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【紫苑視点】えええええ……
しおりを挟むどこか遠くに行こうと走ったのに、ベスに見つかってうだうだと言い訳してる間に置屋に連れて行かれた。
僕はいつもこうだ。全部捨てる勇気もないくせに。ハッピーエンドなんてあるわけないのに。それでも誰かが僕だけを愛して守ってくれるんじゃないかって。ハルさんが生まれ変わって、都合よく全部忘れて僕と恋をしてくれるんじゃないか……って。
結果はこれだ。僕はハルさんを人身売買で買った挙句に騙して囲った。ひどすぎる。僕、人非人。まあ、もう人じゃないけど。
ベスの……楼主の部屋で膝を抱えて蹲る。
僕がここにいるって知らない見世の女の子たちがおしゃべりしてるのが聞こえる。
どの見世にどんな子が入った。ああいう客がきた。こんな話をした。 ーーー ハルさんがカッコいい………とか。
………ハルさんがカッコいいのなんか当たり前じゃない。ハルさんはかっこいいんだ。僕の好きな人なんだから。カッコ悪くたって好きだよ。でも、……でもね…………。
ざわざわ。きゃあ。きゃあ。女の子たちの姦しい声。ねえ、あんまりうるさいと帰ってきたベスに叱られるよ?朝ごはん食べて、お風呂入って寝ないと、夜の見世に間に合……
「……紫苑様?開けるわよ?」
ああ、なんだ。ベスが帰ってきちゃったのか。セルが来ないってことはそういうことだ。ハルさんは、全部思い出して………
障子の開く音。
「紫苑様、帰るぞ」
「ふぇっ?!」
えっ…
えっ、え……えええ……
ふわりとした浮遊感。
なんで!?どうして!?ハルさんが迎えにくるわけ!!??
「ハルさ……」
そのままハルさんは何も言わずに僕を抱っこして、すごい速さで歩いた。
えええええええええええええ………
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