女公爵は押し付けられた再婚相手が苦手である

紫楼

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 婚姻後半年経った頃、王家主催の建国記念式典に強制で参加させられた。通常の式典なら免除されているが建国2000年記念は流石に断れず。
 王弟であるリカルドの健在をアピールせよと言われてしまえば仕方ない。

 隣国の王女の事が頭に過ぎったが、国境は封鎖されているのだから気にしないでも良いと宰相たちも言う。

「着飾った妻を見られるのは良いね」
 リカルドは例の如くあの笑顔でいる。
「お母様、女の人みたいです!」
 レオンハルトが聞き捨てならない事を言った。
 ・・・普段が魔術師用のローブで着飾っていないので仕方ない。もう少しどうにかするべきだったか。
 リカルドも家令達も苦笑している。

 レオンハルトは留守番だがリカルドに色を揃えたフロックコートを着せてもらい嬉しそうにしている。
 父親がいると言う日々はレオンハルトには喜ばしい事なのだろう。

 二人で王城に行き、予測通り人の目が集中して寄せられる。
「まぁリカルドさまよ」
「プラムローズ公爵が公式の場に・・・」
 
 姦しい事この上無いが、エドワードとの婚姻報告後、ほとんどの行事に顔を出して来なかった私と、10年と言う間を国から離れていたリカルドが一緒に現れたのだから仕方ない事だろう。
 公向けの婚姻発表も簡易で済ましたので、真偽を疑っていた者もいるらしい。
 
 王の寵愛深い弟君と、表に出てこない国の防衛の要の公爵家の当主を初めて見た貴族も多いだろう。

 侍従長に案内され、王族の反対側に二人で並び、演説するハワードの声を聞く。
 一通りの儀式が進み、建国の神話となっている《誓約》を再現する。
 
 エーデンフィァとプラムローズの始まりの約束を。

『我は願う。貴女の眠りが永久に護られん事を」
『我は願う。貴女のこの肉体が悠久に朽ち果てる事勿れと』
『我は願う。私と貴女の魂が幾久しく離れず共にある事を』
『我は・・・』

 ハワードの宝剣と私の持つ宝笏を重ね、古代神聖語で言葉を紡ぐ。
 互いに魔力を通し、

『『我は願う。この地に永遠の安息を。我が愛しき妻の眠りが妨げられる事無きように』』

 宝剣と宝笏が光り玉座の後ろにある壁画の宝珠へと魔力が移る。

 最奥の間に私たち二人の魔力が届いただろう。

 建国だの誓約だの言い換えているが愛した女の死を嘆き、その墓を守るためだけに作られた国と組織だ。

 私たち以外は古代神聖語はわからないから内容はわからないだろうが、ただただ妻への思いが羅列されている。

「我が王家とプラムローズはこうして長きに渡り連理の枝の如く共にある」

「今見たように確かな絆がある。これから先もエーデンフィァはプラムローズと協力して国を護る」

 この建国記念で宝剣と宝笏と宝珠を使う儀式は50年ずつ行なう。なぜプラムローズは特別なのかと疑問に思われるころに儀式をして払拭と言う事らしい。


「それからもう知っているものも多いと思うが、我が弟が帰還した。積年の想いを叶え、レティシア・プラムローズ公爵と婚姻し現在は、リカルド・プラムローズとなっている。よしなに頼む」

 それからはダンスを楽しんだり歓談したり。食べ物を摘んだり。

 バックでは古代音楽を流している。

 各々ので自由に過ごすが、派閥同士のやり取りや睨み合いも見て取れる。
 私たちの元にも重鎮達が次々挨拶に来た。
 

「レティ、みんな老けたな」
 ・・・記憶をなくして無くとも10年ぶりなら姿形が違っていても不思議では無いぞ。
「リカ、お前も私もだいぶ変わったぞ」
「そう?レティは今も昔も綺麗だよ」
 エスコートされながら進んでいると、昔リカルドを追い回していた夫人(元令嬢)達が何とも言えない表情で見ている。

「今彼女達が独身であっても相手にしたく無い程度の低さを己で気がつけば良いのに」
 ボソリと呟いたリカルドに少し笑ってしまう。

 昔から身分の高さと見目の麗しさから熱意のあるご令嬢に追い回されてはビシリと断り、切り捨てていた。ハッキリしているのに彼女達は諦める事が無かった。
 流石に年齢的に厳しくなった頃リカルドが海外に出てしまい、親達が縁談を無理に纏めたと言う話は当時たくさん噂されていた。

 誰もがこれほど長く戻らず、まして隣国で結婚するなど想像もしていなかったし、離縁して戻り私と再婚するなどと言うことも予測できなかっただろう。
 仮に予測出来たとして貴族の令嬢が10年嫁がず家に残る事や、夫を捨てて迫るなどは無理がある。

 どう合ってもリカルドと縁付く可能性がないのに睨みつけたり悲しんだりするご婦人方に理解が出来ない。

 真剣に恋をしたり愛したりすれば、私にもあの感情が解るようになるのだろうか?





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