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第二章『しまねこと、夏を連れた旅人』
第10話『島の祭りと、花火大会 その1』
しおりを挟むその後、あたしは島猫ネットワークを駆使してクロとスズの母猫探しをするも、なかなか見つけることはできなかった。
そして日にちだけが過ぎ去り、やがて島の祭りの日がやってきた。
なにせ、年に一度の島を挙げての行事だ。こうなると、猫を探すどころではない。
宵宮と呼ばれる前夜祭から始まった島の祭りは、翌日の早朝から一気に盛り上がりを見せる。
神輿に獅子舞、屋台が続々と神社を出発し、島中を練り歩いていく。
ちなみに屋台とは、小さな子どもたちが乗った山車のようなものだ。
祭りの衣装をまとった子どもたちが、頭領さんの指示のもと、笛や太鼓といった楽器を打ち鳴らす姿は可愛らしく、祭りに華を添えていた。
「さすが、間近で見る神輿は迫力が違うね。こんな近くで撮影できるなんて、この島ならではだよ」
住宅地を進む神輿に近づきながら、青柳さんはここぞとばかりに写真を撮りまくっていた。
「今年は二年に一度の大祭りだ。圭介くんも運が良かったね」
その神輿から少し離れた場所で、おじーちゃんは満足げに顔をほころばせる。
この島の祭りは、隣の島と交互に大祭りと小祭りを行う。
小祭りの年は神輿も獅子舞も出ず、島外から宮司さんと巫女さんに来てもらい、神社の境内で舞や祝詞を奉納してもらうだけという、規模の小さなものになる。
なので、大祭りに当たる今年に島を訪れることができた青柳さんは、おじーちゃんの言う通り、運が良かったと思う。
「ぜぇ……はぁ……もう無理……!」
「こら裕二! まだ始まったばっかりだぞ!」
そんな中、男子二人は死にそうな顔で神輿を担いでいた。
島の子どもたちだけでは担ぎ手が足りないので、祭り当日は本土の高校生ボランティアたちが参加してくれる。そのおかげで盛り上がるのだけど、インドア派の裕二は明らかに彼らの体力についていけていなかった。
「いやー、昨日から賑やかで眠れないよ」
「本当。今年はいつもに増してすごいね」
裕二、最後まで持つのかしら……なんて考えていた時、あたしの足元に神社三兄弟のうちの二匹がやってきて、あくびまじりの声を出す。
「今年は観光客の数もすごいものねー。観光協会が宣伝頑張ったんじゃない?」
「島が賑わうのは良いけど、ぼくらの避難場所も考えてほしいよ」
「しまねこカフェ、無人開放してるから、避難しといたら? それか、村長さんとことか」
「あそこはみゅーの縄張りだしなぁ。最近はチビたちもいるし。子守はちょっと」
祭り囃子や歓声に紛れるように、あたしは猫たちとそんな会話をする。
ちなみに隣のヒナは目を輝かせながら祭りに見入っていた。
頭領さんにお願いすれば、この子も屋台くらいなら乗せてもらえたかもしれないわねー。
「あ、いたいたー。小夜ちゃーん」
その横顔を眺めていると、どこからかなっちゃんの声がした。
目を凝らすと、無数の人に埋もれるように、必死に手を振る彼女の姿があった。
「はぁ、やっと見つけた……覚悟はしてたけど、すごい人だね」
その場で待つことしばし、人波をかき分けてあたしのそばにやってきたなっちゃんは、ヘロヘロになっていた。
「今日ばっかりは仕方ないわよねー。それで、どうしたの?」
「今夜、花火あるでしょ。せっかくだから、お母さんが三人分の浴衣、用意してくれるって」
「え、三人分ってことは、ヒナのもあるの?」
「うん。わたしのお古の浴衣だけどね」
「ユカタ……?」
そう微笑みかけてくれるなっちゃんに対し、ヒナは首を傾げていた。どうやら、浴衣を知らないようだ。
「動きやすい着物みたいなものよー。きれいだし、ヒナもきっと気に入るわよ」
「おおー、それは着てみたいです!」
あたしの説明を聞いたヒナは、飛び跳ねそうな勢いで言う。
「あはは……じゃあ、二人とも17時にさくら荘に来てね」
そんなヒナの様子を微笑ましそうに見たあと、なっちゃんは人混みに消えていく。
その背を見送ってから、あたしは再び祭りに視線を戻す。
……その後も、ヒナと一緒に祭りを楽しんだのだけど、彼女の意識はすでに浴衣に向いているようで、あたしが何を話しても上の空だった。
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