とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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連載

編纂された年表を読む

 その後もしばらく、有翼人との戦いを皆で振り返った。自分とは異なる視点での振り返りが多数あった事が新鮮で、楽しい話となった。色々と思い出されることもあったから苦い部分もいっぱいあったけど。

「これでまた新しい編纂作業が進みます。そうそう、今はこんな感じで書いているというのをお見せしますね」

 女性プレイヤーが見せてくれたのは、巻物のような形を取っている年表表。β時代から始まり、今までの出来事が事細かく記入されている。

「自分は正式からなので、このβのプレイヤー同士の揉め事だとか問題だとかは立ち会ってないから今初めて知ったという事が多いですね」「そう言えばアースは正式からだったか。是非β時代の弓とかキック系統の使えなさを一度体験してもらいたいぜ」

 そう言った情報があったからこそ、スタート時に弓とかを選んだんだよなぁ。それが今はこうなったのだから、相当調整が入ったのだろうな。

「β時代と言えば、妙に片手剣が強かったんですよね。ダメージが大剣と大差ないダメージが出せて剣を振る速度も速いからDPSが異常に出て……大剣の本体はリーチだけなんて言われ方もしていました」

 なんて情報が女性プレイヤーから出てくる。そりゃ大剣使いは泣くな……大剣の良さであるリーチと火力の内、火力が片手剣と大差ないって随分と酷い話も合ったもんだ。

「まあ使いにくいという訳じゃなかったし、手に馴染んだから俺はβ時代でも大剣使いだったけどな!」

 とツヴァイ。確かにVRとか関係なく、プレイヤーにとって手に馴染む武器を使うのが一番強い。十人中九人がこんな使いずらい武器使えるか! といっても最後の一人にとっては最高の武器だったりするなんて事もある。ここら辺はアクション性のあるゲームあるあるだろう。そんな話をしながら年表を読み進める。

 規模は小さ苦ても重要な出来事も結構多かったんだなぁ。特に街への襲撃をうかがわせる小規模イベントってこんなにあったんですね」「事前に潰されているから、大半の人は気が付かなかっただけですね。実際は結構あったんですよ」

 年表では結構頻繁に各国の町などに襲撃をかけようという動きを見せているモンスター達との戦いが出てきていた。撃退したのはプレイヤーであったり、街に詰めている戦える人々だったり様々だったが。もちろんプレイヤーと街の人の連合で防衛したという記録も多々ある。

「実際自警団プレイをしていた知り合いからは、防衛戦が結構多いから退屈という言葉とは無縁だったって話を聞いたことが何度もあるぜ。どんなプレイでも、完全に生産職として生きてるプレイヤー以外は戦闘が絡むことが結構あったようだぜ」

 とツヴァイからの話も入る。この世界でもう一人の自分として過ごしてきたプレイヤー一人一人にそれぞれの戦いがあり物語があった事を伺わせるな。

「その生産職の方々もかなり苦労されているところがあったようですね。有名なのは龍の国の木材買い占め事件などがあげられますが、他にも希少素材の奪い合いや買いにに来るプレイヤーやこの世界の人々との商談のもつれから流血沙汰なんて事も多くあったそうです。なので、自然と自営をするためにゲームのギルドとは違うシステムの生産職ギルドが成立していたりします」

 これは完全に初耳の話だったが、納得は出来る。親方達もかなりトラブルが多かったことは匂わせていたし、他の生産職の方々もそうだろう。懐かしい話だが、自分がポーションや料理人として行動することが多かった序盤だけ切り取ってみても、面倒な連中が絡んできたりしてたしなぁ。

「生産職を何故か下に見る連中っていますからねぇ。自分も多少生産の心得はあるんですが、揉め事が起きた事がありますし」

 と自分が言葉を発すると、ツヴァイが「そうそう、ずっと前の正式サービスが始まった直後とかあったよな」とツヴァイも思い出しながら頷いていた。だがその後に──

「お前の生産は多少じゃ済まねえだろ。その弓とか盾とか靴の補強具とか純粋な生産職でも作らねえ物が多くあるくせによく言うぜ。更にはダンジョン内でも料理までする奴が、多少とか冗談だろ」

 なんて笑いながら言われてしまった。まあ、これは仕方がないかぁ。そう言われるだけの事をやらかしてきた自覚はある。

「ダンジョン内で料理ですか! それはまた、ファンタジー色が強くてそそられるシチュエーションですね! 大半の方は街で料理を買って、あくまで食べるだけといった感じですね。私もそうでした」

 と女性プレイヤーに言われるがこればっかりは分からない。大半がソロだったし、必要な時は作って振る舞いを行うのが自分のプレイスタイルだっただけから他の人とは比べようがない。でもどこでも料理が出来ると便利だったのよ、いやホントに。

「しかも旨いんだからタチが悪かったな。アースと同行した後に、ギルメンが出来立ての料理食いたいってよく言ってたからな……特にレイジとノーラとロナが。でも流石に戦闘も出来て飯も現地で作れるなんてレアな奴はアース以外には出会えなかったな」

 ツヴァイからレアもの扱いされちゃったよ。そんな言葉を聞くたびに、女性プレイヤーからの視線から感じる圧が強くなる──年表を読むのはいったん中断して、ご飯でも作りますか。小しお腹も減ったし。


「あー、旨いな。しみじみ来るって奴を感じるぜ」「本当に現場で作れちゃうんですね……目の前で作ってもらったので分かるのですが。そして美味しい」

 作ったのはおにぎり三種と豚汁。おにぎりは塩、味噌焼きおにぎり、中にお肉とリドを炒めてしょうゆをベースとしたたれを即興で作って味付けした物を詰めた物。豚汁は一般的な物と大差ないので説明は割愛させてもらう。うん、平均評価が九なので悪くない出来だ。付いた特殊効果はHPとMPの持続回復に加えて満腹度の減りが遅くなるというモノだった。

「お米とかが一瞬で炊けちゃうからこそ出来る方法ですね。リアルだったら絶対無理です」

 料理スキルのアーツ万歳。寝かせる時間とか休ませる時間とか全部吹っ飛ばせるのは最強すぎる。そんなアーツがあるからこそ、こんなことができるのだ。リアルならお米を炊くだけで、洗米から給水、そして炊飯といういくつもの手順が必要なのは皆様ご存じの通り。こんな一瞬で白米をホカホカの炊き上げご飯にできる技術はリアルでも欲しいぞ。

「アースの作る料理はあまり派手じゃないのが多いんだが、こう、旨いんだよな。表現に苦しむんだが」「分かります、食べてみてなんかほっとするんですよね。いろんな方の料理をワンモアで食べてきましたが、そのどれとも違うほっとさせてくれる何かが確かにありますね」

 なんて言っているが、二人の食事のスピードは速い。ツヴァイだけじゃなく女性プレイヤーも次から次へとおにぎりに手を伸ばし、豚汁をガンガンよそって口に運んでいく。結局できた料理の七割五分位を二人が食べたんじゃなかろうか。別に文句を言うつもりはないし、美味しいと言ってもらえるのは嬉しいから良いけどね。

「アース、ごちそうさまだ。伊佐微差に食わせてもらったが本当に美味かったぜ」「私も、こんな風に心が温まるご飯があった事を知れてうれしかったです。少々はしたないと思われるほどに食べてしまいましたが」

 食べ終わった2人からはそんな言葉と、いくばくかのお金を貰った。お金を貰うつもりはなかったんだが、特に女性プレイヤーからは受け取らなきゃダメですと言われてしまった。

「良い物を貰っておいてただで済ませようとする人、私嫌いなんですよ。当然自分もそうなりたくありませんから」

 との事だったので、そう言う事ならと受け取った。さて、お腹も膨れたし年表の続きを読みますか。
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