とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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17巻

17-2

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「歴史をかんがみれば、そのような危険を考えて他種族に警戒心を抱き続けることは仕方がないかもしれませんね。今は穏やかな妖精族も、過去には多くの種族に対して戦争を仕掛けたそうですし」

 これは、フェアリークィーンをはじめとしたこちらの世界の人とのやり取りを通して分かっていたことだ。今は穏やかに見えるこの世界も、時代によっては凄惨せいさんな状況に置かれていた。もし、今でも偏見が強かったのならば、そのような阿鼻叫喚あびきょうかんの世界が展開していただろう。考えたくないなぁ。

「ある程度、歴史を知っているようだな。実は私の祖母がその時代の妖精たちと戦っていてな。私達は長寿を誇る種族であるにもかかわらず、祖母は戦いによって受けた傷から毒が回ったために短命であった。そういったこともあってな、外見が違うというだけで争いを吹っ掛けてくる者がやってくる可能性を考えないわけにはいかんのだ」

 世界が違ってもそういう部分が同じってのは、嫌なもんだな。地球だってそうだ、肌の色の違いが差別や争いの元になった例はいくらでもある。そして、そんな出来事は未だに消え去っていない。

「そういうことであれば、警戒なさるのも当たり前かと。ましてや自分は、いきなり現れておいて魔王様に会わせてほしいという滅茶苦茶な要求をしているのですから」

 と、言ったところで、ふと気になったことを質問してみるにした。

「あと、これは興味本位なのですが……魔王様を勝手に悪党に見立てて攻め込んできた者たちは、今までにどれぐらい存在しましたか?」

 RPGのお約束というやつだね。まあ、そっちのほうは実際に魔王が世界征服などの悪事をたくらんでいるわけだが、この「ワンモア」世界においてはそんな単純な話ではないだろう。

「──ああ、細かい数字は面倒だから言わぬが、相当な数に上るぞ。もちろん、歴代の中には悪事を行ったクズ魔王もいるから、そういった時代に攻め込んできたのを除いての話だがな」

 ああ、やっぱりいるのか。というか、クズ魔王って言い切ったよこの方。
 悪事に手を染めた一部の魔王様が、魔族にとってははた迷惑な存在だったことは想像にかたくないが、それでもそんなに言い切っちゃうのか。

「それに比べて、今代の魔王様は素晴らしいお方だ。だからこそ、不埒な考えを持つ者を近づけるわけにはいかん。まあ、いきなり戦いを挑んでくるような輩が今の魔王城に現れた場合は、即座に排除だな。あのお方のお手をわずらわせるわけにはいかぬ」

 おおう、さっきまでとは打って変わって、崇拝すら感じさせる雰囲気だ。心なしか、頬が赤いような……もしかすると、今代の魔王様はめちゃくちゃイケメンなのかもしれないな。崇拝心と恋心が入り混じっている可能性もあるし。その辺には突っ込まないほうがよさそうだ。地雷を踏むことになりかねん。

「とにかく、少なくともお前は魔王様に対する悪意を持っていないことは理解した。次の四天王の下に向かうがよい。この先でも、愚かな行動はしてくれるなよ? もしその場合は……」

 マドリアさんはここで言葉を区切り、じろりと自分のことを睨んだ後にひと言。

「私が直々じきじきに殺すぞ」

 実にシンプルですね。分かりやすくて素晴らしい。あれこれ当たり障りのない言葉を交わし合う『大人の会議』にはないシンプルさが実にいい。
 自分は椅子から立ち上がって『理解しています』とばかりに深く一礼し、入ってきたドアへと向かう。

「それでは、失礼いたします。ありがとうございました」

 そう言い残して部屋を後にする。
 外に出たところ、メイドのミステさんが一人で待っていた。おそらく試験通過を認めたマドリアさんが、何らかの方法で待機しておくようにと伝えておいたんだろう。

「一人目の試験、お疲れ様でした。続いて二人目の四天王様のお部屋へと案内いたします。ついてきてください」

 そうして再び、ミステさんの案内で魔王城の中を歩く。
 さて、一人目がエキドナという自分的にはあまりなじみのない種族が出てきたな。この分だと、四天王の残り三人も変わった種族である可能性がある。その点を考慮した上で挑むことにしよう。ま、戦いになる可能性は多分低いし……大丈夫だろ。



 3


「無事に最初の試験を通過されてほっとしました。敵意がある方ならともかく、そうではない方が生きて戻ってこれないのはさすがに後味が悪いですから」

 次の四天王が待つ部屋に向かう途中で、ミステさんがそう話しかけてきた。

「おかげさまで何とか」

 と、相槌あいづちを打っておく。といっても、さすがにフィクションにありがちな脳筋のうきんとかじゃない限り、そう簡単に相手の不興を買って「殺すしかない」なんて結論に到達することはまずないでしょうに。

「先程お会いになられたマドリア様は、少々過激なところもございまして……その、ご本人に面と向かって言うわけにはいきませんが、怒りの沸点が極端に低くてですね……特に魔王様をけなすような発言を軽々しく口にした方は、それはもう凄惨な結末を迎えることになるかと」

 ──国のトップである魔王様を貶されたら、沸点が低い高い関係なく魔族の皆さんは怒るべきだと思うのですが如何いかがでしょうか? という感じで、ミステさんに問いかけてみると……

「ええ、それはそうなのですが。でもまずはそんな風に言わないように相手の方をなだめるべきですよね? 忠告を無視して言い続ける方であれば、それ相応の結末をたどっていただきます。しかし、マドリア様にはその最初のひと言が絶対にありません。いきなりバッサリです。なので、今ここでこうして貴方様が生きていることは、魔王様に対する暴言を吐いたりしなかったという証明になります」

 あ、そんな部分の審査もあったのか。でも、自分には魔王様を貶そうなんて考えは初めからない。なのでそこで引っかかる恐れは最初からなかった。

「そういえば、マドリア様の魔王様に対する忠誠心は特に高いようにお見受けしました。ただ、少々行きすぎているような気もしましたが……不躾ぶしつけながら伺いたいのですけど、今代の魔王様は男性なのですか? 女性なのですか?」

 マドリアさんが頬を染めていたような気がするから、多分男性なんじゃないかというのが自分の予想。その上で紳士的なイケメンで、なんでもできるパーフェクトなイメージが頭の中で構築されていた。
 さて、自分の質問を聞いたミステさんなのだが、なんだか様子がおかしい。そもそもメイド服が動いているだけで、顔は見えないのだから表情は分からないのにもかかわらず、困惑しているかのような感じが伝わってくるのだ。

「も、申し訳ないのですが、それは魔王様と謁見できたときのお楽しみということで。ええ、ええ、ええ」

 ──何だこの返答は。な~んか引っかかるな。ゲヘナクロスのときに援軍を出したり、新しい魔道具を生み出して魔王領で活動しやすくなるようにしてくれたりと、少なくとも他種族にも友好的であることは間違いないと思うが、ひと癖ふた癖あるんだろうか? 
 まぁ、魔王様じゃなくったって、王様ってのは大抵なんらかの特徴を持っているのがお約束っぽいけどさ。

「そうですか。こちらとしても無理に聞き出すつもりはないので、謁見が叶ったときのお楽しみとしておきます」

 と、自分はこの話はさっさと切り上げる。言いよどんだところにツッコミを入れても、基本的にいいことはない。商談や勝負の駆け引きならば、絶対に突っ込むべきだがね。
 しかし、今は突っ込むとその先にはおそらく地雷原がある。そう、地雷ではなく地雷『原』だ。触らぬ神にたたりなしである。

「そうしていただければ。そろそろ、次の四天王様が待つお部屋です。準備はよろしいですか?」

 もう次の部屋か。さて、次はどんな相手が待っているのだろう。お手柔らかに、と言いたいが、さすがにそれは無理な話か。
 最初のときと同じように「ここからはお一人でお進みください」と言われて、一本道を進む。その先にあった部屋のドアにノックを三回。そして「どうぞお入りください」との返事を聞いてから、ゆっくりと中に入る。

「お待ちしておりました。私はサキュバスクィーンであり、四天王も務めているヘテラと申します。よろしくお願いしますね。こちらの椅子におかけください」

 そう言ってからゆっくりと優雅に頭を下げるヘテラさん。
 次はサキュバスさんですか。これはファンタジーではおなじみの種族ですね。特にR‐18のアハーンなことで出番が多いね。
 ただ、サキュバスクィーンというところに引っ掛かりを覚える。
 なんでサキュバスの女王が四天王をやってるんだろ? 魔王様の嫁候補とか? 確かに蒼いロングヘアーは実に見事だし、美人さんだからそう言われても納得するけど。

「これはご丁寧に。私はアースと申します、本日はよろしくお願いいたします」

 こちらも丁寧に頭を下げた後、勧められた椅子に座る。
 改めて見てみると、ヘテラさんはサキュバスとしてはかなり異端な服装をしていた。サキュバスというと、露出が多いとか、全裸で肝心な部分を髪の毛や翼で隠しているだけとか、基本的にきわどい外見をイメージするだろう。実際自分もそういうイメージが強い。
 しかし、今目の前にいるサキュバスクィーンのヘテラさんは、上半身はロングケープとか何とかいうとにかくケープのような物を纏っており、下半身はズボンにシューズで一切肌の露出がない。おそらくケープの下にも、それなりに着込んでいるはずだ。

「話をする前に、前もって申し上げておきます。人族の間ではサキュバスというと大胆な姿で男性にぐいぐいと迫るイメージが強いようですが、私たちはそんなことは致しません。そのような形で迫るのは心に決めた伴侶はんりょだけであり、それ以外の男性の前ではご覧のように一切肌をさらさないようにしております。本音を言えば顔も仮面をつけて隠したいのですが……さすがにそれはやりすぎとなりますので」

 あ、世界のあちこちから幻想おおいなるきぼうみじんに砕けた音がした気がする。なんとなく、『サキュバスには期待していたのに!』とか『「ワンモア」だから、ギリギリまで攻めると思ったのに!』とか『裏切ったな!』とか、そんな男性陣とごく一部の女性陣の絶叫というか断末魔というか、そういう感じのものが耳に入ったような……幻聴だよね? VRに入るためのデバイスが故障した可能性もあるな、エラーが発生していないか後で確認する必要がありそうだ。

「了解です。むしろこちらとしても、そんな風に肌を隠していてくださったほうが落ち着いて話ができるので助かります」

 これは本心だ。イメージ通りのサキュバスが出てきたら刺激が強すぎて、論戦を仕掛けられたらめためたにやっつけられたかもしれない。こちらのサキュバスの貞操観に心から感謝しよう。

「そんな返事をなさるとは意外ですね、てっきり、人族の男性であればがっかりなさると思っていたのですが」

 そうだね、がっかりする人も大勢いると思いますよ。たまたま自分はその範疇はんちゅうにいなかったというだけで。というか、試験を受けに来たというのに、まだ世間話しかしてないような。

「確かに美人の相手ができるのは、男として夢の一つではありますね。ですが、相手があまりに美しすぎると気後れしてしまうこともありますし。女心は難しいなどと言いますが、男心もなかなかに複雑で繊細な面があるものですよ」

 あー、キザすぎる言い方になってしまった。こんなの自分じゃないな──とはいえ、一度口から出た言葉はもう引っ込めることができない。
 やっぱり美人ってのは恐ろしいね、知らず知らずのうちに、本来の自分を覆う仮面を被ってしまう。いい格好をしたいというわけじゃないんだが、どうにもこうにも。
 またまだ自分も青いってことか。ハードボイルドなんて言われるしぶい男には、到底なれそうもない。

「ふふっ、そういうことにしておきましょう。確かに心とは難しいものですからね。たとえ頭では冷静に物事を考えているつもりであっても、心がそれを許さないということも往々おうおうにしてありますし。ですが、だからこそ私たちには熱があり、生きていると言えるのでしょう。全てを冷静に考えるだけでは面白くありません。もちろん、四天王として肝心なところに感情を持ち込んではいけませんが」

 なんとなく、哲学的なニュアンスだな。色恋沙汰よりも、生きる意味を考えるサキュバス……うん、悪くないかもしれない。
 そりゃ、一般的ではないかもしれんよ。でも、この「ワンモア」の世界なら、十分にアリなんじゃないだろうか? 元々こういうイメージだからこうしなきゃいけない、なんてレールは、この世界には不要だ。

「その、四天王というお言葉が出て思い出しましたが、試験のほうはよろしいのでしょうか? 今まで雑談のようなことしかしておりませんが……」

 そう、そろそろ試験を始めてもらわないと。厄介事が終わったらこんな風にのんびりと言葉を交わすのもいいのだが、今はさっさとやっつけたいことが待っているからな。そのために魔王様に謁見しないといけないから、こうして四天王の皆様と会っているわけで。

「そうですね……試験は、もうすでに始まっていますよ? そして、今終わりました。アース様には、次の四天王の試験に進んでいただきます」

 もう終わった? どういうことだ? 話をしていた時間はほんの数分だ。なのにもう試験は終わったという宣言。そうなると、今まで話した内容に何かがあったんだろうが……とにかく、叩き出されないのだから、何とか通過ラインは越えたのだと信じたい。

「どういった試験なのかが全く分かりませんでしたが……とりあえず次に進むことにします。お邪魔しました」

 そうして自分が頭を下げ、部屋を出ようとしたとき、背後からヘテラさんの声がかかる。

「個人的には、ぜひ魔王様との謁見が叶ってほしいですね。試験はあと二つですが、貴方ならおそらくそう苦しむことなく通過できると思います。頑張ってくださいね」

 そんな応援を受けて、二人目の四天王であるサキュバスクィーン、ヘテラさんの部屋を失礼した。さ、この調子で三人目に行こう。




 4


 三人目の四天王の部屋への案内を受けている最中、自分はつい、はぁーっとため息をついてしまった。

「あら、どうなさいました?」

 そんな自分の様子を見て、ミステさんが足は止めずに問いかけてきた。

「いえね、四天王の皆様と会わねばならないという説明を聞いたときは、かなり緊張したんですよ。どれほど恐ろしい猛者もさが出てくるのかと。何せ魔王様の直近の方々ですからね。しかしふたを開けてみれば、別の意味で恐ろしさを感じる方が連続で出てくるので」

 実力があるから四天王の座にいるわけで、そこは別に男女の違いは関係ないだろう。が、無意識のうちにもっとこう、覇気はきのある武将的なイメージをしていたのはいなめない。
 ところがどっこい、外見こそ下半身が蛇だったりしていたが、ここまで二人ともかなりの美人さんだったことにはびっくりさせられた。
 だが、そんな外見に騙されてはいけないことも理解できた。最初のマドリアさんは分かりやすかったが、次のヘテラさんも穏やかなのはあくまで表面だけ。実は、ヘテラさんからもなんとも言い難い、こちらを押し潰すような威圧を受けていたのだ。それに気がついたのは、部屋を出てしばらく経ってからだが。
 あれは、何らかの精神攻撃を受けていた可能性があるな。そしてそれもまた試験の一つなのかも。

「見た目は美しい皆様ですが、その気になれば一日で一つの街を地図から消せる力をお持ちですからね。私たちも無礼を働けば一瞬で消されてしまいます。幸い、そんな力と共に、それをむやみやたらと振り回さない心もお持ちですが」

 ああ、やっぱりそんなレベルの実力者か。なら、自分一人を一瞬で消すこともたやすいだろうな。〈黄龍変身こうりゅうへんしん〉すればねばれるかもしれんけど、試す気にはならない。

「やはり、実力と心の両方を兼ね備えていらっしゃるのですね」

 力だけでは暴力、心だけでは何もできない、と言ったのは誰だったか。妙に心に残っている言葉だ。

「はい、そうでなければ四天王として選ばれませんから。ただの暴れん坊ではダメです、論外です。力と心を持った上で、今回のような試験を行える知力や応用力など……あらゆる力を要求されます。だからこそ、四天王の皆様には全ての魔族が敬意を払うのです」

 心身共に強くなければ人の上に立てない、というのは大いに同意できるな。

「そして、そろそろ三人目の四天王様がお待ちしている部屋です。心の準備をお願いしますね」

 さて三人目。次はどんな方が出てくるのやら。一人目がエキドナ、二人目がサキュバスと、共通点もないからさっぱり分からんなぁ。とりあえず部屋に入ろうか。

「──来たね。まずは座って。おそらく前の二人はお茶の一つも出さなかったろうから待ってて」

 四天王三人目は、肌がかなり白く、フードを深めに被った女性だった。
 それにしても、三人目も女性か……魔王領でも女性が強い時代なんだろうか? とりあえず言われた通りに椅子に座って待つこと数分。部屋の奥から紅茶の香りをただよわせながら、彼女は戻ってきた。

「はい、どうぞ。私の趣味の紅茶だけど」

 良い香りだ。紅茶の知識なんてほとんどないが、この香りだけで良いものであると理解できる。そっとカップに口をつけて、まずはひと口。うん、程よい苦みと甘さ。これは自分の腕では出せない味だ。

「素晴らしい味です、ホッとします」

 しばらく二人で対面に座って紅茶を飲み、落ち着いたところで、フード姿の女性が自己紹介を始める。

「そろそろ喉も程よく湿っただろうから、話を始めようか。私はデス、死神よ」

 ──すごいな魔王様。死「神」さんまで四天王、つまりは配下に置いているんですか。

「デスさんですか。私はアースと申します」

 カップをテーブルに置き、こちらも名前を告げる。
 すると、デスさんはきょとんとした表情を浮かべた。ついでに深めに被っていたフードがずり落ちて、素顔が晒される。素朴系美人? 派手さはないが奇麗だな。

「貴方は私が怖くないの? 自分で言うのもなんだけど、私は死神だよ? 死をつかさどる神だよ? まあ、まだ死神としては半人前だけど……死神って、人は物凄く怖ろしいイメージを持ってるんじゃなかった?」

 ああ、そういうことか。なんで急にあんな表情を浮かべたんだろうかと思ったが、そういう事前情報と自分の態度があまりにも違うから、理解が追い付かないのかもしれない。

「そうですね、確かに死神に対して畏怖いふの感情を持つ人は少なくないでしょう。死というものは恐ろしいですから」

 ここで自分はいったん言葉を区切り、紅茶を口に含む。そうして紅茶の味を楽しんでから、話を続ける。

「ですが、そういった死神は大抵、積極的に大鎌を振るって殺しに来るものですね。骸骨がいこつが黒いぼろのローブを纏った姿で現れ、問答無用で無慈悲に命を刈り取る。故に怖ろしい、と」

 よくゲームでアンデッド系のモンスターとして扱われる死神は、こういうイメージだろう。特にボスとして登場する場合、即死させる技を持っていたりするから、尚更恐怖の対象となる。
 そうそう、冒険中盤までは絶対に倒せず、逃げ回るしかないというパターンもあったな。で、追いつかれると呪われて色々と悲惨な状況に追い込まれるんだった。
 そういや「ワンモア」でも、そんな罠が前にあったんだっけ。

「ですが、それは本来の死神の姿ではない」

 ──かどうかは不明だけど、わざわざ心証を悪くする必要もないだろうってことで、ここは断言しておく。

「本来の死神とは、死した者が迷わぬようその後に向かうべき場所へ導く案内人。行き場所に迷ってワイトなどのモンスターになってしまわぬようにする神。それが本来の死神」

 と、いう見方をする話もある。地縛霊や浮遊霊といった形で現世に執着し、いつまで経っても浮かばれないなんてことがないように、死んだ人の霊魂をきちん輪廻転生の輪へと戻す役を担うのだ。
 だけどやっぱり、ゲームとかフィクションでの死神の役割っていうと、デストラップ役とか、追い掛け回してくる恐怖の存在というのが多いのも確かではある。

「──驚いた。人族の間でも死神についてそんな風に伝わっていることがあるなんて。そう、私は今貴方が言った通りの案内人。老衰、病気、大怪我などで死した者たちの魂を、きちんと行くべき場所へと届けるのが私の仕事。逆に言えば、死すべきではない者、助かる可能性のある者には治療もほどこす。死神は決して、死を呼び寄せる不吉な存在ではない。人族がそれを知っているとは思わなかった」

 ああ、この子はそっちの役割を持つ死神なのか。だけど……

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