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Ⅳ章
34話 盗難事件発生!
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「貴方、わたくしの扇子を盗んだでしょう!? 早く返してちょうだい!!」
穏やかではない様子。即座に駆け出そうとしたロゼアリアの肩を、アルデバランが掴んで止める。
「ちょっと」
「少し待て」
背の高いアルデバランには人だかりの中心がよく見えていた。顔を真っ赤にして怒っている貴婦人。この婦人は先程ロゼアリアの後ろを通り過ぎたうちの一人なのだが、そんなことはアルデバランは知らない。そして彼女の怒りの矛先が向いているのは、ザジャの青年。
アルデバランが見据えるのはザジャの青年の方だ。
貴婦人の扇子を盗んだ犯人として彼が疑われている。グレナディーヌ人が多い中、たった一人でいる異国の青年を直感的に怪しく思ったのだろう。
(はっ、ザジャ行きの飛行船にザジャ人が乗ってるのは珍しいことでもないだろ。思い込みだけで騒いで、だから人間は嫌いなんだ)
目を細め、何かを確認したアルデバラン。周囲の人間よりずっと高い背を屈めて、ロゼアリアの耳元で話す。
「貴族の女の扇子を盗んだ犯人にザジャの男が疑われてるが、おそらくあの男はザジャの皇族だ」
「えっ、皇族? ザジャの?」
「ああ。袖の中に隠しちゃいるが、そいつの付けてる腕輪は間違いなく皇族の物だ」
つまり、皇族相手に貴婦人の女性は声を荒げているということ。一刻も早く止めなくては。この間にも「早く警吏を呼んで」という女性の声が聞こえてくる。その喧騒を耳にしながら、小声でやり取りを続けるアルデバランとロゼアリア。
「あいつが皇族なら、ここは助けてやるのが得かもな。俺は最短でグレナディーヌに戻りたい。貸しを作れば皇帝に口利きしてくれるかもしれないだろ」
「貴方って人は……」
損得勘定で人助けを決める辺り、アルデバランらしい。
「話を聞く限り、皇族の身分を隠してるみたいだな」
「じゃあ、それが知られる前になるべく早く扇子を盗んだ真犯人を探せばいいのね」
「そういうことだ。よし、行ってこい」
「え?」
行ってこい、とはどういうことか。アルデバランを見れば、「まだ何か?」みたいな顔で見返してくる。
「貸しを作るんでしょ? アルデバランは行かないの?」
「こういうのはロゼの方が得意だろ。俺は面倒事はごめんだ。ほら、さっさと首突っ込んで存分に恩を売ってこい」
「…………」
アルデバランの腕を掴み、ぐいぐい引きながら人混みを掻き分けるロゼアリア。「貸しを作る」だの「恩を売る」だの偉そうなことを言っておいて、人に丸投げとはどういうことか。
「おい、引っ張るなって」
文句を言ってるアルデバランは無視して、ロゼアリアは件の二人の前へ躍り出た。
犯人として疑われていたのは、さっき話しかけようと思った彼だった。困った表情で鞄を前に抱いている。
「すみません。どうされましたか?」
ロゼアリアが尋ねると、貴婦人が訝しげな目で睨んできた。
「あら、貴女どちら様? 関係の無い方は控えてくださる? わたくしが呼んでるのは警吏隊なの」
相当気が立っているようだ。貴婦人はこちらに対しても険しい態度を見せた。
「私はロゼアリア・クォーツ・ロードナイト。今はザジャへの使節団の一員としてこの飛行船に搭乗しています」
ロードナイトの名に、女性の態度が少し落ち着いた。
「まさか、白薔薇姫様? 今は静養中だと伺っていたのだけれど」
久方ぶりの呼び名を聞いてロゼアリアは苦笑する。そうだった。あの傷を受けた後、白薔薇姫は静養中ということにしていた。もう仮面は不要だからとすっかり忘れていた。
「いいえ。ご覧の通り、こちらの魔塔の主様と共にグレナディーヌを代表してザジャへ向かうところなのです」
人だかりの興味はザジャの青年よりロゼアリアとアルデバランに向いていた。それもそのはず、全身を黒で覆った長身の男が現れれば誰だって目を引かれるものだ。おまけにその美貌だ。一瞬でこの場の視線を集めるのも当然だろう。
まるで品定めでもするかのように、貴婦人がアルデバランの頭からつま先まで支線を巡らせる。
「魔塔の主? こちらの殿方が?」
「はい。お困り事でしたら、魔塔の主様が協力してくださるそうですよ。この御方はとてもすごい魔法使いですから」
さっきの仕返しだ。ここぞとばかりにアルデバランに押し付ける。隣から「勝手なことを言うな」と目で訴えられるが、ロゼアリアはそれを無視してにこにこと笑顔を浮かべる。
「それなら、早くあの男から扇子を取り戻してくださる?」
ロゼアリアがアルデバランを肘で小突いた。小突かれたアルデバランは、仕方なさそうに息を吐く。
「……まず、扇子が盗まれた経緯を話してくれないか。それから扇子の特徴も」
「ええ、もちろんですわ。わたくしの扇子には純金の装飾とエメラルドが施してありますの。一目見ればその美しさが分かりますわ」
誇らしげに語る貴婦人を前に、腕を組んだアルデバランが至極どうでもよさそうに話を聞いている。
「ああ、そう。で? いつ盗まれたことに気づいた?」
「わたくし、そこの席でお茶をいただいていましたの。ほら、ここからだと外の景色がよく見えますでしょう? せっかく飛行船に乗りましたもの。優雅なティータイムには最適の場所ですわ」
「……で、盗まれたことにはいつ気づいたんだ」
おしゃべりな貴婦人に、アルデバランの声に苛立ちが滲む。
「そうそう。そこで、少しの間扇子をサイドテーブルに置きましたの。目を離したのはほんの一瞬でしたのに……。扇子が無くなったことに気づいて、その時サイドテーブルの傍にいたのがそこの男でしてよ」
キッと睨まれた青年が身を竦める。彼女の中では、犯人はもうこの青年と断定されていた。
「落ち着け。飛行船が飛んでるうちはどうせ犯人も逃げられない。他にその場面を見た人間はいないのか?」
「あの……わたくしは彼女と一緒にいたのだけれど、扇子が盗まれたことは彼女の声で気づいて」
扇子を盗まれた女性と一緒にいた、もう一人の貴婦人。しかし彼女も、犯行の瞬間は見ていないと言う。これではザジャの青年が犯人という証拠も無いが、潔白である証拠も無い。
「そうか。まあいい。ここで可能性をざっくり二つに絞ると、まず一つはそいつが盗んだ線だ。もう一つは、別の奴が盗み、そいつに罪をなすりつけた線。後者なら、この騒動に紛れてとっくにこの場を離れてるはずだ」
「じゃあ、どうすればいい? 他の人にも怪しい人を見てないか、聞き込みをした方がいいよね?」
ロゼアリアが尋ねるが、アルデバランは首を横に振った。
「いや。もっと効率良くいこう」
効率良く、とは。一同が首を傾げる中、アルデバランは淡々と話す。
「真犯人が別にいる前提で進めるぞ。ザジャのお前。お前は一緒に行動してもらう。どうせ飛行船に乗ってる間やる事なんか無いだろ?」
「ちょっと、アルデバラン! 呼び方!」
自分で「ザジャの皇族だ」と言った相手に対しなんて無礼な態度だ。慌てたロゼアリアがアルデバランのローブを引っ張った。
「ばか、この場においてはこっちが正解だ」
再び背を屈めたアルデバランが、ロゼアリアに小声で話す。
「いいか? あいつは身分を隠してるんだぞ。ここで恭しい態度でも取ってみろ。どうなるか分かるだろ?」
「あ、そっか。そうよね」
なるほど、彼の言う通りだ。今はあの青年の身分を知らないという態度で接するべきだ。
「えっと……はい、僕は構いません」
「なら良かった。ここで断れば、やましい事がある、と言うようなもんだからな」
アルデバランが指を鳴らす。すると、キラキラと光の粒子が集まってきた。以前にも見たことがある。魔法使い達にエリューと呼ばれるものだ。
「魔力と違ってエリューは誰にでもある。まだそれほど時間も経っていないから、くっきり残ってるな。扇子に付着したお前のエリューを可視化した。これを辿れば、盗んだ奴に辿り着けるだろ」
効率良く、とはこういうことだったらしい。アルデバランが可視化させた光の粒子は、ザジャの青年には繋がっていなかった。その先がどこまで続いているのかは、辿ってみないと分からない。
「じゃあ行くか。エリューは時間と共に離散する。モタモタしてると辿り着く前に消えるぞ」
「分かった。オロルックとフィオラは三方の護衛をして」
「承知っス」
「はい、お嬢様」
青年の冤罪は晴らせたのだ。あとは、真犯人を捕まえるだけだ。光の粒子が消える前に早く追わなければ。
穏やかではない様子。即座に駆け出そうとしたロゼアリアの肩を、アルデバランが掴んで止める。
「ちょっと」
「少し待て」
背の高いアルデバランには人だかりの中心がよく見えていた。顔を真っ赤にして怒っている貴婦人。この婦人は先程ロゼアリアの後ろを通り過ぎたうちの一人なのだが、そんなことはアルデバランは知らない。そして彼女の怒りの矛先が向いているのは、ザジャの青年。
アルデバランが見据えるのはザジャの青年の方だ。
貴婦人の扇子を盗んだ犯人として彼が疑われている。グレナディーヌ人が多い中、たった一人でいる異国の青年を直感的に怪しく思ったのだろう。
(はっ、ザジャ行きの飛行船にザジャ人が乗ってるのは珍しいことでもないだろ。思い込みだけで騒いで、だから人間は嫌いなんだ)
目を細め、何かを確認したアルデバラン。周囲の人間よりずっと高い背を屈めて、ロゼアリアの耳元で話す。
「貴族の女の扇子を盗んだ犯人にザジャの男が疑われてるが、おそらくあの男はザジャの皇族だ」
「えっ、皇族? ザジャの?」
「ああ。袖の中に隠しちゃいるが、そいつの付けてる腕輪は間違いなく皇族の物だ」
つまり、皇族相手に貴婦人の女性は声を荒げているということ。一刻も早く止めなくては。この間にも「早く警吏を呼んで」という女性の声が聞こえてくる。その喧騒を耳にしながら、小声でやり取りを続けるアルデバランとロゼアリア。
「あいつが皇族なら、ここは助けてやるのが得かもな。俺は最短でグレナディーヌに戻りたい。貸しを作れば皇帝に口利きしてくれるかもしれないだろ」
「貴方って人は……」
損得勘定で人助けを決める辺り、アルデバランらしい。
「話を聞く限り、皇族の身分を隠してるみたいだな」
「じゃあ、それが知られる前になるべく早く扇子を盗んだ真犯人を探せばいいのね」
「そういうことだ。よし、行ってこい」
「え?」
行ってこい、とはどういうことか。アルデバランを見れば、「まだ何か?」みたいな顔で見返してくる。
「貸しを作るんでしょ? アルデバランは行かないの?」
「こういうのはロゼの方が得意だろ。俺は面倒事はごめんだ。ほら、さっさと首突っ込んで存分に恩を売ってこい」
「…………」
アルデバランの腕を掴み、ぐいぐい引きながら人混みを掻き分けるロゼアリア。「貸しを作る」だの「恩を売る」だの偉そうなことを言っておいて、人に丸投げとはどういうことか。
「おい、引っ張るなって」
文句を言ってるアルデバランは無視して、ロゼアリアは件の二人の前へ躍り出た。
犯人として疑われていたのは、さっき話しかけようと思った彼だった。困った表情で鞄を前に抱いている。
「すみません。どうされましたか?」
ロゼアリアが尋ねると、貴婦人が訝しげな目で睨んできた。
「あら、貴女どちら様? 関係の無い方は控えてくださる? わたくしが呼んでるのは警吏隊なの」
相当気が立っているようだ。貴婦人はこちらに対しても険しい態度を見せた。
「私はロゼアリア・クォーツ・ロードナイト。今はザジャへの使節団の一員としてこの飛行船に搭乗しています」
ロードナイトの名に、女性の態度が少し落ち着いた。
「まさか、白薔薇姫様? 今は静養中だと伺っていたのだけれど」
久方ぶりの呼び名を聞いてロゼアリアは苦笑する。そうだった。あの傷を受けた後、白薔薇姫は静養中ということにしていた。もう仮面は不要だからとすっかり忘れていた。
「いいえ。ご覧の通り、こちらの魔塔の主様と共にグレナディーヌを代表してザジャへ向かうところなのです」
人だかりの興味はザジャの青年よりロゼアリアとアルデバランに向いていた。それもそのはず、全身を黒で覆った長身の男が現れれば誰だって目を引かれるものだ。おまけにその美貌だ。一瞬でこの場の視線を集めるのも当然だろう。
まるで品定めでもするかのように、貴婦人がアルデバランの頭からつま先まで支線を巡らせる。
「魔塔の主? こちらの殿方が?」
「はい。お困り事でしたら、魔塔の主様が協力してくださるそうですよ。この御方はとてもすごい魔法使いですから」
さっきの仕返しだ。ここぞとばかりにアルデバランに押し付ける。隣から「勝手なことを言うな」と目で訴えられるが、ロゼアリアはそれを無視してにこにこと笑顔を浮かべる。
「それなら、早くあの男から扇子を取り戻してくださる?」
ロゼアリアがアルデバランを肘で小突いた。小突かれたアルデバランは、仕方なさそうに息を吐く。
「……まず、扇子が盗まれた経緯を話してくれないか。それから扇子の特徴も」
「ええ、もちろんですわ。わたくしの扇子には純金の装飾とエメラルドが施してありますの。一目見ればその美しさが分かりますわ」
誇らしげに語る貴婦人を前に、腕を組んだアルデバランが至極どうでもよさそうに話を聞いている。
「ああ、そう。で? いつ盗まれたことに気づいた?」
「わたくし、そこの席でお茶をいただいていましたの。ほら、ここからだと外の景色がよく見えますでしょう? せっかく飛行船に乗りましたもの。優雅なティータイムには最適の場所ですわ」
「……で、盗まれたことにはいつ気づいたんだ」
おしゃべりな貴婦人に、アルデバランの声に苛立ちが滲む。
「そうそう。そこで、少しの間扇子をサイドテーブルに置きましたの。目を離したのはほんの一瞬でしたのに……。扇子が無くなったことに気づいて、その時サイドテーブルの傍にいたのがそこの男でしてよ」
キッと睨まれた青年が身を竦める。彼女の中では、犯人はもうこの青年と断定されていた。
「落ち着け。飛行船が飛んでるうちはどうせ犯人も逃げられない。他にその場面を見た人間はいないのか?」
「あの……わたくしは彼女と一緒にいたのだけれど、扇子が盗まれたことは彼女の声で気づいて」
扇子を盗まれた女性と一緒にいた、もう一人の貴婦人。しかし彼女も、犯行の瞬間は見ていないと言う。これではザジャの青年が犯人という証拠も無いが、潔白である証拠も無い。
「そうか。まあいい。ここで可能性をざっくり二つに絞ると、まず一つはそいつが盗んだ線だ。もう一つは、別の奴が盗み、そいつに罪をなすりつけた線。後者なら、この騒動に紛れてとっくにこの場を離れてるはずだ」
「じゃあ、どうすればいい? 他の人にも怪しい人を見てないか、聞き込みをした方がいいよね?」
ロゼアリアが尋ねるが、アルデバランは首を横に振った。
「いや。もっと効率良くいこう」
効率良く、とは。一同が首を傾げる中、アルデバランは淡々と話す。
「真犯人が別にいる前提で進めるぞ。ザジャのお前。お前は一緒に行動してもらう。どうせ飛行船に乗ってる間やる事なんか無いだろ?」
「ちょっと、アルデバラン! 呼び方!」
自分で「ザジャの皇族だ」と言った相手に対しなんて無礼な態度だ。慌てたロゼアリアがアルデバランのローブを引っ張った。
「ばか、この場においてはこっちが正解だ」
再び背を屈めたアルデバランが、ロゼアリアに小声で話す。
「いいか? あいつは身分を隠してるんだぞ。ここで恭しい態度でも取ってみろ。どうなるか分かるだろ?」
「あ、そっか。そうよね」
なるほど、彼の言う通りだ。今はあの青年の身分を知らないという態度で接するべきだ。
「えっと……はい、僕は構いません」
「なら良かった。ここで断れば、やましい事がある、と言うようなもんだからな」
アルデバランが指を鳴らす。すると、キラキラと光の粒子が集まってきた。以前にも見たことがある。魔法使い達にエリューと呼ばれるものだ。
「魔力と違ってエリューは誰にでもある。まだそれほど時間も経っていないから、くっきり残ってるな。扇子に付着したお前のエリューを可視化した。これを辿れば、盗んだ奴に辿り着けるだろ」
効率良く、とはこういうことだったらしい。アルデバランが可視化させた光の粒子は、ザジャの青年には繋がっていなかった。その先がどこまで続いているのかは、辿ってみないと分からない。
「じゃあ行くか。エリューは時間と共に離散する。モタモタしてると辿り着く前に消えるぞ」
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