りないのか!?」

 イアンはまだ国境の町ヘインズで足止めを食らっていた。今日でカリナが家を出てから一週間が過ぎた。時間が過ぎれば過ぎる程、カリナを見つけ出すのが難しくなるだろう。

 王宮にベルトラン家のことを伝えれば、すぐに出国の許可が下りるものとばかり思っていたが、この町でもう二日も待たされている。
 
「どうなっているんだ!? カリナの重要性は陛下が一番ご存知のはずなのに!?」

 イアンは知る由もなかったが、実はこの時、間の悪いことに国王のフレデリックは外遊に出ていた。外遊先で急ぎの連絡を受けたフレデリックが、慌ててイアンの出国の許可を出したが、その知らせが届くまでまだもう少し時間が掛かりそうだ。

 結局、イアンの元に出国の許可が届いたのは、それから更に二日経過した後だった。

「行くぞ!」

 勢い込んでオスマルク王国の地に足を踏み入れたイアンを待っていたのは、カリナも経験したあのだだっ広い平原だった。実はこの場所、昔の戦場跡で『戦場が原』とも呼ばれている。亡くなった兵士の亡霊が出るとかで、誰も住む者は無く放置されている。そんなことをお付きの護衛から聞かされたイアンは、

「そんな情報はどうだっていい! 観光に来てるんじゃないんだ! カリナの情報を手に入れろ!」

 しごくごもっともな意見である。

 その後、しばらくは黙って馬を走らせていたが、

「ちょっと待て! 止まれ!」

 これもカリナが遭遇した狼どもに、周りを取り囲まれたようだ。狼どもはジリジリと間合いを詰めてくる。

「邪魔だ! この獣どもめ!」

 イアンの体から冷気が溢れ始め、周りを囲んでいた狼どもを全て凍らせた。イアンは氷の攻撃魔法が得意なのである。

「良し! 先を急ぐぞ!」

 またしばらく行くと、やがて前方にお城みたいな建物が見えて来た。

「あれはなんだ?」

 イアンが護衛の一人に問い掛ける。護衛は地図と照らし合わせながら、

「王家の別荘のようです」

 と告げた。

「別荘か。王家所有ともなると、別荘とはいえバカでかいものになるんだな。まぁいい、先を急ぐぞ!」

 この時、別荘に寄っていればカリナの情報をすぐ手に入れられたのだが、そんなことを知る由もないイアンは、とにかくカリナの痕跡を探るべく、人の住む村か町を目指していた。

 やがて日が沈む頃、割と大きな町に到着した。カリナ達が一泊した町である。

「今日はここまでだな。今夜はこのホテルに泊まって明日から町で聞き込み開始だ」

 そのホテルは偶然にもカリナ達が泊まったホテルだった。
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