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塔に呼ばれた理由
それはまるで、安全装置など一切ない絶叫マシンに三時間ほど振り回されて、命があった事に対して信じられない状態とでも言えばいいのだろうか……脳みそも状況を理解できておらず、そんな変なたとえを考えるような事ばかり行ってしまっている。それでも扉があるならば開けて先に進むしかないだろう。三回深呼吸をしてから扉を開けようと扉に力を籠めるとあっけなく開いた。
しかし、開いた扉から猛烈な光があふれだした。当然目を閉じるがそれでも眩しすぎるので後ろを向く。これで何とか我慢できる明るさになった──その明るさも徐々に落ち着き、何とか目を開けられるようになった。そして自分は見た、全てが真っ白な世界という物を。
(生えている木も、いくつか置いてあるテーブルや椅子も、そして地面に至るまですべてが真っ白だ……ここまで真っ白だと、凄まじく奇妙だな)
地面を軽く叩いてみると、石のような感触が返ってくる。木にも触ってみたが、こちらは間違いなく植物だ。だが、ここまで真っ白な植物は見た事が無い。白樺よりも真っ白で、付けている葉っぱもすべて真っ白なのだ。ちぎらずそっと触れてみたが、その感触はリアルの葉っぱと同じ。ただ色が真っ白なだけで。
この場所について調べていると、足音が聞こえてきた。なのでこちらもこの場の詮索を止めて足音がする方向に振り向く。そこには一人の女性がこちらに向かって歩いてきている様子がうかがえた。その女性の姿だが……膝あたりまで伸びている長い銀髪を靡かせ、頭部には金色に輝き、中央にダイヤモンドと思わしき宝石がはめ込まれたサークレットを身に着けている。
胴体には金色に輝く鎧を身に着けている。が、あの形は……記憶が正しければ、古代ローマ時代に兵士が使っていた板金鎧のような物だ。ロリカ、とか言ったかな? さらに鎧に付けられている首元などに付属している布地は白だ。その一方で足元の装備はチェインレガースと思わしきものでなんというか統一感がない。いっそ全身を古代ローマ装備で統一すれば見栄えもするしよかったのに、とも思う。
ま、当時のローマでもメインで使われたのはチェインメイルらしいし……あれこれ考えてもしょうがないか、とも思う。彼女には彼女の考えがあるんだろうしな。なお、顔立ちはややヨーロッパ系の顔立ちと言った感じがする。美人ではあるのだが、アジア系よりもヨーロッパ系と言った方がしっくりくる。
なお、武器は一切身に着けていない。もちろん見えない所に暗器として持っている可能性はあるが、パッと見た限りでは確認できない。戦意もないし、いきなり襲い掛かってくる可能性はたぶんないだろう。もちろん油断はしちゃいけないが。そんな彼女が近くまでやってきて口を開いた。
「ようこそいっしゃいました。私はこの塔の主であり……創造主からこの世界の管理を引き継ぐことが決められている存在です。安直ですが、この世界に限っては女神、そう呼ばれることになる存在として生み出されました」
その内容は、こちらの想定外だった。この塔の主、ここまではいい。しかし、この世界を引き継ぐことになるって点は……つまり、ワンモアはサービス終了しても、この世界が消されるわけではないという宣言だ。ただ、何のために? そこは明かされていない。
「女神さま、ですか」「あくまでこの世界に限ってのお話です。他の……皆様からしてみればただの一AIにすぎません」
この存在は、自分自身をしっかりとAIとして認識しているんだな。つまり創造主というのは開発者たちを指していると容易に想像がつく。ならば、いくつか質問をしてみるか。返答が帰ってくるなら聞いておきたい事がいくつもある。
「良く使うかが言っておきたい事がございますが、よろしいでしょうか?」「もちろん、お答えします。こちらの世界──のミリー様を通じて貴方様を呼び出したのは間違いなく私ですから、よっぽどの機密に関わる質問以外はすべてお答えするつもりでした。こちらに腰掛けてください」
椅子をすすめられたので素直に座る。女神となるAIも近くの椅子に腰を下ろした。では、質問タイムを始めるか。
「まず、伺いたい事はなぜ自分をここに呼んだのかという点です。しかも、ミリー……貴方は彼女がどういう存在かを知っている様子もありましたし、この疑問を最初に解消したい」
自分の言葉に、女神はゆっくりと頷いて口を開き始める。
「はい、ミリー様を通じてアース様に塔に登って欲しいと願ったのは私がこの塔を作った理由に直結しているからです。私がこの塔を作り出した理由ですが、私はこの世界を女神として管理していくべく、様々な事を学びました。その学びの中にはワンモアの歴史だけでなくあなた方人類の歴史も含まれています」
そんな出だしから始まり、女神が学んだ様々な事を教えてもらった。だが、その学びを得ていくうちに女神は一つ、どうしても紙の上、電子の上では学びきれない事に行き当たったのだという。
「それは、なんなのでしょうか?」「それは、人の意地、という物です。どんなに周囲から笑われても、不可能だと罵られても、絶望的な状態だと言われてもなお諦めない人がいた。立ち上がる人がいた。戦い抜いた人がいた。その熱は、いくら情報を集めても私が感じ取る事は出来なかったのです。しかし、それを学ばずにこの世界を運営していく事は良くない事であるという判断を私は下していました」
歴史の偉人となった人達は、そう言った苦難から逃げ出さずに立ち向かった人が多い。周囲から冷たくされて、笑われて、時には暴行まで受けて。でも、そこで折れず曲がらず歩き続けた事により新しい未来を掴んだ。特に発明家にはそう言った境遇が多い。変わり者、気狂いなどと罵られながらも諦めずに信じた道を進んだ先に実績を上がて正しさを証明する。
が、それを学ぶためになぜ自分を呼ぶことに繋がったのか、そこが分からない。人の意地を学びたいなら、ガッツにあふれているプレイヤーを呼んで戦えばいいのではないだろうか? わざわざ自分を選ぶ理由にはならないだろう。そんなこちらの考えはそうてないとばかりに、女神の話は続いた。
「そして、アース様を呼ぶに至った理由についてお話いたします。私は、ワンモアの歴史を学んだ上でプレイヤーの皆様の行動もすべて見てきました。善行に悪行、欲と貢献、ありとあらゆる事を。その結果、アース様がこの世界に生きる人々に対して一番向き合ってこられた事と知りました。貴方はこの世界の住人を一番本当に存在する命として扱っていた方だったのです。共に喜び、共に笑い、そして何より、失った時には涙を流し怒りを覚えた。これはたかがAIと見ている人では決してみられない行動です」
確かに、そうかもしれない。一番かどうかは横に置いておいて、この世界の住人をたかがAIと考えていなかったことは間違いない。だからこそ、今までの旅の中で様々な出会いを得ることが出来たのだろう。
「そんな貴方なら、私相手であっても『人の意地』を見せてくれるのではないかと私は考えました。他のプレイヤーの皆さんが私の力を前にして、こんなの勝てない、もうやめようなんて投げ出しても貴方なら最後まで立ち上がって戦ってくれるのではないか? この考えにたどり着いたからこそ、ミリー様を通じて貴方様をこの塔に挑んでいただけるようにお願いしたのです」
これはまたずいぶんと買われたもんだ。その期待に応えるのは構わないけれど……
「ですが、出来るでしょうか? 正直に申しあげて、戦闘力ならば自分より上の人が山ほどいらっしゃいます。そういう人達は自分よりも精神的にもタフな事が多いので、彼等に頼んだ方が良いような気がするのですが」
この自分の言葉に、女神は首を振る。
「今回のお願いについては、戦闘力の多寡はあまり関係ありません。精神的に折れない事が一番大事となるでしょう……そしておそらく、最後まで折れないのはアース様であろうと私は見ています。この世界のルールである、殴られたり斬られれば痛みがある状況下で、それでもなお立ち上がってくるのはアース様であると」
精神的に折れない事か。確かに絶望的になったからもう無理だと簡単に投げるのでは、女神が欲する『人の意地』に対する知識を得るには至らないだろう。しかし、まさか自分がミリーを通じてこの塔に呼ばれた理由がこれだとはさすがに想定外だ。最後の戦いはどう考えても軽い物になる事はないな。想定以上に重い頼み事だなぁ……自分に務まるか?
しかし、開いた扉から猛烈な光があふれだした。当然目を閉じるがそれでも眩しすぎるので後ろを向く。これで何とか我慢できる明るさになった──その明るさも徐々に落ち着き、何とか目を開けられるようになった。そして自分は見た、全てが真っ白な世界という物を。
(生えている木も、いくつか置いてあるテーブルや椅子も、そして地面に至るまですべてが真っ白だ……ここまで真っ白だと、凄まじく奇妙だな)
地面を軽く叩いてみると、石のような感触が返ってくる。木にも触ってみたが、こちらは間違いなく植物だ。だが、ここまで真っ白な植物は見た事が無い。白樺よりも真っ白で、付けている葉っぱもすべて真っ白なのだ。ちぎらずそっと触れてみたが、その感触はリアルの葉っぱと同じ。ただ色が真っ白なだけで。
この場所について調べていると、足音が聞こえてきた。なのでこちらもこの場の詮索を止めて足音がする方向に振り向く。そこには一人の女性がこちらに向かって歩いてきている様子がうかがえた。その女性の姿だが……膝あたりまで伸びている長い銀髪を靡かせ、頭部には金色に輝き、中央にダイヤモンドと思わしき宝石がはめ込まれたサークレットを身に着けている。
胴体には金色に輝く鎧を身に着けている。が、あの形は……記憶が正しければ、古代ローマ時代に兵士が使っていた板金鎧のような物だ。ロリカ、とか言ったかな? さらに鎧に付けられている首元などに付属している布地は白だ。その一方で足元の装備はチェインレガースと思わしきものでなんというか統一感がない。いっそ全身を古代ローマ装備で統一すれば見栄えもするしよかったのに、とも思う。
ま、当時のローマでもメインで使われたのはチェインメイルらしいし……あれこれ考えてもしょうがないか、とも思う。彼女には彼女の考えがあるんだろうしな。なお、顔立ちはややヨーロッパ系の顔立ちと言った感じがする。美人ではあるのだが、アジア系よりもヨーロッパ系と言った方がしっくりくる。
なお、武器は一切身に着けていない。もちろん見えない所に暗器として持っている可能性はあるが、パッと見た限りでは確認できない。戦意もないし、いきなり襲い掛かってくる可能性はたぶんないだろう。もちろん油断はしちゃいけないが。そんな彼女が近くまでやってきて口を開いた。
「ようこそいっしゃいました。私はこの塔の主であり……創造主からこの世界の管理を引き継ぐことが決められている存在です。安直ですが、この世界に限っては女神、そう呼ばれることになる存在として生み出されました」
その内容は、こちらの想定外だった。この塔の主、ここまではいい。しかし、この世界を引き継ぐことになるって点は……つまり、ワンモアはサービス終了しても、この世界が消されるわけではないという宣言だ。ただ、何のために? そこは明かされていない。
「女神さま、ですか」「あくまでこの世界に限ってのお話です。他の……皆様からしてみればただの一AIにすぎません」
この存在は、自分自身をしっかりとAIとして認識しているんだな。つまり創造主というのは開発者たちを指していると容易に想像がつく。ならば、いくつか質問をしてみるか。返答が帰ってくるなら聞いておきたい事がいくつもある。
「良く使うかが言っておきたい事がございますが、よろしいでしょうか?」「もちろん、お答えします。こちらの世界──のミリー様を通じて貴方様を呼び出したのは間違いなく私ですから、よっぽどの機密に関わる質問以外はすべてお答えするつもりでした。こちらに腰掛けてください」
椅子をすすめられたので素直に座る。女神となるAIも近くの椅子に腰を下ろした。では、質問タイムを始めるか。
「まず、伺いたい事はなぜ自分をここに呼んだのかという点です。しかも、ミリー……貴方は彼女がどういう存在かを知っている様子もありましたし、この疑問を最初に解消したい」
自分の言葉に、女神はゆっくりと頷いて口を開き始める。
「はい、ミリー様を通じてアース様に塔に登って欲しいと願ったのは私がこの塔を作った理由に直結しているからです。私がこの塔を作り出した理由ですが、私はこの世界を女神として管理していくべく、様々な事を学びました。その学びの中にはワンモアの歴史だけでなくあなた方人類の歴史も含まれています」
そんな出だしから始まり、女神が学んだ様々な事を教えてもらった。だが、その学びを得ていくうちに女神は一つ、どうしても紙の上、電子の上では学びきれない事に行き当たったのだという。
「それは、なんなのでしょうか?」「それは、人の意地、という物です。どんなに周囲から笑われても、不可能だと罵られても、絶望的な状態だと言われてもなお諦めない人がいた。立ち上がる人がいた。戦い抜いた人がいた。その熱は、いくら情報を集めても私が感じ取る事は出来なかったのです。しかし、それを学ばずにこの世界を運営していく事は良くない事であるという判断を私は下していました」
歴史の偉人となった人達は、そう言った苦難から逃げ出さずに立ち向かった人が多い。周囲から冷たくされて、笑われて、時には暴行まで受けて。でも、そこで折れず曲がらず歩き続けた事により新しい未来を掴んだ。特に発明家にはそう言った境遇が多い。変わり者、気狂いなどと罵られながらも諦めずに信じた道を進んだ先に実績を上がて正しさを証明する。
が、それを学ぶためになぜ自分を呼ぶことに繋がったのか、そこが分からない。人の意地を学びたいなら、ガッツにあふれているプレイヤーを呼んで戦えばいいのではないだろうか? わざわざ自分を選ぶ理由にはならないだろう。そんなこちらの考えはそうてないとばかりに、女神の話は続いた。
「そして、アース様を呼ぶに至った理由についてお話いたします。私は、ワンモアの歴史を学んだ上でプレイヤーの皆様の行動もすべて見てきました。善行に悪行、欲と貢献、ありとあらゆる事を。その結果、アース様がこの世界に生きる人々に対して一番向き合ってこられた事と知りました。貴方はこの世界の住人を一番本当に存在する命として扱っていた方だったのです。共に喜び、共に笑い、そして何より、失った時には涙を流し怒りを覚えた。これはたかがAIと見ている人では決してみられない行動です」
確かに、そうかもしれない。一番かどうかは横に置いておいて、この世界の住人をたかがAIと考えていなかったことは間違いない。だからこそ、今までの旅の中で様々な出会いを得ることが出来たのだろう。
「そんな貴方なら、私相手であっても『人の意地』を見せてくれるのではないかと私は考えました。他のプレイヤーの皆さんが私の力を前にして、こんなの勝てない、もうやめようなんて投げ出しても貴方なら最後まで立ち上がって戦ってくれるのではないか? この考えにたどり着いたからこそ、ミリー様を通じて貴方様をこの塔に挑んでいただけるようにお願いしたのです」
これはまたずいぶんと買われたもんだ。その期待に応えるのは構わないけれど……
「ですが、出来るでしょうか? 正直に申しあげて、戦闘力ならば自分より上の人が山ほどいらっしゃいます。そういう人達は自分よりも精神的にもタフな事が多いので、彼等に頼んだ方が良いような気がするのですが」
この自分の言葉に、女神は首を振る。
「今回のお願いについては、戦闘力の多寡はあまり関係ありません。精神的に折れない事が一番大事となるでしょう……そしておそらく、最後まで折れないのはアース様であろうと私は見ています。この世界のルールである、殴られたり斬られれば痛みがある状況下で、それでもなお立ち上がってくるのはアース様であると」
精神的に折れない事か。確かに絶望的になったからもう無理だと簡単に投げるのでは、女神が欲する『人の意地』に対する知識を得るには至らないだろう。しかし、まさか自分がミリーを通じてこの塔に呼ばれた理由がこれだとはさすがに想定外だ。最後の戦いはどう考えても軽い物になる事はないな。想定以上に重い頼み事だなぁ……自分に務まるか?
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