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4巻
4-3
3
(あっちは前衛役募集、こっちは回復役募集、そっちは支援役募集……)
PT募集ウィンドウを眺めているのだが、どういうわけか火力枠は完全に埋まっているようで、自分はどこにも入れそうにない。平日は最大で二時間ぐらいしかプレイできない自分は、PT結成にあまり時間を掛けたくないのだが……今日はとことん歯車がかみ合わない日らしい。
(ダメだな、こりゃ。経験上、こういう流れのときは結局上手くいかないことが多い)
ウィンドウを閉じ、選択肢を考える。狩りの予定を変更して料理をやるか、鍛冶を試すか、はたまたソロで狩りにいくか。
(料理と鍛冶は止めておこう、こんな日は生産行動をやっても上手くいった試しがない)
バイオリズムなるものを完璧に信じているわけではないが、不思議とそういう波長はあるものだ。そうなると、残るは狩りしかないのだが。
(う~ん)
悩みながら首をひねっていると、頭の上に乗っていたピカーシャがパタパタ羽ばたきながら目の前に下りてきて、こちらを見た後に街の外へゆっくり飛んでいく。
「なんだ?」
ふわふわと街の外に向かっていく、ひよこ形態のピカーシャ。というか、この形態でも空を飛べたのか。ひよこが小さく羽ばたきながら空を飛んでいるって図は結構シュールだな……可愛いだけに、余計妙な気分になる。
こうした部分は「ファンタジーだから」で片付ける方が、精神的によさそうだ。
街から出たピカーシャはひよこ形態を解除し、本来のサイズに戻った。そして体を屈める。これは「乗って」というサインなので、言われるままにする。自分が乗ったことを確認すると、ピカーシャは立ち上がり、林に向かっててこてこ歩き出した。
すぐ林に到着したのだが、ピカーシャは自分を乗せたまま突き進む。ピカーシャの考えは分からないが、従った方がいい結果になる気がする。そう言えば、この辺の木の質も調べておかなければな。木工に使えるかもしれない。
……と、《危険察知》にモンスターの反応が。そろそろピカーシャを止めねば。
「ピカーシャ、前方にモンスターがいるからそろそろ……」
自分を下ろしてくれ、と続けるつもりだった。
「ぴゅういいいいいいい~♪♪!!」
ところが、自分の声を聞いた途端、ピカーシャは大声で鳴いたかと思うと、前方に向かって高速で突進を始めた。
「え、おい、どうしたんだ!?」
自分の慌てた声も聞こえていないかの如く、どどどどどっと突進し続けるピカーシャ。その先には、ゴブリンPTの団体様がいる。
「ピカーシャ、前、前!!」
注意を呼びかけるが、ピカーシャはそれも無視してゴブリンのPTに突っ込んだ。そうだな、ボーリングの玉をピカーシャ、ピンをゴブリンに見立てて欲しい。自分を乗せたまま、そんな感じで突っ込んで――ゴブリンのPTを弾き飛ばしたのだ。ボーリングだったら、非常にいい音が響いたことだろう。
「ぴゅい!」
それだけに留まらず、倒れこんだゴブリンを足でむんずと掴んで他のゴブリン目がけてブン投げ、追撃を始めた。こうなっては仕方がないので、近場のゴブリンはピカーシャに任せ、自分は遠くに吹き飛ばされていったゴブリンを狙撃していく。ピカーシャが背中を硬く調整してくれたので、立ち上がって弓を射ることができた。
ものの数十秒で、ゴブリン八匹のPTが全滅した。これは戦闘ではなく、蹂躙といった方が正しいだろう。ピカーシャが強いのは十分わかっていたのだが……ずーっとひよこ形態に押し留めていたから、ストレスが極度に高まったのかもしれない。それくらいの暴れっぷりだった。
自分が再び背中に座り込むと、ピカーシャは再びてこてこ歩き出した。そして、自分が《危険察知》でモンスターを発見→突進→ストライク→追撃&狙撃といった流れを繰り返す。ゴブリンどころかオークすら手玉にとり、一時間も経つ頃には、周囲からモンスターの影は消えていた。
それでもピカーシャは止まらない。森の中をあちこち歩き回って見つけたモンスター達に容赦なく突進し、派手に吹き飛ばす。つつく、踏みつける、ブン投げる、氷魔法でぶち抜く。キリングマシーンと化した今日のピカーシャは止まらない、止められない。サーチ&デストロイという言葉が自分の頭にふよふよ浮かぶ。
ログアウト時間が迫って林から出てきたときには、モンスターがドロップした分だけで一〇万グローを超えていた。乾いた笑いしか出てこなかった。ピカーシャは満足そうにひよこ形態に戻っている。
絶対ピカーシャを怒らせないようにしよう、そう誓った。
蛇足だが、この日のことは「青い毛玉のユニークモンスター、林を駆ける!」などという見出し付きで掲示板に報じられ、大騒ぎになってしまったのだが……あえて言う理由もないので、真実は闇の中である……あーあ。
翌日。「キリングマシーン・ピカーシャ事件」でたっぷりお金が入ってしまったので、今日は狩りをお休みして料理を楽しむことにした。
本日の材料は……ドラゴンのお肉! そろそろ手を出したくなっていたし、色々と都合が良いので、ついに使用することにした。
一が武の隅っこを陣取り、アイテムボックスからドラゴンのお肉をいくつか引っ張り出して作業を開始。
まずはうすーく切って塩と胡椒だけの大雑把な味付けで試食してみる――どんな味かと不安に思っていたのだが、実際はそんなにくどくない、というか柔らかくて実に美味しい。
ドラゴン同士は死闘の末、勝った方が負けた方を食べることがあると聞いた。完全な同族じゃなければ、共食いには該当しないのかもしれない。
米は買ってあるし、調味料も醤油にみりん、お酒と揃っている。出汁も何とか作れるだろう。このお肉は、牛丼ならぬ【ドラゴン丼】にせざるを得まい。現実ではどう頑張っても食べることができないからこそ、作る価値があるというものだ。傍から見れば、貴重な素材でなんてことをするのだと思われそうであるが。
米をじゃこじゃこじゃこと磨いでから、底が丸い釜に入れて水を張る。こうして水を吸わせる時間をしっかりとらないと、美味しいご飯は炊けない。しっかり手間をかけた下ごしらえこそが、美味しい料理に欠かせないのである。底が丸い釜を使う理由は、炊いたときに米を泳がせるためである。底が角ばっていると米の泳ぎ、つまり温度変化による対流が上手くいかず、ご飯が不味くなってしまうのだと、実体験によって知っている。
吸水時間を利用して出汁を作る。使うのは醤油にみりん、少々の砂糖にお酒。それから重要なのが昆布。よくうまみ調味料なんてものがあるが、アレは昆布が元であったりする。昆布である程度味をとってから各種調味料を入れ、手の甲に取り出して味を確認、調整していく。
出汁を作り終えてもまだまだ時間はあるので、ドラゴン肉でシンプルなステーキを三枚焼いてみる。ある意味非常にロマンがこもった料理だ。塩胡椒は最小限で十分、せっかくの肉の味を壊すわけにはいかない。柔らかな肉質は高級霜降り牛肉に勝るとも劣らないのだから。
焼きあがった熱々のステーキを、一枚は自分が、二枚はピカーシャが食べる。めったに食せぬ肉だけに、その味には感動すら覚えた。
【ドラゴンステーキ】
ドラゴンの肉を最小限の味付けで焼いた幻の一品。
これを食せるのはごく一部の人間に限られる……よほどの強者か、金持ちか、権力者、
もしくは幸運な者。
製作評価:6
じっくり【ドラゴンステーキ】を堪能したところで、ようやく米を入れた釜を火にかける。現実世界ではいつも炊飯器頼りで加熱の感覚に不安があるため、《料理促進》による時間短縮は控えることにした。
【ドラゴン丼】は大量に作ってアイテムボックスに保管しておくつもりなので、ご飯が炊けるまでにどんどん薄切り肉を製作する。
タマネギも大量にさくさく切る。さすがは上級セットの包丁、タマネギを切っても涙が全く出ない。というのもタマネギを切って涙が出るのは、包丁に原因があるからだ。安物の包丁はタマネギを「押し切る」ので、タマネギの刺激物質を空気中にばら撒いてしまい、それが目に入って染みるために涙を流すことになる。一方で日本刀に近いような切れ味の良い包丁はスパッと文字通り「切る」ことができるので、タマネギを押しつぶさず、涙が出ないのだ。機会があったらぜひお試しあれ。
ドラゴン肉の薄切りに軽く火を入れてから、出汁と調味料とタマネギを投入。肉とタマネギに出汁と調味料を染みこませつつ余計な水分を飛ばしていく。
両手でフライパンを持ち、気合を入れて振り続ける。しばらく炒めるとタマネギがうっすらと狐色になり、肉もいい感じに火が通った。頃合いだろう。
米の方もちょうど炊けたようで、釜の蓋をとると美しく輝くホッカホカの銀シャリがお出迎えをしてくれた。辺りに米特有の甘い香りがふわりと漂う。この香りにしばらく酔っていたいが、そうもいかない。
冷めてしまう前に急いで丼にガンガン米を入れて、その上にどっさりとドラゴン肉とタマネギを載っけていく。盛り付けた端から素早くアイテムボックスへどんどん収納。しばらくして、食べるために分けておいた二つを残してようやく全ての丼をしまい終えた。アイテムボックスには「ドラゴン丼×64」と表示されている。
【ドラゴン丼】
貴重なドラゴンの肉を丼物にしてしまったという、ある意味贅沢な、ある意味馬鹿な料理。
だがその味は卑怯なまでに病みつきになる可能性を秘めている、罪作りな一品。
これを食するあなたは何を思うのだろうか……
効果:攻撃力上昇(大) 防御力上昇(中)
製作評価:8
おおっと、能力が二つも上がる料理が出来た。説明文にまで馬鹿と言われてしまったが、考えたら負けだ! まだまだお肉はあるのだから気にしない! まずは食う、それから考える。
ピカーシャと自分の前に丼を一つずつ置く。ここはあえて下品に大きく口を開けて、がばっと食うのだ――ああ、天国はあった……ここにあった……なんでだろう、涙が止まらないや……幼い頃に返ったような気持ちになる……あーだこーだめんどくさい批評はいらない、ただただ美味い、美味いんだ……ふと顔を上げれば、ピカーシャもどこか遠くを見ている……
「美味いか?」
「ぴゅい♪」
その後はお互い無言で丼をかっ込んだ。肉が美味いだけじゃない。肉とタマネギのエキスに出汁が絡まり、その出汁がご飯に染み渡っている。そのご飯と共に肉を食うなんて、ああ、丼物とはなんて偉大な存在なのだろう……食べ終わるまで周りを気にせずがっつき続けた。実に満足な一日だった。
丼物には不思議な魅力があると思います。お米万歳。
【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv15(←4UP) 〈蹴撃〉Lv48 〈遠視〉Lv60(←1UP)
〈製作の指先〉Lv83(←5UP) 〈小盾〉Lv14 〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv63(←1UP)
〈義賊〉Lv37(←2UP) 〈上級鞭術〉Lv5
〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39 〈上級鍛冶〉Lv36 〈薬剤〉Lv43 〈上級料理〉Lv36(←21UP)
ExP21
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者:青のピカーシャ(アクア)〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
〈???の可能性〉
4
ログインをして、今日こそはPTを探し当てようとPT募集ウィンドウを開く直前のことだった。
【おーい、アース、今大丈夫か~?】
ウィスパーが飛んできた。声の主はツヴァイのようだ。
【ああ、大丈夫だ。何かあったのか?】
自分の返答に、ツヴァイはこう続けた。
【時間があるなら、ユニークモンスターを倒しにいこうぜ!】
ユニークモンスター。ゲームによって色々な呼び方があるが、とどのつまり固有の名前を持った特殊なモンスターのことである。エリアボスであったり、見つけるのが難しかったりなどの様々な特性があり、倒したときに落とすアイテムも特別なものであることが多い。時にはプレイヤー間で奪い合うことにもなるレアな存在だ。
【それはいいが、そいつはどこにいるんだ?】
この世界にもユニークモンスターが存在することは知っていたが、興味が湧かなかったため情報を集めていなかった。
【龍の国の一が武の近くに、林があるだろ? あそこに青い毛玉みたいなユニークモンスターが出たって情報があるんだ、探す価値はあるだろ? 見つからなくてもゴブリンやオークを倒してれば金が貯まるしさ】
――おめでとうピカーシャ……じゃない。これはどう考えても、モンスター達をぶっ飛ばしまくっていたこの前のピカーシャを、誰かが目撃したんだろうな……
【ちなみにそいつの特徴は?】
もしかしたら違うかもしれないという一縷の望みをかけて聞いてみる。
【ああ、モンスターでも何でも見つけ次第倒しまくるってことと、遠距離の敵には弓を使う緑色の何かを生やして攻撃することらしい】
頭痛が痛い。慣用句的には大間違いだが、今の気持ちをあえて言葉で表すなら頭痛が痛い、だ。
間違いなく、この前の自分とピカーシャのことだな。目撃されたにしても近くからではなかったはずだから、元々はっきりした情報ではなかったのかもしれない、そこから伝言ゲーム的に話が捻じ曲がったのだろうか。
【それだけ強いならドロップも期待できるしな、来ないか?】
不毛だな~……今お前は、そのユニークモンスターの正体に話しかけているんだよ。
【よし、行くことにしよう。集合場所を指定してくれ】
【じゃあ、一が武の入り口前で待っていてくれ】
ウィスパーが切れる。絶対に会えないんだがな、そのユニークモンスターもどきには。
「まあいい、行こうか、ピカーシャ」
「ぴゅぴゅ」
一が武前で待つこと数分、ツヴァイを先頭にギルド『ブルーカラー』の面々がやってきた。今日の面子は、ツヴァイ、ミリー、レイジ、エリザ、カザミネのようだな。
「おお、アース。噂では引退したと聞いていたが」
そう言えば、レイジとこうして直接会うのは久々だったな。
「やめてはいないよ、まあ他のプレイヤーと関わりを持たない時間が長かったのは確かなんだけど」
フェアリークィーンやらグリーン・ドラゴンやら、色々とあったからなぁ。ドラゴンさんは丼になりましたが。
「そうだったのですか。今日はよろしくお願いします」
こちらはカザミネの挨拶。
「こちらこそ。それはそうと、武器を大太刀に代えたんだね」
以前のカザミネの武器はバスタードソードだった。和風の名前からしてそうしたいんじゃないかと思っていたが、やはり変更したんだな。
「ええ、予想していたものとは異なっていましたが、やはり刀を使いたかったので」
そりゃ、実装されてよかったな。
「じゃ、早速行こうぜ。どうも俺達以外にも、噂のモンスターを狙ってるPTがずいぶんいるようだしな」
ツヴァイが音頭をとり、PTに入れてもらった後、林へと向かう。その途中、金髪縦ロールことエリザに声をかけられる。
「貴方の頭に止まっている、その青いひよこみたいな子は一体何なのでしょうか?」
レイジやカザミネも「そう言えば……」と目を向けてきた。
「ああ、言っていなかったか。同行者として一緒にいてくれている妖精だよ。契約妖精じゃないから能力を見ることはできないし、命令もできない。お願いはできるけどね」
自分の答えに、ふーん……と、三者三様にピカーシャを眺めている。当のピカーシャはスヤスヤとお昼寝モードのようだ。
「寝てないか?」
レイジがボソッと聞いてくるが「いざってときはちゃんとするから大丈夫だよ」と言っておく。レイジの相棒である土属性のハリネズミは、なんとなくそわそわとしているようだ。いや、レイジのハリネズミだけでなく、PTメンバーの妖精達みんながそわそわしている。これは、お偉いさんがお忍びで視察に来たことに気が付いてしまった一般社員の心情に近いだろうか?
「ミリー、そんな険しい表情をしているのは珍しいけど、どうかした?」
普段はのほほんとしているミリーが、妙な顔でこっちを見ている。
「え~? 険しい表情なんてしていませんよ~?」
そう言って普段の調子に戻るが、だからこそ先ほどの表情が気にかかる。何か重大な問題を見つけたのだろうか……? それとも自分の装備を見られたか?
引っかかる部分はあるものの、雑談をしながら歩く間に、目的地の林に到達。久々に会ったメンバーもいることだし、色々と見せてもらうチャンスかな。
「見つからんなぁ……もう誰かに狩られたのか?」
しばらく散策した後、ツヴァイがいかにも残念そうに呟いた。まあ絶対に見つからんのだがなぁ。本当は、ユニークモンスターの正体と、今まさに一緒にいるんだよ? 体のサイズが大幅に違うだけで……
ちなみに狩りの方は、ここまでにゴブリンPTを三つ、オークのPTを二つ潰している。レイジが挑発系アーツで注意を引き、レイジに群がったモンスターをツヴァイが叩き潰し、カザミネが斬り払う。ミリーは支援を中心に動き、エリザは魔法による高火力遠距離攻撃を担当。そしてモンスターの魔法使いなどを自分が打ち抜いて、できる限り詠唱させずに倒している。
「狩り場としてはおいしいですから、見つからなくても特に問題はないですけどね」
カザミネの言うように、実際、ドロップしたグローを六等分しても十分な収入になるだろう。他にも、ゴブリン達が使っていたと思われる武器や防具がドロップしていて、これらを売ればそれなりの資金になる……いや、金属部分はインゴットに戻すという手段もあるな。鉄が不足している現状なら、そうした方が良いかもしれない。もしかすると面白い結果になるぞ。
「に、してもだ。アース、その弓は何なのだ? この辺のモンスターをあっさり倒すなんて少々異常だぞ? 魔法使いであっても、オーク達はそれなりに体力はあるはずなのだが……」
レイジが首を傾げている。無理もない、まだ出回っていないドラゴン素材で作られたこの【ドラゴン・ボウ】は非常に攻撃力が高い。しばらくしたらもう少し手を入れるつもりなので、更に能力が伸びる可能性もある。
「しばらく見ないうちに大幅に装備が変わっていますね~、その緑の外套もそうですけど~」
ミリーも遠慮なく見てくる。まあ以前会ったときから、色々と変わりすぎているからな……
「やれやれ……弓は偶然取れた新しい素材を使っているからな、試作品でもある。外套は妖精国で売っていたのを買っただけだよ、レンジャーっぽく見えるかなと思ってね」
装備に関する質問は適当に流しておこう。うかつに喋るとボロが出そうだ。
「だからあまり人前に姿を見せなかったということですか……」
カザミネはある程度納得したようだ。
「私のこの大太刀もいろんな材料を集めて作ってもらいましたが、作り方などは秘密ですしね。生産もやっているアースさんには、色々あるのでしょう」
カザミネの説明を受けて、レイジも「そう言えば以前レシピについて教えてもらったな……」と思い出しているようだ。
「おしゃべりは一旦中止、オークの団体さんがいるぞ。数は八だな」
《危険察知》によるサーチにモンスターが引っかかったので注意を促す。さすがに素早く切り替えて戦闘態勢に入る『ブルーカラー』のメンバー達。
「今回も狙撃して向こうの戦力を軽く削りつつ、こちらにおびき寄せる。その後はレイジ、頼む」
レイジが頷く。任せておけという態度が頼もしい。
「始めるぞ、構えてくれ」
そうみんなに告げて、弓を構える。まずは《ホークショット》による狙撃で不意打ち。最初のターゲットは自分と同じ弓使いのオークアーチャーだ。狙いをつけて弓を引く、この一瞬の緊張感が最近は妙に楽しい。狙いは頭……タイミングは……今。
勢い良く放たれた矢は、アーツの恩恵もあって長距離を難なく飛んで行き――狙い通りにオークアーチャーの頭をぶち抜いた。相手はそのまま倒れこんで塵になる。
「狙撃成功、来るぞ!」
こちらに近づくまでに、ある程度数を削っておきたい。次の狙いは魔法使いだ。レイジをはじめタンカーはどうしても金属防具が多くなりがちなので、雷系統の魔法を受けると危険だからだ。
走ってくるオーク達の、ぶれがちな頭ではなく胴体を狙って《アローツイスター》を放つ。当たらなければどんな攻撃だって無意味なのだ。
元々オーク達は八人PTだったが、レイジ達前衛と戦い始めたときには、こちらと同じ六人にまで数を減らしていた。
「相変わらずふざけた弓の腕前ですね、ですが頼もしいですわ!」
エリザがそう言いつつ、魔法の氷柱をオーク達に浴びせる。アレは痛そうだな。氷柱は容赦なくオーク達の体を貫いていった。この攻撃力こそが魔法使いの真骨頂だ。耐久力が削られる分、瞬間火力はやはり魔法使いがトップだな。おまけとばかりに、エリザの妖精であるタツノオトシゴが水を細く打ち出してウォーターカッターのように攻撃する。
レイジに阻まれ、エリザに貫かれて弱ったオーク達を、ツヴァイとカザミネが妖精とのコンビネーションで確実に仕留めていき、今回の戦闘も問題なく完了した。
「うーん、なあアース、やっぱりうちのギルドに来ないか? その弓の腕はぜひ欲しいんだよなぁ」
ツヴァイが再び勧誘してくる。気持ちは分からんでもないがなぁ。
「新しく入ってきた人達も頑張ってはおりますが、ここまでの弓の腕をお持ちの人はまだいらっしゃいませんからね……」
エリザも歯切れが悪そうに言う。
「悪いね」
こちらはこう言うしかない。今や自分は持っているものが物騒すぎて、以前とは別の意味でギルドに参加できない状況になっている。手持ちのドラゴン素材、特に硬いあのクリスタルみたいな素材で大剣なんて作ったら、でたらめに目立ってしまうだろう。作った武器にどんな特殊能力が付与されるかも未知数だ。
「そろそろ一時間半ですね~。戻りましょうか~」
残念そうにミリーが告げてくる。自分も時計を確認してみると、確かに一時間半が経過していた。自分はそろそろログアウトしなければならない。
「目的のモンスターが見つからなかったのは残念だったが、資金的には大きくプラスだったから、まあ良しだな! 引き上げよう」
今回PTリーダーを担当していたツヴァイに従い、みんなで一が武に帰還した。
心の中でこっそり、無駄足と知りつつ放っておいたことを謝っておく。体の大きさが変化するのは反則ですよね、見つかりっこないわ。
【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv17(←2UP) 〈蹴撃〉Lv48 〈遠視〉Lv63(←3UP) 〈製作の指先〉Lv83
〈小盾〉Lv14 〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv64(←1UP) 〈義賊〉Lv40(←3UP)
〈上級鞭術〉Lv5 〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39 〈上級鍛冶〉Lv36 〈薬剤〉Lv43 〈上級料理〉Lv36
ExP21
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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