絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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寸法

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 マジうまいシャイバードの唐揚げをひたすら食べた後、ゴドーさんの鍛冶屋に来た。ベステルタ呼ばないとな。

『ベステルタ、そろそろ呼んでもいいかな? ゴトーさんのとこで寸法測ろうよ』

『いいわよー、子供たち眠っちゃったし。食べるものある?』

『美味しいのがあるよ』

『あら、楽しみね』

 楽しげなベステルタの声だ。
 ゴドーの鍛冶屋にお邪魔する。

「ゴドーさん、いますか?」

 カウンターの奥からのっそり不機嫌そうな熊が姿を現した。

「おう、ケイか。この前はやってくれたな、ったく」

「えへへ」

「何で照れんだよ」

 昨日、こっそりフレイムベアの毛皮を置いていったんだよね。喜んでくれたかな。

「まあ、俺も職人だからな。あれだけの素材を前に見ているだけなんてできねえ。だが」

 だが? 何か問題あったかな。

「毛皮の強度が高過ぎる。俺の持っている道具じゃ加工が全く進まなかった」

 ああー、そうか。亜人たちがすぱすぱ切り裂いているから忘れてた。その可能性はすっかり失念していたよ。じゃあ進展無しか。

「しかし、亜人様から頂いた爪を試したら易々と切り裂けたのよ。まったく、なんだありゃ。恐ろしいものを見たぜ」

  ぶるっと体を震わせる。そりゃまあ、ベステルタすぱすぱフレイムベア斬ってるしね。拳をふるえば穴が空き、爪を掲げれば天を裂く。そんなスペックだからね。

「そして今度はその爪が硬すぎて加工できねえんだ」

 うぉい、今度はそっちか。ままならないなあ。

 ゴドーさん少し悔しそうだ。最高の素材があるのに手出しできないのは辛いんだろうね。僕も美味しいご飯の前でステイさせられたら辛いし。

「それならまだベステルタの爪はあるのでお譲りしますね。これで加工してください」

 魔法の鞄から小振りなベステルタソードを取り出して、机に置く。きらりと光に反射した。

 僕としてもきちんと加工されたベステルタソードはほしい。メインウェポンがフランチェスカ、サブがベステルタソード。戦斧と細剣の二刀流。うーん、ロマンの塊。

「自分で言っておいてアレだが、いいのか? かなりの素材だぞ?」

「いいんですよ。どうしても遠慮してしまうというのなら、そうですね、投資だと思って下さい」

「……すまん、恩に着る。これで最高の武器と防具を作って見せるぜ。
 さて、寸法だったな。測るのはお前と翼の亜人様か?」

 翼の亜人ってプテュエラのことだよね。何か新鮮な響きだ。

「いえ、違いますよ。今から喚びますね」

「……なあ、ケイ。亜人様の契約って一人までじゃないのか? 複数契約して身体が爆発したりしないのか?」

 ブラガさんも同じこと言ってたな。爆発は分からないけど、確かに普通の人なら耐えられないだろうね。特に繁殖なんて、最初は骨折れるかと思ったし。ていうか多分折れてた。

「今のところ問題無いですよ。ちなみに寸法測る亜人はその爪の持ち主ですよ」

「何! ちょ、ちょっと待て。ファイナ! ファイナ! ケイが亜人様召喚してくれるようだ! 『爪』の亜人様だぞ!」

「え、う、うそ! 今行きます!」

 がたがたがた!
 大きな音が聞こえたかと思うと、ファイナちゃんが階段から勢いよく降りてきた。

「はあはあ。お待たせしてすみません」

「い、いや。気にしていないよ」

「悪いな。ファイナはどうもあの爪に心底惚れちまったみたいでな」

「お、お父さん! もうっ」

 恥ずかしそうにもじもじするファイナちゃん。やってることは娘の彼氏に、娘が家でも彼氏にベタぼれだよってバラしているようなことだけど、相手は爪だ。ファイナちゃんが心配になる。

「ファイナちゃん、そんなにベステルタの爪よかった?」

「はいっ! 硬度や鋭さは凄まじいのに、柔性があるんです! こんな素材見たことないです!」

「この調子なんだよ」

 気まずそうにゴドーさんが頭を掻く。そ、そうなんだ。よく分からないけど、僕がフランチェスカぺろぺろするのと同じことかな。それなら分かる。むしろ同志かもしれない。

「同志ファイナ。これから喚ぶ亜人はベステルタというんだ。仲良くしてあげてね」

「ど、同志? は、はい! ベステルタ様ですね」

「おい、娘を変な道に引き込まないでくれよな」

 ファイナちゃん、困惑しつつも目がキラキラしている。そういえばリッカリンデン孤児院にもそんな子がいたよな。ジオス教徒の子供にとってはアイドルみたいなものなのだろうか。

「じゃあ、行くよ。『召喚』」

 店内に光が生まれ、中から紫雷を迸らせたベステルタがゆっくりと歩み出る。
 恥ずかしいことは絶対に言わせないぞ。

「序列無き獣ベステルタ、推参」

「ふぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ぱちぱちぱちぱち。
 ファイナちゃん、大喜びだ。
 推参する場面じゃない。使い方間違っているよ。

『ベステルタ、プテュエラに訊いたでしょ』

『何のことかわからないわ』

 知らんぷり。
 くっ、短めのワードで来られたから対応が遅れた。ていうか何でこんなことで神経使わなきゃいけないんだ……。


 その後、恐縮しっぱなしのゴドーさんと赤面するファイナちゃんに寸法を採ってもらった。結構かかるかな、と思ったけどそこは流石プロ。手早く終わらせてくれたよ。

「どのくらいかかりそうですか?」

「ベステルタ様程の魔力を隠す訳だから、並大抵の素材じゃ無理だ。一月は見てほしいぜ」

『ゴドーは何て言っているの?』

『防具作るには最低でも一ヶ月はかかるってさ』

『そう……』

 しょぼん、としてしまった。
 こんな悲しげなベステルタ見たくないぞ。どうにかならないかな。

「ちなみにどんな素材が必要なんですか?」

「そうだな、魔力の隠蔽に長けた蛇系魔獣、スネーク種じゃ話にならねえから最低でもパイソン種が欲しいところだ」

 魔獣の素材も向き不向きがあるんだね。当たり前か。
 蛇、蛇か……。
 あっ、蛇ならいるじゃないか。魔法の鞄の肥やしになっている激硬肉蛇が。

「あっ、これも蛇系だと思うんですけど、どうですかね。ブラッドサーペントってらしいんですけど」

「……見たこともねえ素材だな。が、硬度も柔軟性もある。これはかなり良いぞ」

「フレイムベアとやり合ってましたからね」

「化け物じゃねえか」

 あれ、あんまり驚かないのかな。フレイムベアで慣れてしまったのかもしれない。ちょっと残念。

「ケイ、この素材ならかなり短縮できるぞ。そうだな、半月もあれば納品できる」

 おお! それは相当短縮できたな。よかった。

『ベステルタ、半月もあれば出来るってさ』

『ふ、ふぅん。ならよかったわ』

 あ、素直じゃないな。お姉さんムーブ発動。たまに出るクセだ。僕は大人だから黙っているけどね。

「ちなみに僕のは?」

「お前さんのはきちんと防具として作るから一ヶ月だな」

 それもそうか。楽しみだな。

「あ、ベステルタの爪は武器にできそう?」

「それは何とも言えんな。俺も生まれて初めてやることだ。たぶん作ったやつもいねえだろう」

 お、ゴドーさん口元がひくひくしている。初めて亜人素材扱う獣人かもしれないから嬉しいんだろうな。どれどれ。

「ゴドーさん、ベステルタの爪もう少し置いていきますね。あとプテュエラの羽と、もう一人契約しているシュレアっていう亜人の枝角も。あと適当に素材出すんで使って下さい。これで亜人剣作ってください。あ、お金ここに置いておきますね」

「ちょちょ、ちょっとまて。何が何やら分からねえ、おい金だけ置いていくって……大金じゃねえか! いつの間にこんな、っておいファイナ! 恭しく受け取るんじゃねえ!」

 同志ファイナにお金を渡し、ダンプボアの素材なんかも下ろし、僕は悠々と鍛冶屋を後にした。

 必死の形相でゴドーさんが追いかけてきたけどパッシブ練喚攻の僕には敵わない。ダッシュで逃げた。ふひ。


『ケイ、尾行してくる人間がいるが、どうする?』

 は? 尾行? なんだそりゃ。やましいことなんて何もしてないぞ。

『ふむ……どうやら、さっきの商業ギルドの職員のようだな。いくらか身のこなしが軽やかだ』

 うげー、完全に目を付けられてるじゃん。嫌だなあ。しかも、そういう専門の部署でしょ。ギルドでは慇懃無礼だったけど、こういうところではしっかり対応してくるのね。

 追い払うのも角が立ちそうだしな……。

『プテュエラ、追っ手をまくことはできる?』

『無論だ。風で目をくらましたあとに不可視化する』

 ひゅー、頼りになるぜ。ステルス化は反則だよなあ。プテュエラの汎用性が半端ない。

 あれ、そういえばベステルタを不可視化できないのかな。そうしたら色々便利なんだけど。訊いてみる。

『できたとしても数十秒だな。この魔法は私と契約者以外に使うと非常に魔力を使うんだ』

 プテュエラの魔力でもそれなら現実的じゃないね。仕方ない。

『じゃあお願いね』
『うむ。……風よ』

 プテュエラが囁くと少し強めの風が後方に発生し、何人かが慌ててように顔を覆う。その混乱に乗じて不可視化し、追手を撒いた。うーん、なんかスパイ活動しているみたいですごいぞ。一ヶ月前くらいにはパソコンかたかたしてたんだけど。人生って分からんな。
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