女公爵は押し付けられた再婚相手が苦手である

紫楼

文字の大きさ
1 / 13

1

しおりを挟む
 エーデンフィァ王家から茶会の招待状来てしまったら行くしかない。
 私は10年近くぶりに王城のプライベートエリアに押し込まれた。
 謁見室でも貴賓室でもないガーデンテラス。人払いがされそうなお茶会なぞ、もう何か厄介な案件がある前提で拒否権はあるのだろうか?

「良く来てくれた。レティシア・プラムローズ公爵」
 ハワード陛下が気軽い雰囲氣で声を掛けてくれる。幼馴染で母親同士が姉妹だったので従兄弟であるからそれなりに付き合いが長い。

「お呼びとのことで参じました」
 一応礼に倣って軽いカーテシーで挨拶をして着席を促された。
 すでに色とりどりの軽食やプチケーキが並べられている。
 お茶が用意される前にすでにいくつか摘み甘いのに当たったらしいハワードは悶絶した。

「レティシアは隣国の情報を得ているか?」
 
 紅茶で口を湿らす陛下が苦い顔でまたショコラを食べる。相変わらず甘いのものが好きなのか苦手なのかよくわからない行動だ。

「隣国は我がプラムローズ家にとって必要最低限以上の情報は必要がない国だ」

 軍部や外交やら輸出入を担当する家門なら論外だが、プラムローズは魔道具開発を主にしている。魔術を軽んじ戦争ばかりしている国などに興味はない。国防には手を貸しているが我が家は表には出ない。

「まぁそうだろうね、でも我が国にとって一つ問題ができた。リカルドが返された」
 リカルドは隣国に婿に行かれた王の異母弟だ。
 確か隣国の王女に一目惚れされて最終的に国交安定のために受け入れたとかだったとか。

「それで?」
「冷たいな?リカルドも幼馴染だろう?」
 陛下が首をすくめながら文書を差し出してくる。
 リカルドが返された顛末を纏められていた。

 隣国王女マリアンナが複数人と浮気をし、それを咎めも諌めもしない無関心な夫に腹を立てて階段から突き落としたらしい。
「今は体調は安定しているが一部の記憶がない、10年前くらいのレベルなら仕事がこなせる程度の記憶障害らしい」

 公務をこなすには微妙なラインだな、としょうのないことを考える。
 どちらにしても隣国は存外我が国をコケにしている。
 
「あちらの王女はまだリカルドを諦めていないらしいが、グリーンビアーの国王がリカルドの命を損なう損なう事になれば我が国と戦争になりかねないからと離縁させたらしい。慰謝料なんかはふんだくれたけど罰が甘過ぎるんだ」
 人を殺しかけておいてまだ諦めない王女を野放しにしているのだろうか?
 有名な親バカ王だが流石に無理があるだろう。

「前振りが長い。私に話す意味はなんだ?」
 ハワードは苦笑して書簡を渡してきた。
「リカルドを守るためプラムローズに迎え入れてほしい」
 書簡を開けば、リカルドと婚姻を結ぶようにと王命が書かれている。
 
 夫を亡くしたが一人息子がいて公爵家当主として役割は果たしている。何故面倒ごとを押し付けられねばならない!?

「リカルドを望む家も令嬢もたくさんいたと記憶している。何故うちなんだ?」

「うーん、まず力だよ。公爵家の力。そして王国屈指の警備力を持っている事。マリアンヌ王女から守れるだけの能力を持っている。王家に残しておけば権力目当ての小蠅に集られるしね。リカルドは今心のガードが弱いんだ」
 リカルドは若い頃から見た目の秀麗さから数多の女性に群がられていた。王子妃という名誉を欲する令嬢もいたが一度も浮いた話を聞いたことがなかった。

 プラムローズ家は魔道の大家で王宮の魔物対応の結界を張る魔法陣と魔道具を管理している。
 そして攻撃や防衛用の魔道具、魔術具を管理、開発をすることで公爵家として遇されている。
 当然情報漏洩や盗難、強奪など出来ないよう土地家屋の強固な結界、家人、雇用している者を護る道具を装備させている。それなりに騎士も常駐している。王家より守備は固い。

「断るのは無しなんだな?」

 怒りを籠めて睨んでも飄々と返される。
 だからこの男は嫌いなんだ!

「いくら君でも王命には従ってほしいな?」
 先程悶絶する羽目になっていたショコラをまた口に入れて戯けている。

「あともしリカルドの子供が生まれたとしてもプラムローズ家の長男で嫡男であるラインハルトの立場を脅かすことはないと約束する」
 そこは心配していない。能力が有ってやりたければラインハルトでなくとも構わない。

「この話はエディの墓前で言えるんだな?」
「まぁあっちに逝ってから謝るよ」
 
 夫エドワードが亡くなって7年、夫の親友との再婚を決められたレティシアは苛立ち紛れにショコラを3粒ほどハワードの口に押し込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

孤児ですが、神獣の声を担当しています~ただし身バレ禁止のため、王子様から逃走中~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
タヌキにそっくりな孤児のマーヤと、お疲れ気味な王子さまとの物語

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

婚約者の心が読めるようになりました

oro
恋愛
ある日、婚約者との義務的なティータイムに赴いた第1王子は異変に気づく。 目の前にいる婚約者の声とは別に、彼女の心の声?が聞こえるのだ。

処理中です...