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ブラス家の崩壊
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落ち着いたシルビアさんに案内されたのは路地から外れたとこにあるカフェ。何でも祖母のリディアさんがお世話になっていた所で、防音室があるらしい。そこなら落ち着いて話せるとのこと。
カランカラン、とカフェのドアを開ける。
「マスター、奥の部屋借りるね」
「好きにしなさい」
優しそうだけど、眼力の強いお爺さんに断って進む。
さっきからシルビアさんが全然笑っていない。怒っている訳じゃなさそうだけど、神妙な顔つきだ。むう、どうしよう。こういう時どんな態度でいればいいのか分からない。僕なんてこんなもんだよ。他人の顔を常に伺っちゃうんだ。
『ケイ、情けない顔をするな。お前には私たちが付いている。もっと胸を張れ』
プテュエラが発破をかけてくれる。
『……そうだね。ありがとう』
『うむ』
そうだ。何も恐れることは無い。前は前、今は今。もう、他人に振り回されて生きるのは止めたはずだ。僕は自分のために生きなければいけない。よし。気合入った。
「ここなら防音の魔法がかかっています。だからある程度秘密を話しても大丈夫なんですよ」
「そうですか」
そう言って椅子に座る。シルビアさんは手を組み俯いてしまった。どーしよ。
お茶が来るまで彼女はずっと沈黙していた。何かを話そうとしていたけど、何を話せばいいのか分からない様子だ。失礼な気もするけど、まあいいや。訳ありそうだしね。本当は話すのが苦手なのかもしれないし。
「シルビア」
沈黙を破ったのは例のマスターだった。二人分のお茶を持ってきてくれた。
ことり、とよく磨かれたテーブルに置かれ、シルビアさんが一口飲んでほうっと息を吐く。
「……相変わらず良いお茶」
「リディアとの約束だからの。それよりお客さんをいつまで待たせるつもりじゃ?」
シルビアさんはハッとして僕を見る。いやいや、忘れてたの? ちょっとショックだ。
「す、すみません! こちらが誘ったというのに……ああ、私ってばいつも……ごめんなさい」
しょんぼりしてしまった。
ああ、集中すると周り見えなくなるというか、微妙に自分のコントロールできない人なのかもね。心の声漏れてたし、有能だけどブレーキの効きが悪いというか。
いや、責めてないよ? むしろ好感度が上がった。完璧な人間なんて神話にも出てこない。
「いいんですよ。気にしてません。ゆっくり話してください。ああ、美味しいですねこのお茶」
コーヒーかと期待したけど違った。でもとっても美味しい。紅茶とかハーブティーの類だ。花の香りが強くてほんのり甘い。リラックスできる。欲しいなこれ。
「お客さん、舌が肥えておるようだ。嬉しいよ。それはライラティーと言ってな。その娘の祖母、リディアが愛したお茶じゃよ。気に入ったのなら後で分けてあげよう」
好々爺マスターはにこにこ話してくれる。が、目付きは鷲のように鋭い。
左手でジェスチャーを交え視線を絞らせず、右手はいつでも動かせるように自由になっている。ゆったりした服で分かりづらいが、重心も少し落としてやや半身。つまり警戒態勢だ。何もんだよこのおじいさん。
僕、なんでこんなこと分かるようになってるんだろうなあ。まったく、絶死の森ブートキャンプ様々だよ。
「……」
おっと、この爺さん一瞬だけ力を入れたね。なんだ?
『ケイ、非常に小さいがその翁、殺気を飛ばしたぞ』
へー、殺気! これが殺気かぁー。ちょっと感動だ。なるほどな。覚えておこう。のちのち役に立つかもしれない。
「マスター?」
「シルビア、この方は大丈夫じゃ。少なくともお前に危害を与えようとはしておらん」
当たり前やんけ。僕は平和主義だぞ。
「え、どういうこと?」
「鋭く殺気を飛ばしたが軽く受け流されたわ。まさに泰然自若といった佇まい。このような方はおおらかで、礼を尽くせば応えてくれるのよ」
「殺気!? 何してんの! あぁー、ケイさんごめんなさい……重ね重ね本当に……」
恐縮して縮こまるシルビアさん。爺さん何が「ふぉっふぉっふぉ」だよ。乱すだけ乱して出て行ったしさ。おかげで、話しやすい雰囲気になったけどね。
「いいんですよ。気にしていません。それより……そうですね。ならこっちから質問しましょう。リディアさんはどんな人ですか?」
「祖母ですか……」
シルビアさんはまだ恐縮していたけど、やっと思考がまとまったのか、ぽつりぽつりと話してくれた。
…………
……
「という訳なんです」
シルビアさんは話し終えるとほっとした様子で、椅子にもたれかかった。ライラティーをぐいっと飲み干し、ちょっとぼうっとしている。安心したのかもね。
それにしても、なるほどね。
シルビアさんの祖母、リディアさんとは。一言でまとめるとこうだ。
『リディア・ブラスはブラス家に破滅を招いた張本人』
シルビアさんが小さい頃に、リディアさんは行方不明になってしまって殆どが両親から伝え聞いた話らしいが。
リディア・ブラスは小さい頃からお転婆でとにかく行動しまくる人だったらしい。
そして大のつくお人好しで、仕入れた商品を格安で売りさばいたり、逆に貧困困窮?する人から相場よりずっと高く物を買ったり。彼女の両親は、それはそれは手を焼いたそうだ。
そんな彼女には特技があった。
それは品物を見抜く力。
鑑定魔法ではなく、もっと本質的な「それが売れるのか」「人のためになるか」を見抜くことにかけて天才的だったらしい。
だから、世に出ていない芸術家の作品や辺境の特産品の価値を見抜き、貴族や大商人に売ったことでずいぶんな財を築いたそうだ。
「祖母の商売は『お金を積極的に手放す』やり方でした。あれは祖母にしかできないやり方です。真似したけど無理でした」
シルビアさんは悔しそうに、でも誇らしげに言う。リディアさんがやったことは「損して得とれ」とか「先行投資」の類だと思う。そこに天才的な閃きと、自由奔放な行動力、そして運が絡んだ奇跡的な商売スタイルだったんだろう。
でも何故、リディアさんがブラス家に破滅を招き、商会は破産したのか。それも一言で言い表せられる。正直、またかって感じだけどね。
『リディア・ブラスはアセンブラ教の利権を荒らし、潰された』
まーた、アセンブラか。だめだなこいつら。デイライト市民の敵だよ。長い年月をかけて腐った保守組織の香りがする。デイライト伯爵、この問題で禿げ上がってそうだ。
お茶が好きなリディアさんはある時、コス茶という不思議な茶を飲み、感激する。味も素晴らしく、活力と精力が湧いてきたそうだ。彼女は追い求めた。
余談だがその時、後に夫となる幼馴染と良い雰囲気になって、シルビアさんのお母さんが生まれるきっかけになったらしい。
その後あらゆる伝手を使ってコス茶を調べ、それがコスモジオ霊草だと知ったリディアさんは誰に言うことも無く一ヶ月ほど留守にし、ある日突然帰ってきた。山ほどのコスモジオ霊草を持って。
ちなみにシルビアさんの言いぶりだとコス茶が絶死の森由来だと知らなそうだね。この時、優しき紫獅子の亜人がリディアさんを助けている。ベステルタ自身がそう言ったからね。優しき、ってのは僕が付け足したけど。
では何でブラス商会がアセンブラ教の利権を荒らし潰されることになったのか。それは単純で複雑だ。
『コス茶を元に、従来のポーションより遥かに質の良いポーションを製造することができたから』
なるほど、そう繋がるか。
そう思ったね。
確かに昨日市場で激不味アセンポーション、汗汁とでも名付けようか。そこで商人が言っていた。「一時期質の良いのが出回ったけど潰された」って。
それがリディアさんの作ったコス茶ポーション『コスモディア』だそうだ。リディアさんはそれを安く売り、多くの人々の命を救った。さらに秘伝は守りつつ、製造過程で雇用も生んだ。経済的にも救われた人がいた。
しかしアセンブラ教会の利権に食い込んでしまい、疎まれた挙げ句、あらゆる商会が敵に回り潰された。
……たぶん雇用した中にアセンブラ教が紛れ込んでいたんだろうね。
「あの頃は毎日が地獄でした。
止まない借金取りたちの怒声、罵声、中傷。いたずら書きや嫌がらせ。両親は馬車馬のように働いて、文字通り身を粉にして借金を完済してくれました。そして私を残して逝ってしまいました」
過労だったらしい。心労も重なっているだろうけど。ただ、僕はそれだけじゃないと思った。
どこかで一服盛られているんじゃないかな。借金返すときにお茶くらい飲みそうだし。強面たちが部屋にたくさんいる状況で、にこやかに出されたお茶飲まない訳にはいかないだろうしな。
そう思ったのはブラス家の秘密を聞いたからだ。
『ブラス家は古い神よりコスモジアの製法を伝承している』
これ絶対ジオス神でしょ。コスモ『ジオ』霊草だしね。つまりコス茶はジオス神が何らかの意図を持って作り出した可能性が高そうだ。
ブラス家って大昔は神官とか、それなりに立場ある家柄だったんじゃないか?
で、アセンブラ教はジオス教を排斥している訳だし?
きっかけは利権絡みで調べていく内に突き止めたのかもしれない。
リディアさんがコス茶を命を懸けて取りに行ったのも、もしかしたらコスモディアの原材料だと突き止めたからかも。
「事実を知ったのは、両親が亡くなる少し前です。
大事な話があると言われ、ブラス商会倉庫の一画に連れて行かれました。
かつて異国の品々で満杯だった、大好きだったブラス商会の倉庫には、殆ど何も残っていませんでした。
いつも穏やかで優しい父と、快活でふっくらした母。
私の手を取って歩いたあの時……彼らは見る影もなく痩せ細っていました。枯れ木のような腕、幽鬼のような、でも晴れやかな笑顔。今でも夢に出てきます。
両親に案内された所には、大事そうにしまわれた箱がありました。その中にコスモジアの製法とブラス家の出自が記された紙が入っていたんです」
そして、両親は私に幾ばくかの財産を残し、疲れ切った表情で永久の眠りにつきました、とシルビアさんは締め括った。
以上がブラス家の崩壊、破産の背景だ。
正直僕には何も言えない。あまりにも僕の想像したことと離れていた。あまりにも、世界が違った。だからこそ冷静になれたのかもしれないね。ほら、人ってキャパシティ超えると逆に冷静になれる時あるでしょ? 今がまさしくそれ。だから問えた。
「シルビアさんは、どうしたい?」
すると彼女は、まるで誰かに花束でも渡すかのような、晴れ晴れしい笑顔で言った。涙の筋が光る。
「……アセンブラ教に復讐を」
カランカラン、とカフェのドアを開ける。
「マスター、奥の部屋借りるね」
「好きにしなさい」
優しそうだけど、眼力の強いお爺さんに断って進む。
さっきからシルビアさんが全然笑っていない。怒っている訳じゃなさそうだけど、神妙な顔つきだ。むう、どうしよう。こういう時どんな態度でいればいいのか分からない。僕なんてこんなもんだよ。他人の顔を常に伺っちゃうんだ。
『ケイ、情けない顔をするな。お前には私たちが付いている。もっと胸を張れ』
プテュエラが発破をかけてくれる。
『……そうだね。ありがとう』
『うむ』
そうだ。何も恐れることは無い。前は前、今は今。もう、他人に振り回されて生きるのは止めたはずだ。僕は自分のために生きなければいけない。よし。気合入った。
「ここなら防音の魔法がかかっています。だからある程度秘密を話しても大丈夫なんですよ」
「そうですか」
そう言って椅子に座る。シルビアさんは手を組み俯いてしまった。どーしよ。
お茶が来るまで彼女はずっと沈黙していた。何かを話そうとしていたけど、何を話せばいいのか分からない様子だ。失礼な気もするけど、まあいいや。訳ありそうだしね。本当は話すのが苦手なのかもしれないし。
「シルビア」
沈黙を破ったのは例のマスターだった。二人分のお茶を持ってきてくれた。
ことり、とよく磨かれたテーブルに置かれ、シルビアさんが一口飲んでほうっと息を吐く。
「……相変わらず良いお茶」
「リディアとの約束だからの。それよりお客さんをいつまで待たせるつもりじゃ?」
シルビアさんはハッとして僕を見る。いやいや、忘れてたの? ちょっとショックだ。
「す、すみません! こちらが誘ったというのに……ああ、私ってばいつも……ごめんなさい」
しょんぼりしてしまった。
ああ、集中すると周り見えなくなるというか、微妙に自分のコントロールできない人なのかもね。心の声漏れてたし、有能だけどブレーキの効きが悪いというか。
いや、責めてないよ? むしろ好感度が上がった。完璧な人間なんて神話にも出てこない。
「いいんですよ。気にしてません。ゆっくり話してください。ああ、美味しいですねこのお茶」
コーヒーかと期待したけど違った。でもとっても美味しい。紅茶とかハーブティーの類だ。花の香りが強くてほんのり甘い。リラックスできる。欲しいなこれ。
「お客さん、舌が肥えておるようだ。嬉しいよ。それはライラティーと言ってな。その娘の祖母、リディアが愛したお茶じゃよ。気に入ったのなら後で分けてあげよう」
好々爺マスターはにこにこ話してくれる。が、目付きは鷲のように鋭い。
左手でジェスチャーを交え視線を絞らせず、右手はいつでも動かせるように自由になっている。ゆったりした服で分かりづらいが、重心も少し落としてやや半身。つまり警戒態勢だ。何もんだよこのおじいさん。
僕、なんでこんなこと分かるようになってるんだろうなあ。まったく、絶死の森ブートキャンプ様々だよ。
「……」
おっと、この爺さん一瞬だけ力を入れたね。なんだ?
『ケイ、非常に小さいがその翁、殺気を飛ばしたぞ』
へー、殺気! これが殺気かぁー。ちょっと感動だ。なるほどな。覚えておこう。のちのち役に立つかもしれない。
「マスター?」
「シルビア、この方は大丈夫じゃ。少なくともお前に危害を与えようとはしておらん」
当たり前やんけ。僕は平和主義だぞ。
「え、どういうこと?」
「鋭く殺気を飛ばしたが軽く受け流されたわ。まさに泰然自若といった佇まい。このような方はおおらかで、礼を尽くせば応えてくれるのよ」
「殺気!? 何してんの! あぁー、ケイさんごめんなさい……重ね重ね本当に……」
恐縮して縮こまるシルビアさん。爺さん何が「ふぉっふぉっふぉ」だよ。乱すだけ乱して出て行ったしさ。おかげで、話しやすい雰囲気になったけどね。
「いいんですよ。気にしていません。それより……そうですね。ならこっちから質問しましょう。リディアさんはどんな人ですか?」
「祖母ですか……」
シルビアさんはまだ恐縮していたけど、やっと思考がまとまったのか、ぽつりぽつりと話してくれた。
…………
……
「という訳なんです」
シルビアさんは話し終えるとほっとした様子で、椅子にもたれかかった。ライラティーをぐいっと飲み干し、ちょっとぼうっとしている。安心したのかもね。
それにしても、なるほどね。
シルビアさんの祖母、リディアさんとは。一言でまとめるとこうだ。
『リディア・ブラスはブラス家に破滅を招いた張本人』
シルビアさんが小さい頃に、リディアさんは行方不明になってしまって殆どが両親から伝え聞いた話らしいが。
リディア・ブラスは小さい頃からお転婆でとにかく行動しまくる人だったらしい。
そして大のつくお人好しで、仕入れた商品を格安で売りさばいたり、逆に貧困困窮?する人から相場よりずっと高く物を買ったり。彼女の両親は、それはそれは手を焼いたそうだ。
そんな彼女には特技があった。
それは品物を見抜く力。
鑑定魔法ではなく、もっと本質的な「それが売れるのか」「人のためになるか」を見抜くことにかけて天才的だったらしい。
だから、世に出ていない芸術家の作品や辺境の特産品の価値を見抜き、貴族や大商人に売ったことでずいぶんな財を築いたそうだ。
「祖母の商売は『お金を積極的に手放す』やり方でした。あれは祖母にしかできないやり方です。真似したけど無理でした」
シルビアさんは悔しそうに、でも誇らしげに言う。リディアさんがやったことは「損して得とれ」とか「先行投資」の類だと思う。そこに天才的な閃きと、自由奔放な行動力、そして運が絡んだ奇跡的な商売スタイルだったんだろう。
でも何故、リディアさんがブラス家に破滅を招き、商会は破産したのか。それも一言で言い表せられる。正直、またかって感じだけどね。
『リディア・ブラスはアセンブラ教の利権を荒らし、潰された』
まーた、アセンブラか。だめだなこいつら。デイライト市民の敵だよ。長い年月をかけて腐った保守組織の香りがする。デイライト伯爵、この問題で禿げ上がってそうだ。
お茶が好きなリディアさんはある時、コス茶という不思議な茶を飲み、感激する。味も素晴らしく、活力と精力が湧いてきたそうだ。彼女は追い求めた。
余談だがその時、後に夫となる幼馴染と良い雰囲気になって、シルビアさんのお母さんが生まれるきっかけになったらしい。
その後あらゆる伝手を使ってコス茶を調べ、それがコスモジオ霊草だと知ったリディアさんは誰に言うことも無く一ヶ月ほど留守にし、ある日突然帰ってきた。山ほどのコスモジオ霊草を持って。
ちなみにシルビアさんの言いぶりだとコス茶が絶死の森由来だと知らなそうだね。この時、優しき紫獅子の亜人がリディアさんを助けている。ベステルタ自身がそう言ったからね。優しき、ってのは僕が付け足したけど。
では何でブラス商会がアセンブラ教の利権を荒らし潰されることになったのか。それは単純で複雑だ。
『コス茶を元に、従来のポーションより遥かに質の良いポーションを製造することができたから』
なるほど、そう繋がるか。
そう思ったね。
確かに昨日市場で激不味アセンポーション、汗汁とでも名付けようか。そこで商人が言っていた。「一時期質の良いのが出回ったけど潰された」って。
それがリディアさんの作ったコス茶ポーション『コスモディア』だそうだ。リディアさんはそれを安く売り、多くの人々の命を救った。さらに秘伝は守りつつ、製造過程で雇用も生んだ。経済的にも救われた人がいた。
しかしアセンブラ教会の利権に食い込んでしまい、疎まれた挙げ句、あらゆる商会が敵に回り潰された。
……たぶん雇用した中にアセンブラ教が紛れ込んでいたんだろうね。
「あの頃は毎日が地獄でした。
止まない借金取りたちの怒声、罵声、中傷。いたずら書きや嫌がらせ。両親は馬車馬のように働いて、文字通り身を粉にして借金を完済してくれました。そして私を残して逝ってしまいました」
過労だったらしい。心労も重なっているだろうけど。ただ、僕はそれだけじゃないと思った。
どこかで一服盛られているんじゃないかな。借金返すときにお茶くらい飲みそうだし。強面たちが部屋にたくさんいる状況で、にこやかに出されたお茶飲まない訳にはいかないだろうしな。
そう思ったのはブラス家の秘密を聞いたからだ。
『ブラス家は古い神よりコスモジアの製法を伝承している』
これ絶対ジオス神でしょ。コスモ『ジオ』霊草だしね。つまりコス茶はジオス神が何らかの意図を持って作り出した可能性が高そうだ。
ブラス家って大昔は神官とか、それなりに立場ある家柄だったんじゃないか?
で、アセンブラ教はジオス教を排斥している訳だし?
きっかけは利権絡みで調べていく内に突き止めたのかもしれない。
リディアさんがコス茶を命を懸けて取りに行ったのも、もしかしたらコスモディアの原材料だと突き止めたからかも。
「事実を知ったのは、両親が亡くなる少し前です。
大事な話があると言われ、ブラス商会倉庫の一画に連れて行かれました。
かつて異国の品々で満杯だった、大好きだったブラス商会の倉庫には、殆ど何も残っていませんでした。
いつも穏やかで優しい父と、快活でふっくらした母。
私の手を取って歩いたあの時……彼らは見る影もなく痩せ細っていました。枯れ木のような腕、幽鬼のような、でも晴れやかな笑顔。今でも夢に出てきます。
両親に案内された所には、大事そうにしまわれた箱がありました。その中にコスモジアの製法とブラス家の出自が記された紙が入っていたんです」
そして、両親は私に幾ばくかの財産を残し、疲れ切った表情で永久の眠りにつきました、とシルビアさんは締め括った。
以上がブラス家の崩壊、破産の背景だ。
正直僕には何も言えない。あまりにも僕の想像したことと離れていた。あまりにも、世界が違った。だからこそ冷静になれたのかもしれないね。ほら、人ってキャパシティ超えると逆に冷静になれる時あるでしょ? 今がまさしくそれ。だから問えた。
「シルビアさんは、どうしたい?」
すると彼女は、まるで誰かに花束でも渡すかのような、晴れ晴れしい笑顔で言った。涙の筋が光る。
「……アセンブラ教に復讐を」
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