【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
24 / 160
王都編

謁見……腹が減った。



屋敷の探索も後回しで城に行くことになった。王家の紋付き馬車が迎えに来たからだ。


「おや、あの子は……耳が早い」


王兄殿下 ーーー ラドがくつくつと笑っているから想定内なんだろう。森を一直線に突っ切れば早いだろうに、馬車はわざわざ貴族街を抜けて城に到着する。それにしても腹が減った…。朝食直後に襲撃を受けたから昼飯も間食もとってない。もっと配慮しろゴラァ!こちとら育ち盛りボディぞ!?水分さえとってねえ!!ちなみにポチタマは同行せずに森を探索続行だ。クッソ!自由で良いなァ!

でもこういうのって大体控室で待たされるから、その間に何か摘むものを要求………できなかった。もう待ってた、王様。しかも不機嫌で。


「其方がリオ・プレンダーガストか」


おおう、重低音の美声。顔を見たいけどまだダメってリサに習った。リサは今でこそ田舎のプレンダーガストに馴染んで平民みたいな言葉遣いをするけれど、昔は侯爵家の次女だったらしい。まあ「学園でちょっとありまして…」と言葉を濁していたから追求はしなかったけど。


「面を上げよ」


ゆっくりと顔を上げると、そこかしこで息を呑む音がした。多分年配者だろう。嗄れた声で「ヘスティア様…」と呟いたのを耳が捉えた。あー、あれだ。ヘスティアって曾祖母様だ。そっかー、やっぱ似てるのか。ガラス産業のこと、領地のこと、いろいろつらつらと宰相であるラドが良く通る声で喋ってるけど……もう正直、腹が減りすぎて頭に入ってこない。


「して、黒衣の襲撃者を返り討ちにした、と言うが…」


おっと…聞いてなかった。えーあー…んんんー…

チラッとラドを見て、頷かれたので喋っていいんだろう。あー、腹減ったぁ!


「発言の許可を賜りたく」

「許そう」

「はっ。では失礼致します」


立ち上がり、靴を鳴らして足を揃え直立。顎を引き、前だけを見て。手を後ろに組むのはヒノモト国軍の直立不動の立ち方。あー、だってこれしか知らねえもん。背を丸め、手を前に組むのは卑屈、垂直に伸ばして棒立ちは奴隷。ヒノモト国軍は礼節を保ち、胸を張り前を向く。


「畏れながら申し上げます。あの場で、護衛騎士に任せたままの状態は非常に危ういと感じましたので、私が殺しました」

「「「「「!?!?!?」」」」」


ザワッとしたけどまあいっか。ラドが笑ってるし。


「正直、ピクニック気分で弛んでいる、とは思っていましたが、王都を目前にさらに気が緩んだのでしょう。私が馬車の窓から見た時はすでに半数以上が地に伏していました。明らかに劣勢。黒い襲撃者達にとってだったのでしょう。猫が獲物を甚振るようにいました。だから隙をついた。彼らは私を戦力だと思っていなかった。護衛騎士の士気は下がり、これ以上現場を放棄されかねない。なので私は打って出ました」

「つっ…作り話だ!!王国騎士がそのような  」

「続けなさい」

「………っ」


真っ赤な鎧を着たオッサンが叫ぶけど、ラドが先を促した。いいの?OK?うん、よし、続行。


「襲撃者は9人。まず2人の足の腱を切り、もう1人を下から斬り上げました。向かってきた4人目は腹を裂き、5人目は袈裟斬り」

「け…ケサ……?」

「坊主の袈裟です。斜めにこう、ズパッと。この身長では首は狙えないので」


6、7、8、9人目までちゃんと報告していると、周りのオッサンどもの顔色がみるみる青くなっていく。……あー、お綺麗な場所しか生きられないお貴族様にはキツかったか?


「子供の妄想だ!!こんな子供に!辺境のガキに!リリアーナの子供に!!そんなことができるはずがないッ!!」




………………おん?





感想 76

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。