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お金美人
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ゴドー鍛冶屋で進捗を訊いてみたが、順調とのことだった。どうやらブラッドサーペントの革が凄まじい性能だったらしく、申し分無い一品に仕上がりそうとのこと。よかったよかった。
話が一段落したところで、例の筋トレ器具を頼んでみた。
「訓練器具が欲しいだあ?」
「そうなんですよ。どうにかならないかな? こういう感じでさ」
身振り手振りで器具の形を伝える。
ゴドーさんともちょっと打ち解けてきたのが嬉しい。
「見せてみな……。あー、そんなに複雑な形じゃ無さそうだな。これならすぐ作れるぜ五日あればいける」
五日か。
いや良いんだけど、なるべく早くスタートさせたいんだよね。筋トレは早く始められるなら始めた方がいいし、僕にも突発的に予定ができるかもしれない。
「なら知り合いの鍛冶屋に頼んでおく。前金だが大丈夫か?」
相場がよく分からないので、金貨五十枚ほどを机にドンと置いた。
「ったく、この前金がねえって言ってたやつとは思えない羽振りの良さだな。これなら大丈夫だ。明日また来いや」
とりあえずダンベルとベンチ、懸垂用の鉄棒をいくつか作ってもらうように頼み、ゴドーさんと別れた。
そのまま街の中心に向かい、シルビアさんが指定した荷物の受け渡し場所まで行く。
「ケイさーーん! お待ちしてましたよーー!」
元気の良い声。金色の髪に、金貨に目が眩んだ目。シルビアさんだ。朝から欲望にまみれていて何より。
「こんにちは、シルビアさん。頼んだものは仕入れて頂けたようですね?」
「もっちろんでございます! 量が指定されていないものは多目に、他にも必要そうなものを用意させて頂きました。不要であれば別経路で販売しますのでお気になさらず。もし他にも欲しいものを思い付いたなら遠慮なくお申し付け下さい。それではご確認お願い致します!」
ニコニコと対応してくれるシルビアさん。
元気良いなー。なんかこっちまでエネルギーもらえるよね。
さて確認しようかな。
市場の一画に所狭しと並べられた品々。ピカピカの調理器具。大鍋、小鍋、雪平鍋。フライパン数種。包丁は出刃包丁や野菜包丁が揃えられ、大きな寸胴が数個。食器類もたくさん用意してくれたようでありがたい。
香辛料は袋単位で用意してくれて、詰めるための小洒落た瓶なんかも用意してくれている。皿やナイフにフォーク、ティーセット、テーブルクロスもある。あっ、言ってなかったけど大きめの食器棚もあるね。他にもいろいろオプションが用意されていた。気が利くなあ。こういう細やかな配慮はお客さんとっても喜ぶよね。
小麦と卵もかなり用意してくれた。これで僕のグルメが捗るぞ。マストアイテムた。
あと、何と言ってもお酒。しかも五樽も用意してくれた。中身は香りからしてワインみたいなやつだな。
これは亜人たち喜ぶぞ。僕も喜ぶ。毎日酒池肉林、繁り放題だ。お風呂で一献というのもいいね。
うーん、文句無しだな。これを一日そこらで仕入れたのか。有能だ。
「問題ありません。追加で用意してもらったものも全部購入します。いくらですか?」
「全部ですか! ありがとうございます! ぐへへ! それではこちらのお値段でいかがでしょうか!」
ぱちぱち、とそろばんみたいな道具を弾いて例のごわごわパピルス紙に数字っぽいのを書いて見せてくる。うーん、分からない。言語理解スキルがレベルアップしたら分かるようになるのだろうか。ていうか途中で心の声漏れちゃってるよ。本人気が付いてないのかな。あまりにも自然だから気にならないけど。
「すみません、恥ずかしい限りですが文字が読めないんです」
「これは失礼いたしました! 追加料金は勉強させて頂きまして……」
シルビアさんが口にした代金は問題ない額だったので承諾した。ポケットの中にお金唸ってるしねえ。これから増える予定だし……。やばいか金銭感覚が狂ってきた。
「他にご入用のものはございませんか?」
とびっきりの笑顔から「あるだろ? あるよなぁ?」という不可視の圧力が発せられている。それが不快にならなのだからすごい。まあ僕がおかしいだけかもしれないけど。
シルビアさん、エネルギッシュな美人で、お金積めば積むほどリアクションがすごくなっていくから面白くなっちゃうんだよな。
「そうですね……それでは紙とペンを用意してもらえますか? あとこの国の言葉を覚えたいのでそういう本があれば欲しいです。あと可能であれば冷蔵庫のような……うーん、魔法の氷室みたいのがあればほしいですね」
そう言うとシルビアさん、すごい勢いで紙にペンを走らせ始めた。たぶん今、脳内で凄まじい計算がされているんだろうな。
「紙とペン、言語教本ならご用意できます。少々値段が張りますが、香辛料ほどではありませんね。ただ、魔法の氷室は厳しいです。ダンジョン品ですから高額オークションでしか入手できませんし、仕入れ値が高すぎて当店では手が出ません……。申し訳ございません!」
申し訳無さそうに勢い良く頭を下げるシルビアさん。なんか最近人に頭下げられてばっかで、何となく疲れる……。ペコペコするよりいいけどさ。
「いえ、お気になさらず。では筆記用具と教本をお願いしますね」
「はい! ご利用ありがとうございます! ふひ」
またしても心の声が漏れ出るシルビアさん。なんて残念な美人なんだ。ちょっと心配になってきたよ。
さて……話も一区切りしたし本題に入ろうかな。どんな反応するか分からないからプテュエラに警戒するように頼んでおく。
「シルビアさん、実は見て頂きたい品物があるんです」
「品物ですか! ぜひ拝見させてください! 場合によっては高値で買い取らせてもらいますよ!」
ぐいぐい身体を近付けてくる。ふんわりフローラルな香り。でも、かねじゃー、という声が聞こえる気もする。
気を取り直して僕は鞄からコス茶を取り出した。
「これコス茶っていうんですけど分かりますか?」
シルビアの反応は予想以上だった。
「コス茶……、これは……っ! まさか! コスモジオ霊草!?」
目を丸くして固まる。
なんだそれ。そんなものは知らない。コス茶だろ。ある意味、僕をこの幸せな繁殖生活に引きずり込んだキーアイテムだ。
『コスモジオ霊草って知ってる?』
『知らん』
とプテュエラは言う。絶死の森に生えている薬草のことだよ。
やっぱそれしかないよな? なんだコスモス霊草って。
がしっ。
いてっ。
思い切り肩を掴まれた。つ、爪が食い込んでる。
「これをっ! どこでっ! 手に入れたんですかっ! 譲ってくださいっ! 譲って! お金ならいくらでも上げますからっ!」
ガクガクガク。
あばばばばば。
めっちゃ肩を掴んで揺らされている。頭と頭がぶつかりそうだ。
『むっ』
「きゃっ」
少し強い風が吹いて彼女がびっくりして飛び退いた。プテュエラありがとう。
「これに見覚えがあるんですね?」
「はあ、はあ……。はい、取り乱してすみません。これは、大変な品物です。一体どこで?」
ふーむ、そうなるか。
ここで絶死の森です、って言って面倒くさいことにならないかな。
プテュエラに訊いてみよう。
『プテュエラ、コス茶が取れる場所、言ってもいいかな』
すると彼女は静かに言った。
『好きにするがいい、契約者よ。何があっても薙ぎ払うのみ』
気にするな、と風が優しく僕を包んだ。
よし、僕も覚悟を決めるか。どのみち、ジオス教徒にも言うつもりだったしね。
「絶死の森ですよ」
ごくりと彼女の喉が鳴った。
「せ、絶死の森……亜人が住まう生存拒否の大森林……」
見るからにがたがたと震え始める。
大丈夫かな。そう言えば絶死の森についてデイライトで話したのは初めてだ。何か禁忌的なものだったりするのだろうか。
「そうです。シルビアさん、リディア・ブラスの名前に聞き覚えは?」
はっとして僕を見る。
「……それは、祖母の名前です」
その視線には複雑で奇妙な感情が込もっていた。
話が一段落したところで、例の筋トレ器具を頼んでみた。
「訓練器具が欲しいだあ?」
「そうなんですよ。どうにかならないかな? こういう感じでさ」
身振り手振りで器具の形を伝える。
ゴドーさんともちょっと打ち解けてきたのが嬉しい。
「見せてみな……。あー、そんなに複雑な形じゃ無さそうだな。これならすぐ作れるぜ五日あればいける」
五日か。
いや良いんだけど、なるべく早くスタートさせたいんだよね。筋トレは早く始められるなら始めた方がいいし、僕にも突発的に予定ができるかもしれない。
「なら知り合いの鍛冶屋に頼んでおく。前金だが大丈夫か?」
相場がよく分からないので、金貨五十枚ほどを机にドンと置いた。
「ったく、この前金がねえって言ってたやつとは思えない羽振りの良さだな。これなら大丈夫だ。明日また来いや」
とりあえずダンベルとベンチ、懸垂用の鉄棒をいくつか作ってもらうように頼み、ゴドーさんと別れた。
そのまま街の中心に向かい、シルビアさんが指定した荷物の受け渡し場所まで行く。
「ケイさーーん! お待ちしてましたよーー!」
元気の良い声。金色の髪に、金貨に目が眩んだ目。シルビアさんだ。朝から欲望にまみれていて何より。
「こんにちは、シルビアさん。頼んだものは仕入れて頂けたようですね?」
「もっちろんでございます! 量が指定されていないものは多目に、他にも必要そうなものを用意させて頂きました。不要であれば別経路で販売しますのでお気になさらず。もし他にも欲しいものを思い付いたなら遠慮なくお申し付け下さい。それではご確認お願い致します!」
ニコニコと対応してくれるシルビアさん。
元気良いなー。なんかこっちまでエネルギーもらえるよね。
さて確認しようかな。
市場の一画に所狭しと並べられた品々。ピカピカの調理器具。大鍋、小鍋、雪平鍋。フライパン数種。包丁は出刃包丁や野菜包丁が揃えられ、大きな寸胴が数個。食器類もたくさん用意してくれたようでありがたい。
香辛料は袋単位で用意してくれて、詰めるための小洒落た瓶なんかも用意してくれている。皿やナイフにフォーク、ティーセット、テーブルクロスもある。あっ、言ってなかったけど大きめの食器棚もあるね。他にもいろいろオプションが用意されていた。気が利くなあ。こういう細やかな配慮はお客さんとっても喜ぶよね。
小麦と卵もかなり用意してくれた。これで僕のグルメが捗るぞ。マストアイテムた。
あと、何と言ってもお酒。しかも五樽も用意してくれた。中身は香りからしてワインみたいなやつだな。
これは亜人たち喜ぶぞ。僕も喜ぶ。毎日酒池肉林、繁り放題だ。お風呂で一献というのもいいね。
うーん、文句無しだな。これを一日そこらで仕入れたのか。有能だ。
「問題ありません。追加で用意してもらったものも全部購入します。いくらですか?」
「全部ですか! ありがとうございます! ぐへへ! それではこちらのお値段でいかがでしょうか!」
ぱちぱち、とそろばんみたいな道具を弾いて例のごわごわパピルス紙に数字っぽいのを書いて見せてくる。うーん、分からない。言語理解スキルがレベルアップしたら分かるようになるのだろうか。ていうか途中で心の声漏れちゃってるよ。本人気が付いてないのかな。あまりにも自然だから気にならないけど。
「すみません、恥ずかしい限りですが文字が読めないんです」
「これは失礼いたしました! 追加料金は勉強させて頂きまして……」
シルビアさんが口にした代金は問題ない額だったので承諾した。ポケットの中にお金唸ってるしねえ。これから増える予定だし……。やばいか金銭感覚が狂ってきた。
「他にご入用のものはございませんか?」
とびっきりの笑顔から「あるだろ? あるよなぁ?」という不可視の圧力が発せられている。それが不快にならなのだからすごい。まあ僕がおかしいだけかもしれないけど。
シルビアさん、エネルギッシュな美人で、お金積めば積むほどリアクションがすごくなっていくから面白くなっちゃうんだよな。
「そうですね……それでは紙とペンを用意してもらえますか? あとこの国の言葉を覚えたいのでそういう本があれば欲しいです。あと可能であれば冷蔵庫のような……うーん、魔法の氷室みたいのがあればほしいですね」
そう言うとシルビアさん、すごい勢いで紙にペンを走らせ始めた。たぶん今、脳内で凄まじい計算がされているんだろうな。
「紙とペン、言語教本ならご用意できます。少々値段が張りますが、香辛料ほどではありませんね。ただ、魔法の氷室は厳しいです。ダンジョン品ですから高額オークションでしか入手できませんし、仕入れ値が高すぎて当店では手が出ません……。申し訳ございません!」
申し訳無さそうに勢い良く頭を下げるシルビアさん。なんか最近人に頭下げられてばっかで、何となく疲れる……。ペコペコするよりいいけどさ。
「いえ、お気になさらず。では筆記用具と教本をお願いしますね」
「はい! ご利用ありがとうございます! ふひ」
またしても心の声が漏れ出るシルビアさん。なんて残念な美人なんだ。ちょっと心配になってきたよ。
さて……話も一区切りしたし本題に入ろうかな。どんな反応するか分からないからプテュエラに警戒するように頼んでおく。
「シルビアさん、実は見て頂きたい品物があるんです」
「品物ですか! ぜひ拝見させてください! 場合によっては高値で買い取らせてもらいますよ!」
ぐいぐい身体を近付けてくる。ふんわりフローラルな香り。でも、かねじゃー、という声が聞こえる気もする。
気を取り直して僕は鞄からコス茶を取り出した。
「これコス茶っていうんですけど分かりますか?」
シルビアの反応は予想以上だった。
「コス茶……、これは……っ! まさか! コスモジオ霊草!?」
目を丸くして固まる。
なんだそれ。そんなものは知らない。コス茶だろ。ある意味、僕をこの幸せな繁殖生活に引きずり込んだキーアイテムだ。
『コスモジオ霊草って知ってる?』
『知らん』
とプテュエラは言う。絶死の森に生えている薬草のことだよ。
やっぱそれしかないよな? なんだコスモス霊草って。
がしっ。
いてっ。
思い切り肩を掴まれた。つ、爪が食い込んでる。
「これをっ! どこでっ! 手に入れたんですかっ! 譲ってくださいっ! 譲って! お金ならいくらでも上げますからっ!」
ガクガクガク。
あばばばばば。
めっちゃ肩を掴んで揺らされている。頭と頭がぶつかりそうだ。
『むっ』
「きゃっ」
少し強い風が吹いて彼女がびっくりして飛び退いた。プテュエラありがとう。
「これに見覚えがあるんですね?」
「はあ、はあ……。はい、取り乱してすみません。これは、大変な品物です。一体どこで?」
ふーむ、そうなるか。
ここで絶死の森です、って言って面倒くさいことにならないかな。
プテュエラに訊いてみよう。
『プテュエラ、コス茶が取れる場所、言ってもいいかな』
すると彼女は静かに言った。
『好きにするがいい、契約者よ。何があっても薙ぎ払うのみ』
気にするな、と風が優しく僕を包んだ。
よし、僕も覚悟を決めるか。どのみち、ジオス教徒にも言うつもりだったしね。
「絶死の森ですよ」
ごくりと彼女の喉が鳴った。
「せ、絶死の森……亜人が住まう生存拒否の大森林……」
見るからにがたがたと震え始める。
大丈夫かな。そう言えば絶死の森についてデイライトで話したのは初めてだ。何か禁忌的なものだったりするのだろうか。
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