76 / 160
領地編2
護衛失格
しおりを挟む「……エルマー、お前さぁ、やる気あんの?」
「…………っ」
新年会一日目を終え、俺はエルマーを呼び出した。もちろん二人きりなどではない。ティグレとプレンダーガスト騎士隊のウォーレン、大公邸の執事アイザック、そして何故かメアリーばあちゃんまでいる。聞いていないと言い訳できない様に王兄ラドルファスに許可をとり、大公邸での説教だ。なお、ラドはまだ新年会の会場だ。まあ陛下が抜けてないのにあの男が傍を離れるわけがない。それに……
ラドには仕込みを頼んでいる。
プレンダーガストからの次の品が新年会の最終日に陛下に献上される、と。嘘じゃない。職場の紅一点同士、職人姐さんと彫金師ちゃんがタッグを組んだエログッズ。アレを持ってきている。万が一見られても「なんに使うんだろう?」というシロモノだが、芸術的価値は高い。セクハラかなー…とも思ったが、なんだか本人たちは非常に楽しそうなので良しとする。ニップルピアスをあの二人に頼んだら、もうアレ関係は彼女たちに任せた方がトラブルが少ないだろうという判断。
……っと、話が逸れた。その『新作の献上』を阻止したい奴らが一定数いるということだ。ガラス産業のライバル工場とか、ラドと俺をこれ以上癒着させたくない勢力とか。正直、真打までは届かないだろう。だが確実に打撃は与えられるし、次の一手に慎重になるだろう。ラドのてのひらでガッツリ転がされているんだが、そこはそれ。俺に利がないわけでもないし。
そして今。
俺の仕込みはすでに終わっている。将棋倒しやピタゴラ⚫︎イッチの最初の一手。ツン、と突くだけ、簡単作業。前世のめっちゃ嫌味な教官を思い出しながらエルマーを追い詰める。正直楽しくない。陰口とかいじめとか、そういうの苦手なんだよ。やるならガッツリ『指導』して、そこから人間関係を構築して笑い合いたいものだ。
「なんのための護衛なんだ?突っ立ってるだけなら案山子で十分だろう?」
「……っそれ、は…っ……!」
「理由があるなら聞く。 ーーー 言え」
「……っ」
トン、トン、と指でテーブルを叩く。ほら、エルマー。ここで根性見せろ。怒鳴って喚いて本音を見せろよ。
「……わなかった、じゃ……か…」
「ん?」
「言わなかった…じゃないかっ!「助けて」って…!リオ!お前が俺にちゃんと!助けを求めたら俺だって…!!」
「はあ?なんでわざわざ護衛に助けを求める号令を出すんだ?おかしいだろ?一々号令掛けねえと動けねえとか、頭の足りない自走人形かなんかかよ?お前、プレンダーガストから給料貰ってるよな?それ、なんの対価?俺について回るだけの金魚の糞料金か?違うだろう?俺はお前を『護衛』として雇った。騎士隊のリーダーであるウォーレンと同じ金額を払っている。金魚の糞はそこまで重要か?」
「そこの落ちこぼれと一緒にしないでくれ!俺は侯爵家なんだぞ!出世コースから外れた奴らとはわけが違うんだ!!」
「侯爵家…と言えば、なあ、ウォーレン?お前の実家も侯爵家だなぁ?お前とウォーレン、何が違うんだエルマー?ウォーレンは護衛の仕事もこなすし、高位貴族のやり方もアドバイスをくれる。騎士隊のまとめ役もやってくれている。なあ、聞かせてくれよエルマー?」
「……なん、だよこれ!パワハラかよ!訴えてや…」
「なーにがパワハラだ?俺の雇用主としての立場からは逸脱していないし、就業環境が妨げられてんのはこっちだ阿呆が。こっちが訴えてェわ。……で、なんだ?雇い主のはずの俺は、護衛に「助けてください」って頭下げなきゃならんのだったか?………はー…つっかえねェなぁ、お前」
「………っ………!!!偉そうに!たかがなんとかとかいう勲章貰ったくらいで天狗になってんじゃねーよ!脇役のくせに!俺は主人公だぞ!?英雄のなる男なんだ!!踏み台如きがなに偉そうに説教たれてんだよ!大体、脇役なら脇役らしく、俺に頼って俺を崇めて尻でも差し出しとけばいいんだよ!田舎者の脇役が、未来の英雄に掘られるんだ、光栄だろ!」
「…………」
あー……ダメだこいつ。不治の病だ。英雄症候群。………つらい。過去の阿呆な自分を思い出して辛い!今すぐに叩き斬りたい…!!
ハァ~…と深い溜息を吐く。この溜息もさあ、演技のつもりだったんだ。演技で、溜息………もおおおおお…演技じゃねえよ!マジもんの溜息だよ!!
つまり、なんだ。こいつは俺に頼って欲しくて木偶の坊と化していた、と?危機に颯爽と現れる英雄の如く、すげえ良いとこ見せて、そんで……俺のケツを掘りたかった……と!?
……さいっあくだな、こいつ…!鳥肌が止まんねえわ、マジで。
「も、いい……お前、実家に帰れ。謹慎してろ。俺が良いって言うまで実家から絶対出てくるな。ウォーレン、こいつを外に放り出せ」
「はっ」
「なっ…なんで!?なんでだよ、リオ!なんでわかんねえんだよ!俺だけがお前を救えるんだよ!リオ!リォォォオオオオオオオオオオオ!!」
わかってたまるかァ!ボケェ!!
1,993
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生2929回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる