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レーヴァンシュタインの悲劇【近衛隊長視点】
しおりを挟む麗しの我らが君主シャルル・ホールズワース・レーヴァンシュタイン陛下が戴冠された。あの魔女が死ぬ前から、シャルル様は君主であった。討伐に失敗し、魔女が逃亡した。お陰でシャルル様はその王冠を手にするまで5年も待たねばならなかった。
それももう今日で報われる。
シャルル様は聖女クララ様を妻に迎え、その地位を盤石にした。周辺国は魔王の呪いでことごとく飢饉に見舞われ、混乱が起き、征服されたというのに、このレーヴァンシュタインは魔女が去った途端に大豊作だ。素晴らしい。シャルル様こそ神に愛されたお方なのだ。
戴冠式には間に合わなかったが、先王夫妻も結婚式には駆けつけてくださった。艶消しの漆黒に白金の豪奢な装飾の4頭立ての馬車。ゆっくりと降り立った先王夫妻は1枚の絵画のように美しかった。
「アレクシス上王陛下、ルーカス様お久しb……」
「お久しぶりですルーカス様!」
私の口上を遮り、不躾にも駆け寄ったのは
「レイジーン、久しぶりだね?」
あの魔女の弟の、カーディナル公爵家の若造だった。この制服は確か危険な暗部所属のもの。暗部は隊長と副隊長しか顔を見せない。正体を掴ませない。……ということは、この若造、魔女の血筋の癖に出世したのか。
「で?お嬢様はどちらに?」
「ああ、いま馬車から下ろすよ。おいで、ロゼ」
「……!?」
ルーカス様の呼びかけに私やその他の警備兵たちはギョッとする。まさか……あの魔女が、生きていた…!?そんな!今更あの魔女が帰ってきては今日の式が台無し……それどころか大混乱になる!!
けれど。
馬車から伸ばされたのは、ほっそりとした小さな子供の手。
ルーカス様が馬車から抱き下ろしたのは漆黒のドレスを纏った幼子だった。顔は黒いベールで隠されていて見えない。けれど、サラリと肩に流れる緩やかなウエーブの赤毛はカーディナル家独特のもの。
「あー、お嬢様、小さくおなりで?」
「あなたもね、大きくなったわ、レイ」
………っ!?だれ、だ…!?この少女は。確かにシャルル様は『祝うのならば誰でも』と参列を許可されていた。だがカーディナル公爵家に幼い女児など居たか?
「俺の妹だ。この子が城に入れぬなら俺は帰る」
訝しげに見る私たちに気付いたのか、ルーカス様は優しげな声で残酷なことを言った。シャルル様は、聖女クララ様はルーカス様にお会いできることを殊の外楽しみにしていらっしゃった。ルーカス様の機嫌を損ね、帰らせてしまったりしたら……?
「どうぞ、お通りください。控えの間をご用意しております」
近衛兵の一人がよく通る声で促した。……っ、馬鹿が!どこの隊だ!?勝手な事をっ!!
鷹揚に頷くアレクシス様と、無言でそれに続く少女を抱えたままのルーカス様。じわり…となぜか不安が過ぎった。なんだ…この、違和感は…?
「俺が案内するよローレンス卿」
「お願いしますカーディナル様」
「きっ…貴様ら…!!一体誰の許可を得て……」
「隊長、ここでルーカス様の機嫌を損ねることはできません。隊長は先代様たちの到着を知らせに行くという大切な任務があるではないですか?」
「……っ…!」
そうだ。シャルル様には私が報告せねば。他の者に任せるなどできない。
「さ、お早く」
ローレンスという名の近衛兵が薄く笑う。
なんだ?このチリチリと焼けるような、漠然とした不安は。違和感は。……そうだ。先王夫妻は私を見たか?私の言葉に反応したか?
なにが……起こっているんだ…?
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