ようこそ、追放村へ!~冤罪で婚約破棄され国外追放された4人の令嬢達

真理亜

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「ペアは決まったようじゃの。ではペアの一人はこの水槽に入れ」

 やっぱり水槽だったんだ...老女が指差す方を見て4人は嫌な予感がしたのだった。

「私が入るわ」
 
 そんな中、シイナが率先して水槽の中に入って行った。

「ヨイショっと! フゥ...結構深い水槽ね...」

 水槽の上に辛うじてシイナの髪の先が出るくらいの深さだった。

「じゃあ次はアタシが入るよ」

 もう一方の水槽にはカレンが入った。シイナより背の高い彼女は、顔が半分くらい水槽から出ていた。

「入ったか。お次はこれじゃ」

 老女がパチンと指を鳴らすと、テーブルの上に香ばしい匂いを漂わせた肉の塊が大皿に載って現れた。

「うっひょおぅ♪」

 腹ペコなフウカがヨダレを溢さんばかりに喜んだ。

「制限時間以内にこの肉を完食すればお主らの勝ちじゃ」

「制限時間って?」

「ペアの一人が食べ始めたのと同時に、水槽の下からゆっくりと水が上がって来る。水槽の中が水で一杯になる前に食べ切るんじゃ」

「大食いならボクに任せてよ!」

 フウカが腕捲りして気合いを入れる。一方のミレイはというと、

「わ、わたくしも頑張りますわ!」

 と気合いを入れてはいるものの、明らかに食の細そうな彼女にシイナは不安を隠せない。

「用意は良いかの? それじゃあ始め!」

 老女の合図と共に『絆』の試練がスタートした。


◇◇◇


 そのシイナの不安は、残念ながら的中することになってしまった...

「ハグッ! モグッ! ガウッ!」

 凡そ元貴族令嬢とは思えないほど豪快に肉塊にかぶり付くフウカに対し、

「モソモソ...コリコリ...ゴックン...」

 あくまでも優雅にゆっくりと肉を咀嚼するミレイ。

「ね、ねぇ、ミレイ! も、もう膝上まで水が上がって来てるんだけど!? お願いだからもっとガブッて行って頂戴よ!」

「ひょんなごどいわまひみょ (そんなこと言われましても...)」

 ミレイが口をリスみたいに脹らませて涙ながらに訴えた。

「あぁっ! もういいから! 分かったから! 喋ってる暇があったら少しでも食いなさい!」

 シイナが必死になって叫ぶ。

「シイナ、ごめんな...やっぱりシイナの言った通りだったよ...せめてアタシがシイナとペアを組んでいたら...」

 カレンの水槽は水がほとんど上がって来ない。それだけフウカが凄い勢いで食べているということだ。

「だからそう言ったでしょうがぁ!」

 対するシイナの水槽は既に胸の辺りまで水が上がって来ている。シイナが水没するのも時間の問題だ。

「お願いよ、ミレイ! お願いだから頑張って頂戴!」

 シイナは祈りながら叫んだ。
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