悪役令嬢の末路

ラプラス

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それから【4】

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 公爵家の使用人たちは、流石に分を弁えているのか、私の前では(私を)けなしたり、毒を吐くことはしなかった。
 それでも、私と彼らとには線引きがされていて、なんだか悲しい。

 そんな頃だった。
 私は図書室に本を返しに向かう途中、使用人たちの休憩スペースの前を通ろうとした際に、声が聞こえた。

 「知ってる?奥様、嫁いでくる前は社交界で悪い噂が立っていたんですって」

 話題は私のようで、一瞬ひやりとした。

 「まぁ。でも、小言も言わないし、私達使用人にもお礼言ってくれるし、いい奥様だと思うけど?」
 「そうよね。噂では旦那様とリリシア様の恋仲を引き裂いた悪女とか言われてるけど、元々旦那様とリリシア様は恋仲でもないし。一体どんな性格の歪んだご婦人が噂を並べたのかしら。きっと奥様は毎晩枕を涙で濡らしていたに違いないわ!お可哀想に…」
 「まぁまぁ。一応お二人は幼馴染だし、身分も釣り合うからどう?って話はあったけど、結局旦那様は断ってしまわれて、今は愛すべき奥様を迎えられたのだからいいじゃない。奥様はもう社交界には出られていないのでしょう?噂で心を傷つけられなくなっただけよかったのではない?」
 「そうだけど……。やっぱり噂を流したご婦人は一回しめなきゃ気が済まないわ」
 「いいかげん落ち着きなさいって。大丈夫よ、奥様なら旦那様が守ってくださるわ。そのために妻に迎えられたのでしょう?」

 使用人の一人から、意味不明な言葉が出てきた。

 「そうそう!あれはびっくりしたわよねぇ。リリシア様の縁談を蹴ったと思ったら、奥様と結婚させてくださいってご隠居様に土下座だもの。長期間による旦那様の説得に、ご隠居様もぽっきり折れちゃって、愛の深さを感じたわ。でも、もしかしたら噂の元はここから成るのかもしれないわね。旦那様、美丈夫だし、大層おモテになるようだから」


 いつの間にか、使用人たちの声は聞こえなくなって、頭にお父様の声がぐるぐると駆け巡っていた。

 「いいかいアイラ。これは政略結婚。互いの利益だけを目的とした、愛など存在しない結婚なんだ。ごめんな、アイラ…」



 何が嘘で、何が本当なのか、わからなくなってしまった。


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