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女神の願い
ここで突如テーブルの上に現れる紅茶と焼き菓子。こういうムーブは神様っぽいね……口に運んでみる、うん美味しい。女神も普通に口に運んでいる。さて、お互いに喉を湿し一息ついたところで話を再開するのかな。
「さて、最後の戦いについて考えられる事ですが。おそらく最初はプレイヤーの皆様の士気も高い事でしょう。ですが、私もあっさり倒されるほどの弱き存在ではありません。それに対して恐らく勝てない、これは無理と判断し徐々に戦列から引いていく事になるでしょう。ですが、そんな姿を私は見たいわけではございません」
まあ、そりゃねえ。そんな姿はこの女神様が見たいと口にした人の意地という物とはかけ離れている物だからね。それが目的ではないのは当然だ。
「無論それでも立ち上がり続ける人はいるでしょう。逸れこそが私が見たいものなのですが……そんな彼等でも、諦めてしまう速度は分かりません。本当に最後まで立ち上がってくれるのか、それとも……ですので、こうしてこの世界の住人に一番誠実に向き合ってきたアース様をこうしてお呼びしたのです。あるお願いを、私から直接するために」
それが、先の発言に繋がるのか。最後まで折れずに立ち上がってくるのが自分であろうと判断して。
「改めてお願いいたします。無理にとは決して言えませんが、どうか最後の最後まで私と戦うのを諦めないでください。この世界の制作に関わった創造主を始めとした多くの方に無理を言って引き延ばしていただいたこの一年を、実りあるものにしたいのです。こちらの我が儘であることは重々承知しておりますが……それでも、何とかお願いできないでしょうか」
あの日、塔を登る前にミリーから正体を明かされてまで伝えられた一件が、こういう形になるとは……この女神さま役になる事を決定づけられたAIがワンモアの終了を告げられてから一年と三か月になる原因だった訳だ。そんな存在から、最後のお願いをされたのであれば……応えたい。
「分かりました……ただ、こちらからもちょっとしたお願いがあります。あ、もちろん最終決戦で優遇しろとか、私達の世界における報酬を用意しろと言った類の話ではありません」
ただ、それに応えるならば──見せたい人々がこのワンモアにはいっぱいいる。各国を回り、様々な知り合いが出来た。そんなみんなに、最後まで立ち上がり続ける自分の姿を見せておきたい。最後に自分がこの世界に残せるものになるのがまさにその姿になるだろうから……
「どういった事でしょう?」「その最後の戦いを、この世界に生きる全ての人が見られるようにして欲しいのです。すでにご存じではあるでしょうが、私もこの世界を旅し、様々な知り合いが出来ました。そんな知り合いたちに、自分の最後の姿を見せておきたいのです。そう、女神様だけではなく、この世界の人々全員に人の意地を見せて終わりたい」
妖精国に始まり、地底や空へも旅をした。今は亡くなった知り合いも多い。でも、生きている知り合いも多い。ならばその生きている知り合いに、最後の人の意地という物を見せておきたい。それが自分が用意できる最後のプレゼントになるだろう。それに、女神だけではなく世界をめぐって繋いできた友が見ているとなれば、より自分を奮い立たせることが出来る。
「分かりました、その願いは聞き入れましょう。確かに、私だけではなく世界の住人皆が見る事で今後の世界は変わるかもしれません。それに、知り合いにこうして戦ったのだという事実を直接見て欲しいという感情は理解できます。当日までに用意を整えましょう」
よし、これでさよなら代わりの挨拶は出来るな。情けない姿を晒す可能性も十分あるが……それでもなお立ち上がる姿もまた、きっと見せることが出来る。その姿を見てくれれば、きっと最後まであきらめずに立ち上がる姿を見せれば何故この塔に自分が挑んだのかを納得してくれる。
「ありがとうございます。その代わり、最後の最後まで立ち上がり諦めずに戦い続ける事を、ここに誓わせていただきます」
願いを聞いてもらったのなら、後はこちらが誠実に向こうの望みである人の意地という物をみたいという願いに応えるだけだ。どんな相手であっても、そこは変わらないし変わってはいけないと自分は考えている。
「ありがとうございます、アースさんの他にも有望な方は一定数いらっしゃいますので、アース様だけが負担を負うと言う事はまずないと思いますけれど……」
ツヴァイ達ブルーカラーの初期メンバー、グラッドパーティはそうそう潰れないだろう。ヒーローチームは塔に挑んでないからいないな、彼等もヒーロー故に諦めず最後まで食い下がる筆頭格なんだが……いないのは残念でならない。そのほか幾人か思い当たる面子はいる。あの人達なら強大な存在が相手であっても最後まで戦い抜くのではないだろうか。
「そうですね、自分よりも強い人達は何人もいます。その人達は、自分以上に戦い抜く可能性は十分高いですよ。女神様を失望させる可能性はまずないと思います」
これは素直な本音だ。思いついたメンバーは、心が弱いと言う事もない。あの面子ならばたとえどんなに女神様が強かったとしても、早々にもう無理だなどの弱音を吐いてさっさと諦めると言う事はあり得ないだろう。だから、自分が例え折れても女神の願いはかなう事になるだろう。
「それを私も望んでいます。人の意地という物はどれほどの熱を持つのか。私に訴えてくる何かがあるのか──それこそが、私が感じたい物なのです。追い詰められてなお、周囲から笑われてなお、立ち上がってくる人が持つ何か。それこそが、資料を山ほど集めて何度も学ぼうとしても学べなかったモノ。是非、それを教えてくれる人が大勢いて欲しいと願っています」
しかし、ここまでして人の意地を学ぼうとするAIってのもまたすごい話だよな、冷静に考えると。資料を山ほど集めて学ぼうとしたというのは誇張でも何でもないだろうし、そう言った勉強の結果人の意地を知りたいという答えを出すのはもはやAIと表現する事すら出来なさそうな……
この手の技術関連には明るくないが、それでもAIがはじき出した答えとしては何というか完全に想定外の話のように感じられる。恐らく開発者も相当に驚いたのではないだろうか。でも、だからこそ応えたくなった。それが、今後多くの知り合いが生きているこの世界が無事に続いていく事に必要な事になる可能性があるのだから。
「他に、自分に対して依頼したい事などはあるのでしょうか?」
この自分の確認には、女神様は首を振った。
「そうですね、名前は出しませんのでインフォメーションを通じてパーティを強制されるエリア以外ではソロで登り切ったプレイヤーが現れましたと流してもよろしいでしょうか?」
そんなインフォメーションしたいのか? うーん、まあ、いいか。多少騒ぎにはなるだろうけど、それぐらいだろうし。
「構いませんよ、名前を出さないのであれば流していただいて結構です」
むしろ、その後にやってくるインフォメーションの方が騒ぎになるだろうからね。明日には白の塔と黒の塔両方制覇したパーティが現れたって流れるんだろうからね。
「ありがとうございます、それから残りの日は自由に過ごしてください。白の塔でも黒の塔でも自由に入って頂いて最後まで己を磨いても良いですし、のんびり過ごしていただいても構いません。最終日にだけ来ていただければ、後は自由ですので」
残り時間は二ヶ月ちょっとか……ほどほどに訓練して、ほどほどにのんびりしていればいいだろう。言われた通り、最終日だけはしっかりと参加しないといけないだろうが。こうして、自分の塔への挑戦は終了した。残された時間では、流石に黒の塔を登り切るのは無理だからね。これで終了となる。
後は準備期間だな。最終日までにできる事をすべてやっておこう。この考えがフラグになっていたのかどうかは分からないが……想定外の方向から、生産に忙しい日々が始まる事になる事などこの時は知る由もなかった。
「さて、最後の戦いについて考えられる事ですが。おそらく最初はプレイヤーの皆様の士気も高い事でしょう。ですが、私もあっさり倒されるほどの弱き存在ではありません。それに対して恐らく勝てない、これは無理と判断し徐々に戦列から引いていく事になるでしょう。ですが、そんな姿を私は見たいわけではございません」
まあ、そりゃねえ。そんな姿はこの女神様が見たいと口にした人の意地という物とはかけ離れている物だからね。それが目的ではないのは当然だ。
「無論それでも立ち上がり続ける人はいるでしょう。逸れこそが私が見たいものなのですが……そんな彼等でも、諦めてしまう速度は分かりません。本当に最後まで立ち上がってくれるのか、それとも……ですので、こうしてこの世界の住人に一番誠実に向き合ってきたアース様をこうしてお呼びしたのです。あるお願いを、私から直接するために」
それが、先の発言に繋がるのか。最後まで折れずに立ち上がってくるのが自分であろうと判断して。
「改めてお願いいたします。無理にとは決して言えませんが、どうか最後の最後まで私と戦うのを諦めないでください。この世界の制作に関わった創造主を始めとした多くの方に無理を言って引き延ばしていただいたこの一年を、実りあるものにしたいのです。こちらの我が儘であることは重々承知しておりますが……それでも、何とかお願いできないでしょうか」
あの日、塔を登る前にミリーから正体を明かされてまで伝えられた一件が、こういう形になるとは……この女神さま役になる事を決定づけられたAIがワンモアの終了を告げられてから一年と三か月になる原因だった訳だ。そんな存在から、最後のお願いをされたのであれば……応えたい。
「分かりました……ただ、こちらからもちょっとしたお願いがあります。あ、もちろん最終決戦で優遇しろとか、私達の世界における報酬を用意しろと言った類の話ではありません」
ただ、それに応えるならば──見せたい人々がこのワンモアにはいっぱいいる。各国を回り、様々な知り合いが出来た。そんなみんなに、最後まで立ち上がり続ける自分の姿を見せておきたい。最後に自分がこの世界に残せるものになるのがまさにその姿になるだろうから……
「どういった事でしょう?」「その最後の戦いを、この世界に生きる全ての人が見られるようにして欲しいのです。すでにご存じではあるでしょうが、私もこの世界を旅し、様々な知り合いが出来ました。そんな知り合いたちに、自分の最後の姿を見せておきたいのです。そう、女神様だけではなく、この世界の人々全員に人の意地を見せて終わりたい」
妖精国に始まり、地底や空へも旅をした。今は亡くなった知り合いも多い。でも、生きている知り合いも多い。ならばその生きている知り合いに、最後の人の意地という物を見せておきたい。それが自分が用意できる最後のプレゼントになるだろう。それに、女神だけではなく世界をめぐって繋いできた友が見ているとなれば、より自分を奮い立たせることが出来る。
「分かりました、その願いは聞き入れましょう。確かに、私だけではなく世界の住人皆が見る事で今後の世界は変わるかもしれません。それに、知り合いにこうして戦ったのだという事実を直接見て欲しいという感情は理解できます。当日までに用意を整えましょう」
よし、これでさよなら代わりの挨拶は出来るな。情けない姿を晒す可能性も十分あるが……それでもなお立ち上がる姿もまた、きっと見せることが出来る。その姿を見てくれれば、きっと最後まであきらめずに立ち上がる姿を見せれば何故この塔に自分が挑んだのかを納得してくれる。
「ありがとうございます。その代わり、最後の最後まで立ち上がり諦めずに戦い続ける事を、ここに誓わせていただきます」
願いを聞いてもらったのなら、後はこちらが誠実に向こうの望みである人の意地という物をみたいという願いに応えるだけだ。どんな相手であっても、そこは変わらないし変わってはいけないと自分は考えている。
「ありがとうございます、アースさんの他にも有望な方は一定数いらっしゃいますので、アース様だけが負担を負うと言う事はまずないと思いますけれど……」
ツヴァイ達ブルーカラーの初期メンバー、グラッドパーティはそうそう潰れないだろう。ヒーローチームは塔に挑んでないからいないな、彼等もヒーロー故に諦めず最後まで食い下がる筆頭格なんだが……いないのは残念でならない。そのほか幾人か思い当たる面子はいる。あの人達なら強大な存在が相手であっても最後まで戦い抜くのではないだろうか。
「そうですね、自分よりも強い人達は何人もいます。その人達は、自分以上に戦い抜く可能性は十分高いですよ。女神様を失望させる可能性はまずないと思います」
これは素直な本音だ。思いついたメンバーは、心が弱いと言う事もない。あの面子ならばたとえどんなに女神様が強かったとしても、早々にもう無理だなどの弱音を吐いてさっさと諦めると言う事はあり得ないだろう。だから、自分が例え折れても女神の願いはかなう事になるだろう。
「それを私も望んでいます。人の意地という物はどれほどの熱を持つのか。私に訴えてくる何かがあるのか──それこそが、私が感じたい物なのです。追い詰められてなお、周囲から笑われてなお、立ち上がってくる人が持つ何か。それこそが、資料を山ほど集めて何度も学ぼうとしても学べなかったモノ。是非、それを教えてくれる人が大勢いて欲しいと願っています」
しかし、ここまでして人の意地を学ぼうとするAIってのもまたすごい話だよな、冷静に考えると。資料を山ほど集めて学ぼうとしたというのは誇張でも何でもないだろうし、そう言った勉強の結果人の意地を知りたいという答えを出すのはもはやAIと表現する事すら出来なさそうな……
この手の技術関連には明るくないが、それでもAIがはじき出した答えとしては何というか完全に想定外の話のように感じられる。恐らく開発者も相当に驚いたのではないだろうか。でも、だからこそ応えたくなった。それが、今後多くの知り合いが生きているこの世界が無事に続いていく事に必要な事になる可能性があるのだから。
「他に、自分に対して依頼したい事などはあるのでしょうか?」
この自分の確認には、女神様は首を振った。
「そうですね、名前は出しませんのでインフォメーションを通じてパーティを強制されるエリア以外ではソロで登り切ったプレイヤーが現れましたと流してもよろしいでしょうか?」
そんなインフォメーションしたいのか? うーん、まあ、いいか。多少騒ぎにはなるだろうけど、それぐらいだろうし。
「構いませんよ、名前を出さないのであれば流していただいて結構です」
むしろ、その後にやってくるインフォメーションの方が騒ぎになるだろうからね。明日には白の塔と黒の塔両方制覇したパーティが現れたって流れるんだろうからね。
「ありがとうございます、それから残りの日は自由に過ごしてください。白の塔でも黒の塔でも自由に入って頂いて最後まで己を磨いても良いですし、のんびり過ごしていただいても構いません。最終日にだけ来ていただければ、後は自由ですので」
残り時間は二ヶ月ちょっとか……ほどほどに訓練して、ほどほどにのんびりしていればいいだろう。言われた通り、最終日だけはしっかりと参加しないといけないだろうが。こうして、自分の塔への挑戦は終了した。残された時間では、流石に黒の塔を登り切るのは無理だからね。これで終了となる。
後は準備期間だな。最終日までにできる事をすべてやっておこう。この考えがフラグになっていたのかどうかは分からないが……想定外の方向から、生産に忙しい日々が始まる事になる事などこの時は知る由もなかった。
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