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拾参
しおりを挟む「フェリーチェ嬢、私なら。私なら君を幸せにしてあげれる。さあ、共に行こう」
キラリと真っ白に磨かれた歯を輝かせ、男が歌うように進み出た。
『えっ…きも!』
「………」
白鉛特有の病的なまでに白い肌と、艶やかに鏝で巻かれた長い金の髪。大きな赤い唇に、動物の毛を付けた長い睫毛。肩幅は厚紙か何かを入れて2倍ほどに膨らんでいて、何故か胸元が臍のあたりまで大きく開いて真珠の粉が塗してある。
ひと世代前は美の化身と言われた男が私に手を差し出していた。
フィアンマ国王の弟にして大公。エウフェミオ・フィアンマ・カルディア。王太子ヴェスパジアーノの伯父。そしていつもフェリーチェの前に偶然現れて胸や頸を舐め回すように鑑賞して去っていく変態。
以前からおかしいとは思っていたが、この状況で、笑顔で、私や乙女に選ばれると信じて疑わない異常性。黒焦げの死ねない焼死体や口が溶けた女、汚水になった色惚けを見ても恐怖を感じていないらしい。
「さあ、フェリーチェ!愛しい女!私の手を取りたまえ!」
「妻子のある方はお断りします」
「おやおや?拗ねているのかな、私の砂糖菓子ちゃんは?もちろん妻も娘も大切だが、君の前では些事さ」
「意味がわかりかねる」
「可愛い蜥蜴ちゃん。私が番ってあげよう。私が王となり、この者たちを連れて神の国へと行こう」
「とかげ…」
暫し呆然としてしまった。とかげ……とかげ…久しぶりに言われたな、それ。
『ンンンもう!私の竜を口説くなんてッ!!!死ねkpのhンたfsくgvっjfg』
落ち着け乙女。そうじゃない。
「私なら君を愛してあげられる。愚かな甥には無理だったがね。大人の包容力というものさ。君は家族に飢えているんだろう?愛情に飢えている。だから!この私の広く深い愛で包み込んであげよう!ああ、でも私の愛はいくつもあるんだ。妻も愛しているし、天上におわす女神だってあいs ── 」
ぐしゃ。
「…………あ」
『あっ…』
「「「「「「………………………」」」」」」
しん、とホールの中が水を打ったように静まり返る。
王弟の顔が陥没していた。というか消失していた。撒き散らされた血と脳漿。こぼれた眼球。何故…!?誰がこんなことを……
ふと
見た自分の右手が真っ赤だった。
「あっ…私か」
『うん…やっちゃったねえ?』
「つ…つい……!」
私の乙女を愛するとかいう悍ましいことを言ったから天罰が降ったのだろう。うむ。
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