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第155話 ちみっこと風竜の山 その2

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『オリンポス山』は海抜約5000mクラスの高い山で、頂上付近は万年雪を冠している。

 霊峰とも呼ばれている山らしい。その威容にアタシ達は圧倒される。

「凄いね...」

「うん...なんか厳かな感じがする...」

「それと寒いね...」

「うん...防寒装備は万全なはずなのにね...」

 アタシとアリシアがそんな会話を交わしていると、

「おい、あれが竜巻の通った跡じゃないか!?」

 殿下が指差す方を見ると、確かに森の中の一部に木々が倒れている所がある。

「降りてみましょう」

 降り立った場所は針葉樹の森の中で、風に薙ぎ倒された木々が道を作っているかのようだった。

「まるで何かが通った跡みたいですね」

「あぁ、それが森の奥まで続いているな。跡を尾けるか?」

「そうですね...」

 アタシはちょっと考えてから、

「上と下から行きましょう。アリシア、徒歩で行ってくれる? あんたの身体強化なら山の中でも軽いもんでしょ? 私達は飛んで行くから」

「オッケー!」

「何かあったらすぐに言ってね?」

「了解!」

「メル、アリシアをよろしくね?」

「クルルッ!」

 もしかしたら何か手懸かりがあるかも知れないので、アリシアには地上を見て貰おうと思った。アタシ達は再びナギに乗って空から跡を追う。

 やがて森の奥の方の木々が生えてない場所に出た。

「ここは湖!?」

 湖と呼ぶには小さい。池と呼ぶべきだろうか。とにかくそんな所だ。

「ナギ、水辺の辺りに降りて?」

「キュイ!」

 アタシ達は水辺を探索しながら、アリシアの到着を待つことにした。

「キレイな湖だな」

「えぇ、透明度が高いですね」

 底の方まで良く見える。魚の姿は見えない。

「ん!? あれは!?」

 湖の底に何か光る物がある。

「なんだろうな!?」

 殿下と二人で目を凝らすが良く分からない。

「ウンディーネ、あれなにか分かる!?」

『ん~...斧みたいね~』

「はっ!? なんだって!?」

『だから斧よ~』

 まさかと思うが...ここで湖の女神が出て来て『あなたが落としたのはこの金の斧ですか? それともこの銀の斧ですか?』なんてね。

 あれはお伽噺であって、実際にそんなことある訳が...

 ザバァ!

 あったよ! ただし出て来たのは女神じゃなくて...

『ほう、人間の姿を見るのは久しいな』

 湖から長い首を出してこちらを見下ろしているのは...

 神話の時代を生きる存在、長大な体をくねらせるその姿は、ドラゴンではなく竜と呼ぶに相応しい。
 
 アタシは呆然と見上げながら、そんなことをボンヤリと考えていた。
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