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第25話 ちみっこと夏休み その5
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勝利を確信した後、歓喜に包まれた。
みんなが涙を流しながらアタシに抱き付いて喜びを爆発させる。モミクチャにされながらアタシも喜びを噛みしめ、涙を流してみんなの無事を祝った。
そこへ一番の立役者であるアリシアが、遅れて到着する。
「ミナ~! やったよ~!」
「「「「「 ぐえっ! 」」」」」
涙を流しながら突進して来たアリシアを受け止め切れず、アタシ達はふっ飛ばされた。うん、アリシア。嬉しいのは良く分かるけど、少し力をセーブすることを覚えようか...
「あ...ゴメンなさいっ!」
アタシ達は顔を見合わせて、全員で破顔した。こうして笑い合うことが出来て本当に良かった!
「ふわぁ...お疲れ...」
そこへ光の精霊レムの声が響く。さっきまでの神々しさはなく、最初の時のように眠そうな声だ。大きさも手の平サイズにまでちっちゃくなってアリシアの肩の上に乗ってる。
「あの、助けて頂いてありがとうございます」
アタシが代表してお礼を言う。全員が頭を垂れる。
「ううん...愛し子達の危機を察するのが遅れたのは私達のせいだから...むしろ遅くなってゴメンね...精霊王様も合わす顔が無いって言ってた...それとその子達もね...愛し子を危険に晒して申し訳ないって...あふ...眠い...」
見ると精霊達がみんな項垂れている。
「い、いえ、そんな! 助けて頂いただけで感謝してますから!」
「そう言って貰えると助かる...今後はその子達もレベルアップするから、あなた達のことをもっとフォロー出来るようになるはず...ふぁ...」
精霊達が頷いている。心なしか纏っている光が増したように見える。
「闇の勢力の力が強まって来た...精霊王様も今は力を蓄えている...私も使った力を充填する必要があるから眠るけど、何かあったらすぐ起きるから...あなた達も十分用心してね...あふ...」
「待って下さいっ! 闇の力が強まっているということと、このダンジョンにあんな強い魔獣が現れたことについては何か関連があるんでしょうか?」
エリオットが割り込む。そう、みんなが疑問に思っていた点だ。
「うん、そう思う...僅かだけど闇の気配を感じる...それに本来、ドラゴンはこんな場所に居るはずのない魔獣...これからもそういったことが続くと思う...だから気を付けて...ふぁ...」
勝利の余韻に浸っていたアタシ達は沈黙した。
「と、取り敢えず戻りましょうか...」
沈黙に耐え切れず、アタシは提案した。
◇◇◇
「ふわぁ、近くで見るとホントでっかいねぇ~」
レッドドラゴンが残した赤い魔石は、直径1mくらい、高さはアタシの身長より高い。リザードマンの魔石が片手サイズ、ミノタウロスの魔石が両手サイズなのに比べたら破格の大きさだ。
「アリシア、運べる?」
「うん、余裕」
アリシアが何でもないようにヒョイっと持ち上げる。凄いな!
「うん? 魔石の下が何か光ってる? これって転移魔法陣?」
魔石を持ち上げた下に転移魔法陣が描かれていた。
「おぉ、これは助かる。では早速行きましょうか」
「そうだな。牛もトカゲも当分見たくないしな」
殿下の言葉に私達は揃って苦笑した。来た道を戻りたくないのは確かだ。
アタシ達は転移魔法陣に乗ってダンジョンの入り口まで転移した。
「うん? 何か揉めてるのかな?」
ダンジョンから出たアタシ達の目に映ったのは、護衛の皆さんに羽交い締めされてるマリーの姿だった。何事!? って思ったアタシの元に、大粒の涙を流しながらマリーが抱き付いて来た。
「ミナお嬢様っ! よくぞご無事でっ!」
「え~と? ただいま? で、これってどういう状況?」
すると困った顔の護衛の一人がこう言った。
「その...マリー殿はダンジョンの奥の方から振動と魔獣の叫び声がした時から『助けに行く!』と、言い出しまして...それを危険だからと我々がお止めしておりました」
「そうだったんだ...ゴメンね、マリー。心配掛けたね...」
「お嬢様ぁぁぁっ~!」
普段の鉄面皮はどこへやら、泣きじゃくるマリーの背中を軽く叩いて、心配掛けたのが申し訳なかったのと、ここまで心配してくれたことに感謝して、アタシもまた涙を流した。
◇◇◇
マリーが落ち着いたところで護衛の皆さん達含め、ダンジョンで起こったことを話した。皆一様に驚いていた。特にアリシアが運んで来た魔石の大きさには度肝を抜かれたようだ。
そしてことの重大さを改めて認識したアタシ達は、この異常事態を少しでも早く報告をする為に馬車を急がしている。馬車に揺られながら殿下が切り出した。
「まずは父上に報告を上げる。きっと上層部は大騒ぎになるな。その後は冒険者ギルドへの情報共有を行う。こっちも大騒ぎしそうだ。忙しくなりそうだな。魔石のこともあるし、冒険者登録の件もある。明日にでも全員でギルドへ行こうと思うんだが、みんなの都合はどうだ?」
殿下の提案に全員が「大丈夫」と応える。うん、そうだよね。情報共有は大事だ。アタシ達のように精霊の加護持ちだってあれだけ苦戦したのに、初心者向けダンジョンだと思ってランクの低い冒険者が入ったりしたら多分死んでただろうから。
「それとアリシア、精霊の加護おめでとう。これで晴れて『精霊の愛し子隊』の一員だな」
全員から「おめでとう」と言われたアリシアは照れながら、
「あ、ありがとうございます...でもやっぱりその名前はちょっと...」
「まだ言ってるの? じゃどんな名前がいいのよ?」
「そうだなぁ...例えば『フェアリーズ』とかどう? 可愛くない?」
「いやそれだと精霊じゃなく妖精じゃん」
アタシの指摘にアリシアが真っ赤になって俯く。みんなは笑ってる。するとアリシアはアタシにだけ聞こえるように囁いてきた。
(精霊って英語でなんて言うのよ?)
(知らん。ググれ)
(ググれるかっ! ってかググれるもんならググりたいわっ! スマホもPCもネットも無い状況がこれ程恨めしいとわっ!)
(異世界乙~)
「なにコソコソ話してるんですの?」
「ナンデモアリマセンヨ」
不審に思ったシャロン様に突っ込まれた。まぁ、ホントは知ってるんだけどね。精霊を英語で言うと「スピリット」か「エレメント」かな。どっちもシックリこないんで放っとく。
「それとレッドドラゴンとの戦いで尚のこと痛感させられたな。やっぱりパーティーリーダーはミナが相応しいと。ミナもさすがに異論は無いだろ?」
「いやいや、有りますって! 私リーダーなんか柄じゃないですって!」
みんなが「うんうん」頷いてる中、アタシが執拗に抵抗していると、見かねたエリオットがこう提案してきた。
「じゃこういうのはどうでしょう? 対外的な代表としては殿下がリーダーのままで、戦闘時にはミナがリーダーになるっていうのは?」
「あぁ、それ良いわね。面倒なことは全部アルに任せて、ミナさんには思う存分伸び伸びと指揮を執って貰いたいわ」
「面倒なことってお前な...まぁ、いいか。ミナもそれでいいな?」
「はぁ、まぁそれなら...」
アタシは渋々頷いた。まぁ、仕方無いか...ここまで言われちゃね。一つ気合い入れて頑張りますか。みんなの期待には応えたいからね。
あと、どうでもいいけどシャロン様、すっかり殿下のこと愛称呼びだね。アタシもシルベスターのことを、みんなの前でもずっとスライって呼んじゃってるからお互い様か。そのスライは、
「ミナなら大丈夫。ボクも及ばずながらフォローするから」
うぅ、ホンマにえぇ子やの~
「それじゃ早速だが、リーダーとして一言なんかあるか?」
殿下にそう言われてアタシは考える。
実は色々と思っていることがあるんだよね。
みんなが涙を流しながらアタシに抱き付いて喜びを爆発させる。モミクチャにされながらアタシも喜びを噛みしめ、涙を流してみんなの無事を祝った。
そこへ一番の立役者であるアリシアが、遅れて到着する。
「ミナ~! やったよ~!」
「「「「「 ぐえっ! 」」」」」
涙を流しながら突進して来たアリシアを受け止め切れず、アタシ達はふっ飛ばされた。うん、アリシア。嬉しいのは良く分かるけど、少し力をセーブすることを覚えようか...
「あ...ゴメンなさいっ!」
アタシ達は顔を見合わせて、全員で破顔した。こうして笑い合うことが出来て本当に良かった!
「ふわぁ...お疲れ...」
そこへ光の精霊レムの声が響く。さっきまでの神々しさはなく、最初の時のように眠そうな声だ。大きさも手の平サイズにまでちっちゃくなってアリシアの肩の上に乗ってる。
「あの、助けて頂いてありがとうございます」
アタシが代表してお礼を言う。全員が頭を垂れる。
「ううん...愛し子達の危機を察するのが遅れたのは私達のせいだから...むしろ遅くなってゴメンね...精霊王様も合わす顔が無いって言ってた...それとその子達もね...愛し子を危険に晒して申し訳ないって...あふ...眠い...」
見ると精霊達がみんな項垂れている。
「い、いえ、そんな! 助けて頂いただけで感謝してますから!」
「そう言って貰えると助かる...今後はその子達もレベルアップするから、あなた達のことをもっとフォロー出来るようになるはず...ふぁ...」
精霊達が頷いている。心なしか纏っている光が増したように見える。
「闇の勢力の力が強まって来た...精霊王様も今は力を蓄えている...私も使った力を充填する必要があるから眠るけど、何かあったらすぐ起きるから...あなた達も十分用心してね...あふ...」
「待って下さいっ! 闇の力が強まっているということと、このダンジョンにあんな強い魔獣が現れたことについては何か関連があるんでしょうか?」
エリオットが割り込む。そう、みんなが疑問に思っていた点だ。
「うん、そう思う...僅かだけど闇の気配を感じる...それに本来、ドラゴンはこんな場所に居るはずのない魔獣...これからもそういったことが続くと思う...だから気を付けて...ふぁ...」
勝利の余韻に浸っていたアタシ達は沈黙した。
「と、取り敢えず戻りましょうか...」
沈黙に耐え切れず、アタシは提案した。
◇◇◇
「ふわぁ、近くで見るとホントでっかいねぇ~」
レッドドラゴンが残した赤い魔石は、直径1mくらい、高さはアタシの身長より高い。リザードマンの魔石が片手サイズ、ミノタウロスの魔石が両手サイズなのに比べたら破格の大きさだ。
「アリシア、運べる?」
「うん、余裕」
アリシアが何でもないようにヒョイっと持ち上げる。凄いな!
「うん? 魔石の下が何か光ってる? これって転移魔法陣?」
魔石を持ち上げた下に転移魔法陣が描かれていた。
「おぉ、これは助かる。では早速行きましょうか」
「そうだな。牛もトカゲも当分見たくないしな」
殿下の言葉に私達は揃って苦笑した。来た道を戻りたくないのは確かだ。
アタシ達は転移魔法陣に乗ってダンジョンの入り口まで転移した。
「うん? 何か揉めてるのかな?」
ダンジョンから出たアタシ達の目に映ったのは、護衛の皆さんに羽交い締めされてるマリーの姿だった。何事!? って思ったアタシの元に、大粒の涙を流しながらマリーが抱き付いて来た。
「ミナお嬢様っ! よくぞご無事でっ!」
「え~と? ただいま? で、これってどういう状況?」
すると困った顔の護衛の一人がこう言った。
「その...マリー殿はダンジョンの奥の方から振動と魔獣の叫び声がした時から『助けに行く!』と、言い出しまして...それを危険だからと我々がお止めしておりました」
「そうだったんだ...ゴメンね、マリー。心配掛けたね...」
「お嬢様ぁぁぁっ~!」
普段の鉄面皮はどこへやら、泣きじゃくるマリーの背中を軽く叩いて、心配掛けたのが申し訳なかったのと、ここまで心配してくれたことに感謝して、アタシもまた涙を流した。
◇◇◇
マリーが落ち着いたところで護衛の皆さん達含め、ダンジョンで起こったことを話した。皆一様に驚いていた。特にアリシアが運んで来た魔石の大きさには度肝を抜かれたようだ。
そしてことの重大さを改めて認識したアタシ達は、この異常事態を少しでも早く報告をする為に馬車を急がしている。馬車に揺られながら殿下が切り出した。
「まずは父上に報告を上げる。きっと上層部は大騒ぎになるな。その後は冒険者ギルドへの情報共有を行う。こっちも大騒ぎしそうだ。忙しくなりそうだな。魔石のこともあるし、冒険者登録の件もある。明日にでも全員でギルドへ行こうと思うんだが、みんなの都合はどうだ?」
殿下の提案に全員が「大丈夫」と応える。うん、そうだよね。情報共有は大事だ。アタシ達のように精霊の加護持ちだってあれだけ苦戦したのに、初心者向けダンジョンだと思ってランクの低い冒険者が入ったりしたら多分死んでただろうから。
「それとアリシア、精霊の加護おめでとう。これで晴れて『精霊の愛し子隊』の一員だな」
全員から「おめでとう」と言われたアリシアは照れながら、
「あ、ありがとうございます...でもやっぱりその名前はちょっと...」
「まだ言ってるの? じゃどんな名前がいいのよ?」
「そうだなぁ...例えば『フェアリーズ』とかどう? 可愛くない?」
「いやそれだと精霊じゃなく妖精じゃん」
アタシの指摘にアリシアが真っ赤になって俯く。みんなは笑ってる。するとアリシアはアタシにだけ聞こえるように囁いてきた。
(精霊って英語でなんて言うのよ?)
(知らん。ググれ)
(ググれるかっ! ってかググれるもんならググりたいわっ! スマホもPCもネットも無い状況がこれ程恨めしいとわっ!)
(異世界乙~)
「なにコソコソ話してるんですの?」
「ナンデモアリマセンヨ」
不審に思ったシャロン様に突っ込まれた。まぁ、ホントは知ってるんだけどね。精霊を英語で言うと「スピリット」か「エレメント」かな。どっちもシックリこないんで放っとく。
「それとレッドドラゴンとの戦いで尚のこと痛感させられたな。やっぱりパーティーリーダーはミナが相応しいと。ミナもさすがに異論は無いだろ?」
「いやいや、有りますって! 私リーダーなんか柄じゃないですって!」
みんなが「うんうん」頷いてる中、アタシが執拗に抵抗していると、見かねたエリオットがこう提案してきた。
「じゃこういうのはどうでしょう? 対外的な代表としては殿下がリーダーのままで、戦闘時にはミナがリーダーになるっていうのは?」
「あぁ、それ良いわね。面倒なことは全部アルに任せて、ミナさんには思う存分伸び伸びと指揮を執って貰いたいわ」
「面倒なことってお前な...まぁ、いいか。ミナもそれでいいな?」
「はぁ、まぁそれなら...」
アタシは渋々頷いた。まぁ、仕方無いか...ここまで言われちゃね。一つ気合い入れて頑張りますか。みんなの期待には応えたいからね。
あと、どうでもいいけどシャロン様、すっかり殿下のこと愛称呼びだね。アタシもシルベスターのことを、みんなの前でもずっとスライって呼んじゃってるからお互い様か。そのスライは、
「ミナなら大丈夫。ボクも及ばずながらフォローするから」
うぅ、ホンマにえぇ子やの~
「それじゃ早速だが、リーダーとして一言なんかあるか?」
殿下にそう言われてアタシは考える。
実は色々と思っていることがあるんだよね。
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