女公爵は押し付けられた再婚相手が苦手である

紫楼

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 主だった王族、高位貴族、王宮魔術師達との挨拶も済んだのでそろそろ帰れないものかと考えていたら、何やら騒がしくなった。

「なんだ!」
「どけぇ!!邪魔をするでない!!」
「きゃぁー」

 黒を基調とした赤い色の刺繍や宝石で彩られたドレスを着ている身分は高いであろう黒髪の30代らしき女が、側にいた貴族を突き飛ばしながらこちらに迫ってきた。

 あまりに異様な様に周りにいた貴族も固まったまま、護衛騎士達も高貴であろう女性に一瞬判断を悩んで動けずに。

「そこな女!!妾の男に触れるでない!!!」
 
 目を血走らせそう叫んだところで、私とリカルドの帰還前の事を知っているもの達に緊張が走った。

 突然入り込んできたこの女は隣国のマリアンナ・グリーンベアー王女だと。

 隣国との国境は封鎖されているにもかかわらず、厳重な警護をされているこの王宮に今一番入れてはならない人物がいる。
 内通者、手引きした者がいるはずだが、当然王女の側には人がいない。

 リカルドは私を守ろうとスッと後ろに庇ったが、王女の発言に怪訝な顔をした。

「なぜじゃ!なぜ其方がその女を庇う!!其方は妾のモノじゃ!」

「お前は誰だ?悍ましい事を言うな!」

 10年の記憶が無いことはグリーンベアー側も承知にはずなのに王女は愕然としている。

 リカルドに殺気を向けられ、冷えた眼で睨まれ、「誰だ」と言われて。

「ふざけるでない!!」

 王女はリカルドに掴み掛かろうとしたが魔導具が発動し、弾け倒れた。

「ぎゃぁあ!?」

 ・・・もう少し強度を上げるべきだろうか?

 明確な殺意やスピードの速い剣には即座に反応出来るようにしてあるが、縋りかかろうとか掴み掛かろうとする程度にはそこまで反応しない。

 その程度、騎士なら自分でどうにかするだろうしな。

 魔道具、魔導具、魔術具は魔力や魔物の対処には強くとも対人に関してはあまり使えるモノではない。

 夫が襲われている中、自分が作った魔導具の性能を気にしてしまったことに気がついて自分に少し呆れた。

「取り押さえよ」

 ようやくハワードがやってきて騎士達に命じた。

「なんじゃと?私はグリーンビアーの王女ぞ!!そこな男の妻ぞ!!」

 先程まぁまぁ痺れただろうに全然答えていないようだ。やはりもう少し出力を・・・。

「離婚は成立しているし、お前は不法侵入者だ。グリーンビアー国とは国交を解消し、離縁をした時の誓約書でリカルドの前には二度と現れないことと、この国にグリーンビアー王家の者は足を踏み入れることは許されない、と明記させてある」

 ハワードの言葉に城内が騒つく。

 リカルドの前の婚姻、離縁は外部に知らされていなかった。
 グリーンビアーとは長く付き合いのない国でまさか長く留守にしていた王弟がそのような国に婿に行ったなど、そして発表もされず、利益のない婚姻を結んでいたなどと貴族の誰もが理解のできない。

 リカルドの婚姻が確定した時は国交を結ぶ方向で進んでいたがグリーンビアーはリカルドとの連絡すらまともに受け付けなかった。
 緊張関係のまま、リカルドを人質に取れれたようなままで、あげく殺されかけて戻された。断絶も仕方ない事だ。

「リカルドは妾のモノじゃ!!」
 睨みつけ、怒鳴りつけてくる女にハワードは冷たく見下ろし威圧をかける。

「・・・お前は随分我が国を舐めているな。どんな教育を受けたら他国でこんな真似が出来るのか?」
「妾を侮辱するかっ!?」
 抑え込まれ、未だ立ち上げれもしないくせに威嚇だけはしている。

「侮辱?それすらも価値が無いぞ。連れて行け」

 騎士たちに命じ、王女は引き摺られて行く。
「やめよ!国際問題ぞ!!」

 どの口がいうのかと誰もが思っただろう。

 普段飄々と軽口を叩いているハワードがこんな顔をしているのはあまり見たことがない。


「誰か手引きした者がいるであろうがこの女に加担した者は死罪になる。必ず炙り出す」

 その場はシンと静まった。

 

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