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09 むかし、むかし
しおりを挟むむかし、むかし。
地球世界がまだ混沌としていた時代の話。
《管理者》から地球世界を任された《唯一》は、天の支配者たちを模して《オリジン》を作った。
最初に作ったのは《高天》、《桜座》、《久遠》、《奈落》。
この四柱から、言葉遊びのように《唯一》は交配し、増やし、海を、地を、世界を満たした。
中でもお気に入りだったのが《桜座》 ーーー 俺だ。
多分、《桜座》は《唯一》の大切な誰かを模して作られて、代わりにされていたんだと思う。
でも俺は正直、《久遠》以外はどうでもよかった。
子が欲しいって言われたら手伝ってやるし、体を繋げるという行為は、俺たちオリジンにとっては食事のようなものだ。
そういうふうに《唯一》が作った。《原初の四柱》を。オリジンを。
なのに、俺と《久遠》の間にはどうやっても子は出来なかった。
呪いだ、と《久遠》は笑っていた。
お前は《唯一》に愛されすぎてるから、お前が好きだと言ってくれる私は、お前とは本当の意味で結ばれることはない、と。
それでも俺と《久遠》は一緒に居た。
《久遠》が居なくなってしまうまで。
探して。
探して、探して、探して。
探しても、探しても、世界中のどこを探しても、《久遠》は居なかった。
誰に訊いても。
《唯一》でさえも、だんまりだった。
ちょうどその頃だ。オリジンの中でおかしな『遊び』が流行ったのは。
俺たちオリジンは、ちょっとやそっとじゃ死ねない。特に俺みたいな《原初の四柱》は消滅さえ難しい。
みんな飽きたんだろう。この長い長い時間に。
オリジンたちは、自らの体を砕いて、その頃、最も脆弱で矮小で、そして気持ち悪いくらいに増えていた《人間》の中に混ぜ込んだ。もう一度構築できたら上がりの遊びだ。
いつのまにかオリジンたちは消えていった。
面倒くさいなあ。
《久遠》がどこにも居ない。
俺はすっかりやる気を失っていた。
そうだ。自分を小さく砕いて、たくさんになって拡散すれば。そうしたら《久遠》を見つけられるかもしれない。
そんなわけないのに。
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