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【セオドア独白】2
しおりを挟む適齢期になった王子は大神殿での禊が義務付けられる。女神の泉で祈祷し、身を清める。なんらかの不具合があれば女神の泉が赤く染まる。これまで問題がなさすぎて既に形骸化している儀式だよ。そう15歳の……高等部に上がる前だ。
言いにくいことですが。
その若い神官は言った。
『王子殿下は、お子の胤がありません。将来、御子を成すのは絶望でしょう』
私は即座にその神官を殺した。そしてその『記録』は、私が開示せぬ限り見ることができぬものと封印を施した。
子供が ーーー できない。
それは、エマと子供ができないということだ。王太子でなくなる。エマを ーーー エマとお前を奪われるかもしれないということだ。
私は荒れた。私に言い寄る令嬢から片っ端から胤をつけて、数名が妊娠した。
ほら、やっぱり。嘘だった。
安堵する私は、令嬢たちが孕んだ子が私の子なら認知しようと言った。
大丈夫。大丈夫。エマはこんなことじゃあ怒らない。私という存在を、本質を、思考を知っているのは、お前とエマしか居ないのだから。
けれど、その後、妊娠してくれた令嬢たちは、修道院に送られたり、領地に蟄居を命じられた。
私の子は一人も居なかった。
もう、どうしていいかわからない。
そんな時だ。
シャーロット・ポーターが近付いてきたのは。
彼女は本当に都合の良い女だったよ。見目の良い高位貴族にあからさまに擦り寄って、すぐに体を許して捨てられて。平民や下位貴族の令息たちと懇意にして、その婚約者たちから排除されようと騒ぎを起こしていた。
「私はあなたのことをわかってあげられる」。私にもそんなことを言いながら近付いてきた。私の何がわかると言うのだろうね?私というものを知っているのはお前たちだけだというのに。私にもすぐに体を許して、恋人気取りで纏わりついてくるようになった。煩わしいけれど使える女だった。
シャーロット・ポーターはすぐに私の自称恋人たちと諍いを起こしたよ。ああ、本当に都合がいい。ありがとう、私の評価を落としてくれて。では私はこの令嬢たちの中で一番地位が低く愚かな女を選ぼう。
後はお前も知っているだろう?
エマに『側妃』になれと告げた。エマはそれだけで気付いたよ。私の方になんらかの不都合が生じて、私が態と評価を落としたのだと。政を全てエマに丸投げしたのだと。子作りさえ放棄したのだと。
だからお前をくれと言った。色々と1人では無理だと。
酷い女だ。
すぐに頭を切り替えることのできる、優秀な女だ。さすが『シーグローブ』の女だ。
けれど私は、心のどこかでエマに詰って欲しかった。裏切り者、と泣いて欲しかった。嘘吐きと引っ叩いて欲しかったよ。
…………ケイレブ。エマはお前にしかやらない。お前以外の誰かがエマに触れることは許さない。お前がエマを愛して、子を成すんだ。このルネライトの王族の血を引く子供を。幸い、お前は『シェパード』だ。王家が断絶した際に担ぎ出される『保険』の一族。根回しも終わっている。
お前が覚悟を決めれば、全てが上手くいく。
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裏設定
シャーロットはこの世界は18禁乙女ゲームの世界だと思い込み、ハーレムルートのままに行動した。だが常識あるセオドアの側近候補(攻略対象)は彼女を避け(頭のおかしい娘だと思った)、引っ掛かったのはモブばかり。そのモブもシャーロットに夢中になるはずがなく弄ばれて捨てられた。
セオドアの側近候補は、セオドアの愚行に怒りを通り越して呆れ果て、全員が側近候補を辞した。
「セオドア王子の子を妊娠した!」と騒いだ令嬢たちは、悉くセオドアや王家の血など微塵も感じさせない色合いの子供を産み落とし、問い詰めてみるとセオドア以外の誰かと関係を持っていた。王家の胤を宿した可能性のある女性と肉体関係を持つのは、男女共に死罪。令嬢の親たちは「間違いだった」と言って娘を隠し、娘と家名を守った。
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