とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

文字の大きさ
68 / 767
5巻

5-3



  2


(やっぱり後半戦はそんなに甘くはないよな)

 昨日よりも街から足を延ばした途端、これまでより強いゴブリンが襲ってくるようになった。遭遇したのは、ハイ・ゴブリンファイター、ハイ・ゴブリンアーチャー、ハイゴブリンマジシャン、ハイ・ゴブリンプリーストである。本当に、どいつもコイツも厄介なのだ。
 まずファイターはミドルシールドを所持していて、盾でしっかりと身を守りながら距離をつめてくる。ゴブリンは体が小さいため、前面に構えられるとゴブリンの体のほとんどが盾の裏に隠れてしまう。お陰で矢がまともに当たらない。なので貫通力に優れた【ツイスターアロー】で無理やりぶち抜くか、《ソニックハウンドアロー》の振動でダメージを与えるしかなく、どのみち矢やアーツを多用することに繋がってしまうので、消耗が激しい。
 アーチャーはなんと長弓を使用してくるため、射程の点でこちらが負けている。お陰で手痛い先制攻撃を何度も受けることになってしまった。こちらの狩弓の射程に入ったら撃ち合いになるのだが、ハイ・ゴブリンが放ってくる矢の勢いはかなりのものである。回避能力、盾での防御、【ピカーシャの心羽根こころばね】による回避率アップ効果などなど、どれが欠けても苦戦する相手で、距離がある状態での弓攻撃は厄介だと痛感させられた。
 マジシャンは、プレイヤー側も愛用している火魔法を中心に各種属性魔法を放ってくる、魔法攻撃特化のゴブリンだ。魔法、特に爆発する系統は、小盾で防御してもダメージをかなり受ける。そのため回避に失敗すると大ダメージを受ける――はずなのだが、どうやら自分が装備しているドラゴンスケイルシリーズは属性防御能力があるようで、幸い致死の一撃とはならない。それでも痛いことに変わりはないので、必死に魔法を回避する必要があった。
 プリーストは、とにかく回復能力が高い。その上、支援能力と妨害能力も備えている。味方の防御力を上げる、時間経過による回復能力をつけるなんてのは当たり前で、こちらに対し、[鈍足]にする、[毒]を与える、軽度の[麻痺]をつけるなどなど、「お前聖職者プリーストじゃないだろう!」と言いたくなるぐらいえげつない。
 それぞれが単独でも厄介なのに、こいつらが三匹ぐらいでPTを組んでいるとなれば、もうソロの自分では絶対に勝ち目がない。単体でうろついている奴だけ相手にして、二匹以上で行動している場合は逃げの一手に徹した。
 そりゃ、ピカーシャに本来の姿で大暴れしてもらえば無双できるのかもしれないが、それでは自分の経験や修練にはならない。スキル上げというデータ的な意味ではなく、多種多様の相手と戦う経験を重ねて、プレイヤースキルを鍛えなければいけない。だからピカーシャのみならず、武器や防具、そしてアーツの能力に頼り切りになるわけにはいかないのだ。
 自分のように物理攻撃も魔法攻撃も生産も行っていると、システム的な成長の限界点がかなり低い。であるなら、本人の腕を高める必要がある。

「大丈夫かえ? かなり辛そうじゃが?」

 ついて来ている雨龍さんが声をかけてきた。

「キツイな……だけど、その分強くなっているのは間違いないから、問題はないということにしておく……」

 半分やせ我慢ながらも、そう返答する。しかし、矢の残りが少々心許こころもとなくなってきた。相手が強くなったためか安定した体勢で撃てないので、攻撃ミスがかなり目立つために消耗が激しい。帰るときは最悪、全てのモンスターからガン逃げする必要があるかもしれない。
 そうして帰還のタイミングを考えながら歩くうち、立派に手入れされた木がいくつも植えられている林に辿り着いた。同時に、切り株もかなり目立つ。

「そこで止まれ! 何者だ!」

 そんな声が聞こえてきた方向に振り向くと、数名のお役人が刺又さすまたを構えつつ、こちらに近づいてくる。

「ここの木は龍の国により保護指定されている! それ以上近づけば、強制的に排除するぞ!」

 そうか、ここが例の、四が武特産木材の植林地だったのか。

「了解しました、ここから動きません! お役人様、失礼ながらこちらに来ていただけませんか?」

 自分がそう叫ぶと、お役人達は警戒を続けながらゆっくりと歩いてくる。自分は攻撃する意思がないということを示すために、弓と鞭を地面に置く。

「敵意はないようだな。無断伐採者ではない、ということか?」

 お役人の問いかけに対して、素直に頷く。

「私はあくまで修練のために、ゴブリンをはじめとしたモンスターと戦っているだけです。戦いながら歩いていた結果、偶然ここに来たのです」

 お役人達はひそひそと小声で相談した後、こちらに向けていた刺又をゆっくりと下ろした。

「あいわかった。お主の素直な態度と、変に逃げ出さなかった対応をもって信用しよう。だが、近頃ここの良木を盗み出そうとする愚か者が多数うろついているという情報があるのだ。こちらが警戒する事情も察してほしい」

 ここに来たのは偶然だったが、仕事の邪魔をしてしまったか……

「いえ、こちらこそお役人様のお仕事を妨害してしまい真に申し訳ありません。早々に立ち去ります」
「うむ、できればもうここには近寄るな、賊と間違えてしまうかもしれぬゆえな」

 幸い大きな揉め事にならずに済んだのだから、さっさとここを立ち去ったほうがよいだろう。四が武では色々とプレイヤー側がしでかしてしまったようだし、これ以上騒ぎを起こすのは非常にまずい。お役人に頭を下げて街に帰還することにした。
 また間違えて来ないためにも、しっかりと地図に立ち入り禁止区域と記しておく。一刻も早く遠ざかるべく、帰り道での戦闘も最小限に抑えた。

「やれやれ、本当にあちこちで問題が出てきているな」
「木材の買い占めに偽物騒ぎと……面倒じゃのう」

 人のプレイに文句は言えないが……どう動くかで他の人にここまで影響を与えるゲームは珍しい。でもだからこそ、「もう一つの人生」とのサブタイトルに偽りなしということなのか? この先の展開は予想できないな……



【スキル一覧】

 〈風震狩弓〉Lv29(←3UP) 〈剛蹴〉Lv4(←2UP) 〈遠視〉Lv70(←2UP)
 〈製作の指先〉Lv86 〈小盾〉Lv20(←4UP) 〈隠蔽〉Lv46 〈身体能力強化〉Lv74(←1UP)
 〈義賊〉Lv49(←2UP) 〈上級鞭術〉Lv18(←3UP)
 〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
 控えスキル
 〈木工〉Lv42 〈上級鍛冶〉Lv40 〈上級薬剤〉Lv15 〈上級料理〉Lv36
 ExP28
 称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
    妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人難の相
 プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
 同行者:青のピカーシャ(アクア) 〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
     〈風呂好き〉〈???の可能性〉
 同行者:雨龍 〈基本戦闘参加不能〉〈基本戦闘支援不能〉〈基本戦闘妨害不能〉
     〈人型変化可能〉 〈風呂好き〉〈特定質問による凶暴化〉



  3


「今日はどうするのじゃ?」

 翌日のログイン直後、待ちかねていたように雨龍さんが活動方針を聞いてきた。

「そうですね……今日は街を回っておきたいです。少なくとも矢の補充は必要ですし」

 昨日使ったのは一般的な【鉄の矢】ばかりだった。いちいち自作するのも面倒なので、武器屋辺りで買えばいい。昨日の戦闘はちょっと疲れたから、一日ぐらい空けてもいいだろう……

「では、案内してやろうかの」

 素早く身支度を済ませた雨龍さんが立ち上がる。

「で、行き先は盛り場でよいのかの?」
「何でそうなるんですか!」


     ◆ ◆ ◆


「つまらんのー」

 歩いている間、雨龍さんがまだぶつくさ不満を言う。なぜいきなり盛り場なんて言い出したのかと一応質問したら、「男の趣味の一つだろう?」との返答が。
 そういった場はあくまで、相当裕福な人の暇つぶし用なんだよ……冒険者はいつ大金を消費するか分からないのだから、財布の紐はしっかり締めておくほうがいいに決まっている。

「お主の言い分は分かるのじゃが……」

 自分だって伊達に年はとってないのだ。若い頃に一度、のるかそるかの賭けに乗って痛い目を見ている。勢い任せで大金を賭けられるような無謀さはもうない。

「行くなら雨さん一人で行ってくれよ……」

 ジト目でそう言っておく。相手が龍だろうが魔王だろうが、譲れない部分は譲れない。譲っちゃいけない。

「一人で行ってもつまらんのじゃ」

 いいんだよつまらなくて……盛り場にはまり込んで身を持ち崩した奴は、自分の周りにもごろごろいる。本当に魔物だよ、あれは。

「いい加減諦めてくれ。で、武具関連のお店はまだなのか?」
「もう少しじゃ、あの角を曲がれば見えるぞ」

 案内はちゃんとやってくれていたらしい。雨龍さんの言う通り、角を曲がるとそれらしい建物が見えてきた。その横には、やや小さいが鍛冶屋もある。修理依頼を受けやすいよう、連携してあきないを行っているのかもしれない。

「いらっしゃいませ、当店に御用でしょうか?」

 店に近づくと、掃除をしていた丁稚でっちさんが声をかけてきた。

「矢が欲しいのですが、ここでは取り扱っていますか?」
「はい、大丈夫ですよ。各種取り扱っております」

 自分の問いに、こんな返答があった。それを聞いて安心し、店の暖簾のれんをくぐる。

「いらっしゃいませ、矢はこちらになっております」

 外での丁稚さんとの会話を聞いていたのか、中にいた店員がすぐに案内してくれる。

「基本的な木、石、鉄製のものがございます。少々割高ですが、鋼鉄製の矢も扱っております」

 お値段も最初の街ファストなどと変わらない。【鋼鉄の矢】に少々惹かれたが、今回は【鉄の矢】を購入することにした。三〇〇〇本ほど補充したので、しばらくは大丈夫だろう。【鋼鉄の矢】を扱うのは、もう少し腕を上げてから、だな。

「ありがとうございました」

 丁稚さんに見送られて武具のお店を後にする。さてお次は……と考えたところで足が止まった。

「よく考えたら、欲しい物がないな」

 調味料はまだまだ十分余裕があるし、ポーションも数は揃っている。防具はそもそも買う必要がなく……

「ならば今度こそ遊びに行こうではないか!」

 遊びたいんですか雨龍さん。久々に自作のハリセンを取り出し、遠慮なくスッパーン! とひっぱたいておいた。

「ぴゅぴゅぴゅ」

 ピカーシャの鳴き声が上から聞こえる。多分笑っていると思われる。
 それならば、と雨龍さんが改めて提案したのは、のんびりと歩き回りながら出店を冷やかそうというものだった。


     ◆ ◆ ◆


「こういう散歩も悪くないですね」

 いくつか食べ物を買ってつまみつつ、のんびりと出店を見て回る。街で生活している人、働いている人の顔をしっかりと見たのは、もしかしたらこの世界に来て初めてだったかもしれない。

「お、射的があるようじゃの」

 雨龍さんの声に目を向けると、そこには確かに射的の露店があった。景品をコルク銃で撃つのではなく、弓矢で的を射るタイプだ。そういえばこういう店って、江戸時代からあったらしいな。

「やってみてほしいのう」

 まあコレぐらいの遊びならば出費としては可愛いものだからいいか。

「じゃあ、雨さんもやってくれ。こっちだけ恥をかくのも嫌だし」

 雨龍さんは、むう、と可愛らしく唸る。それから「二人で挑戦します」と露店の主人にひと声かけ、三〇〇グローずつ支払う。渡された矢は二本。弓はおもちゃみたいなものだから、やっぱり感覚がかなり違う……当たるかどうかは五分五分かな。

「んじゃ、がんばれよ」

 露店の主人であるおっちゃんがそう声をかけてくれる。ちなみに的中した場合の景品は小さなイヤリングだ。ま、お遊びなんだし値打ち物が出されるわけがない。こういうのは空気を楽しむものだろう。

「では、行くかのう」

 雨龍さんが弓を構えて……矢を放ったけど……すかっ。矢は的の下に落っこちた。

「むう、もう一回じゃ」

 そう言って再び矢を放つが、またもハズレ。矢は左側にそれて落っこちていった。

「ははは、残念だったな」

 主人のおっちゃんの言葉に、ちょっぴり悔しそうな雨龍さん。

「ほれ、次はお主の番じゃ、はようせい」
「にいちゃん、がんばれよ~」

 なぜかニヤニヤと自分を見てくる店主のおっちゃんをスルーして、弓を構える。

(うう~ん、やっぱり普段と感覚が違う)

 あんまり悩んでもしょうがないので、とりあえず一射目……へろへろ~っと飛んだ矢は、ぎりぎり的に届かずに落ちた。

(うーん、あんまり引くと弓がいかれるかもしれないし……)

 弁償なんてゴメンこうむる……遊びなんだからムキになってもしょうがないのだが、やっぱり普段から弓を使っている者としては悔しい一面もある。自分の感覚で引き方を修正しながら、弓が耐えられるぎりぎりと思われるぐらいにおもちゃの弓を引いて……二射目を放った。
 ひゅん……とすっ。
 と、的の下のほうではあるが何とか矢は届き、的に突き刺さった。

「おおっと、コレは参ったな~、にいちゃん、やるねえ」

 商品のイヤリングを取り出しながら声をかけてくる店主のおっちゃん。自分は一応、弓を使って戦うことが本職なので少し悪い気もするが……

「よしよし、ようやった!」

 そんな風になぜか嬉しそうに雨龍さんが言っているので、深く考えないことにした。
 貰ったイヤリングは自分が持っていてもしょうがないので、雨龍さんにプレゼントしておく。まあおもちゃなのだが、記念品にはなるかもしれない。こうして街中でのんびりした後、宿に戻ってログアウト。こういうプレイをする日もあってよいだろう。


 前日のリフレッシュ効果に加えて、今日は現実リアルの仕事も上手く片付いたので調子がいい。

「一昨日とは逆の方向へ足を延ばしてみようか」

 調子がいいときはその勢いに乗ったほうがいい。雨龍さんも特に文句はないようで、すんなり活動方針が決まった。早速街を出て、警戒しながら歩いていくと……僅かにがざがざと足音がする。ぱっと周りを見渡すが何もいない。

(――見えはしないが、間違いなく何かがいる、な)

 《危険察知》には引っかからないが、〈遠視〉で音がしたと思われる方向を凝視すると、微妙ながら景色がゆがんでいる奇妙な場所を見つけた。

(隠れるモンスターはいちたけにもいたが……ゴブリンバージョンか)

 間違いなく〈隠蔽〉をしているモンスター、ゆがんでいる輪郭の大きさからして、恐らくはゴブリン系統だろうと予想をつけて弓を構えた。《危険察知》に引っかからないのは、こちらのスキルLvよりゴブリン側の〈隠蔽〉のレベルが高いからだろう。気に入らないが仕方がない、とっとと引きずり出す。隠れている存在は、明らかにこっちに近づいてきている。その胴体部分に向けて矢を放った。

「ギェヒッ!?」

 大当たりである。矢が突き刺さった痛みで〈隠蔽〉を解除したゴブリンが、転がりながら姿を現した。名前はハイ・ゴブリンアサシンか……偶然音に気がつくことができなかったら、恐らく背後をとられていただろうし、最悪一撃で即死させられた可能性もある。

(こういう手合いは一匹いれば……)

 転がり出てきたゴブリンアサシンに確実にとどめを刺した後、〈遠視〉と《危険察知》を用いて慎重に周りを見渡す。相変わらず《危険察知》には何も引っかからないが……

(一、二、……四か。まずいな、《危険察知》が使い物にならなくなっただけで、これだけ状況把握能力が落ちるのか。仕方ない、今回はピカーシャに頼らなければやられてしまう……)

 隠れる技術を自分も持っていたのに、それをモンスターが使ってくるという可能性を無意識に除外していた自分の失態。だが、気がつくことができた以上、手遅れではない。失敗は反省して今後に繋げればいいだけの話。

「ピカーシャ、二・五メートルモードに! 雨龍さん、すまないがピカーシャに乗って!」

 一旦距離をとって、一匹ずつ始末するしかない。自分の頭から飛び降りたピカーシャは一瞬にして大きくなり、その背中へ自分と雨龍さんが飛び乗る。

「ぴゅー!」
「ほう、これはもふもふじゃのう」

 ゴブリンとはいえアサシンに狙われているのに、のんきな雨龍さん。

「雨龍さん、落とされないでくださいよ!」

 ピカーシャに頼んで、ゴブリン達のいないほうに向かって走り出す。少し走った後、向きを変えて敵が自分の左側に来るように位置取りを調整する。そう、ちょうど流鏑馬やぶさめのような形だ。

(一撃当たれば姿を現すはず。難易度は高いが、高速移動しながら攻撃するにはこの方法が一番有効だ)

 しかしピカーシャは走っているので当然ながら揺れが生じ、狙いがなかなか定まらない。数本矢を射るがことごとく空を切る。それだけではなく、一本撃つごとに体がぐらぐらと揺れる。後ろに乗っている雨龍さんが支えてくれていなければ、間違いなく転落していただろう。
 ゴブリンアサシン達は、こちらを襲うのは諦めて撤収する動きを見せ始めた。このままでは逃がしてしまう。あまり深追いするのはまずいが、せめてあと一匹は倒したい。だが、こんなに狙いが定まらない状態ではそれも無理か。

(やはり無茶だったか! ぶっつけ本番でやることじゃなかった……)

 次々と矢を射掛けるが、ことごとく外れた上に、バランスがどんどん崩れていく。雨龍さんもこれ以上は支え切れそうにないし、ピカーシャも非常に走り辛そうだ。

「ピカーシャ、もういい、これ以上の追跡はやめよう。深追いすれば囲まれるだけだ」

 そう告げると、ピカーシャはすぐさま反転し、街に向かって走り出した。こちらが撤収を始めたことを確認したのか、ゴブリンアサシン達も速度を落としつつ、そのまま引き揚げていく様子である。

「ピカーシャ、すまない……騎乗しながらの射撃がよもやここまで難しいとは……」

 街へ帰る途中で、その背中の上からピカーシャに謝っておく。ピカーシャは戦闘の途中から走る速度を落として揺れを抑えてくれていたのだが、それでも結局は一発も矢を当てられなかったどころか、転落する寸前だった。雨龍さんがいなければどうなっていたことか。

「まあ仕方ないじゃろう、修行もなしにいきなりやってできるほど、簡単なものではないからのう……転げ落ちずに済んだこと、感謝せいよ」

 雨龍さんの慰めと指摘が入る。まあ言われてみればその通りで、騎乗中の射撃技術なんて、それなりの修練を積まなければそうそう身につくものではないだろう。それを今のことで痛感させられた。

「じゃから、しばらくはこの鳥に乗せてもらったまま弓を扱ってみてはどうじゃ? 何事も経験と慣れの積み重ねじゃ、いい修行になると思うがの?」
「ぴゅいぴゅい」

 確かにそれもありだな。人馬一体……という言葉をピカーシャで使っていいのかははなはだ疑問ではあるが、せっかく弓を使っている以上は修練する価値も十分にあるか。あのゴブリンアサシン達を見破る修練も兼ねることもできる、悪くないな。
 ピカーシャも協力してくれる雰囲気を出している以上、この提案に乗ることにしよう。

「そうすることにしましょう、ピカーシャ、それでいいか?」
「ぴゅいぴゅい♪」
「よいぞよいぞ、向上心を忘れてはならぬ」

 どうやらピカーシャも許してくれたようなので、明日からは騎乗しつつの弓攻撃がメインになりそうだ。この際だから、貪欲どんよくに可能性を広げよう。
 今回は一が武周辺で暴れたときとは状況が違う。あのときのピカーシャは、攻撃する際はほぼ静止状態だったし、モンスター達もピカーシャに脅えて動きが鈍かったから矢を当てられた。だが今度はピカーシャはそれなりの速度で走り、モンスターもしっかり構えている。この状態で当てられることができたなら、かなりの強みになりそうだ。
 狩りとしては散々な結果に終わってしまったが……新しい目標が出来た分、無駄にはならなかった。明日も頑張ろうか。



【スキル一覧】

 〈風震狩弓〉Lv31(←2UP) 〈剛蹴〉Lv4 〈遠視〉Lv71(←1UP) 〈製作の指先〉Lv86
 〈小盾〉Lv20 〈隠蔽〉Lv46 〈身体能力強化〉Lv75(←1UP) 〈義賊〉Lv50(←1UP)
 〈上級鞭術〉Lv18 〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
 控えスキル
 〈木工〉Lv42 〈上級鍛冶〉Lv40 〈上級薬剤〉Lv15 〈上級料理〉Lv36
 ExP33
 称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
    妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人難の相
 プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
 同行者:青のピカーシャ(アクア) 〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
     〈風呂好き〉〈???の可能性〉
 同行者:雨龍 〈基本戦闘参加不能〉〈基本戦闘支援不能〉〈基本戦闘妨害不能〉
     〈人型変化可能〉 〈風呂好き〉〈特定質問による凶暴化〉

感想 4,971

あなたにおすすめの小説

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。