悪役令嬢の末路

深淵の、その先に【3】

　私の意識は、やがて目を瞑るように闇の中を沈んでいった。一体どれくらいの時間そうしていたのかわからない。
　暫くすると、頭上から声が響いてきて、私の耳に届く。

　「おーい！だいじょーぶー？」

　思い瞼をなんとか持ち上げて、ギギギ…と頭を上げてみようとする。

　「あ、無理しなくていいよ！きついでしょ？」

　そういって目の前に現れたのは、不思議な女の子。私の周りをすいすい動き回っている。
　身体、重く感じないのだろうか。

　「私が来たからにはもう大丈夫！今助けてあげるからね」

　女の子はそう言うと、私に触れた。
　その瞬間、さっきまで感じていた身体の重みが消える。
　驚いて、身体をまじまじ見ていると、女の子は申し訳なさそうに口を開いた。

　「すぐに助けに来られなくてごめんね。身体の自由がきかなくなって、びっくりしたでしょ」
　「えっと…。ここは一体どこなんですか？」
　「ここはね、夢と現実の中間であり、過去と現在の真ん中。その二つの真ん中が合わさった地点なの。ここは悪いものが溜まりやすいから、トラップを仕掛けているのよ。身体の自由がきかなくなったのはそのせい」
　「あの、悪いものって何ですか？」
　「んー。それは秘密。きっとアイラちゃんは知らなくていいことだから」
　「なんで私の名前…」
　「私は死神だからね。名前を聞かなくても誰が誰かわかってしまうのだよ。…そんなことより、魂が身体を抜け出してからかなり時間が経っている。あなたははやく自分の身体に戻らなければ。」
　「ま、待ってください。私はまだ、あの人たちを見ていたい。知りたいんです」
　ーー自分が何者なのか。

　「ふむ。それならばこうしようよ。私と同伴することを了承するなら、この先のタイムリープを許可する。どうかな？」
　「はい。それで、お願いします」
　「よろしい。では早速行きましょうか」

　彼女が腕を振ると幾つもの光が現れて、私たちを囲むと、そのまま消えた。