風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-

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女を黙らせるにはこうするんだろ? 前編 朝乃宮千春SIDE

2/8 その十二

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「……ママ~もうたべられないよ~」

 おやくそくぅううううううううううううううううううううううううう!
 ウチは何度も優しく頭をなでる。
 堪忍な、桜花ちゃん。
 でも、明日は期待してな。
 服もおもちゃも買ってあげるからな~。

 ウチはそっと部屋を出た。
 さて、ウチも明日の準備をせな……って思ったけど、やることがある。

 千石和志。
 黒井はんの情報が本当なら、藤堂はんはバイトが終わった後、襲われる。黒井はんの情報が本当ならやけど。
 黒井はんを疑うわけやない。相手の都合でやめることもある。

 さて、ウチはどうするか?
 『子』に連絡して、藤堂はんに気づかれんようボディガードを頼んでる。
 安全は確保済み。けど、もう一手うっておきたい。
 策は複数ある方がええ。アクシデントに対応するために必須。

 ウチも動くべき?
 けど、夜にまでウチが藤堂はんと一緒にいるのは不自然。
 それなら、タクシーを呼んで帰らせる? バイト先を出たところで千石和志に呼び止められたら終わり。
 バイト先の店長にお願いする? 子供の喧嘩に介入しないって言われる可能性あり。

 一番確実なのは……やっぱり、ウチが行くこと。
 不自然だと思われても、今日ここで仙石グループを潰せば後はどうにでもなる。

 決定。
 すれ違いにならんよう、連絡しとこ。
 けど、その前に……釘をさしておかんと……。
 藤堂はんが暴走せえへんように……。

 ウチはある人物に連絡を入れた。



「……連絡しておいたから」
「おおきに。助かります」

 これで一番の懸念はなくなった。
 その人物に礼を言い、その後、ウチは藤堂はんに連絡した。
 あっ……藤堂はん、バイト中やった。電話に出られへん。
 LINEで連絡すればよかっ……。

「どうした?」

 出た! 出てええんかい!

「……急に迷惑でした?」

 まずい! これはマイナスポイントかも!
 嫌われる……。

「朝乃宮の性格は知っている。普段ならバイトのことで気遣って連絡はしないだろ? 何かあったのか?」

 ほんま……この人は……。
 ウチのこと、理解してくれてる。
 そんなお人やから……ウチは藤堂はんを護りたい。
 どんなことをしても……。

「実は千石和志が今日、藤堂はんのバイト終わりを狙って喧嘩を売ってくる可能性があるんです」
「千石和志が?」

 ごくりっと息をのむ音が聞こえる。
 大丈夫、ウチが護りますさかい……必ず……。

「せやから、ウチ……」
「大丈夫だ」
「えっ?」
「問題ない」

 も、問題ないってどういうこと? 千石和志が襲ってくることを知ってたってこと?
 すでに藤堂はんは手を打っているってこと?

「俺、負けないから」
「ま、負けへんって……」

 まさか、受けてたつ気? それはあかん!
 今、藤堂はんが千石和志とやりあったら……。

「俺のこと、信じてくれないか?」
「信じるって……何を根拠に……」
「俺が朝乃宮を護るって言っただろ? 必ず約束を果たすから……だから、信じてくれ」

 何の根拠にもなってない。不安しかない。
 それやのに……。

「それに朝乃宮が手を出したら、本末転倒だろ? 今度は俺が朝乃宮を護る」
「けど……」
「負ける気がしないんだ。護るべき人がいると力がわいてくるっていうか……誰が相手でも怖くないんだ。だから、大丈夫だ」

 ほ、ほんまこのお人はぁあああああああああああ!
 なんでそう、恥ずかしいこと言えるの! こっちが赤面してまうわ!
 ほんまたちが悪いんわ、それを何の疑いもなく言えてることや! 天然か!
 そんなん言われたら……。

「分かりました。信じてます」

 ウチ、何も出来へん……信じるしかないやん……。
 声もすごく穏やかで、とても喧嘩するようなテンションではない。
 それでも……いつもと違う藤堂はんに、安心感を覚える。

「ありがとな、朝乃宮」
「……その、ウチに出来ることありません?」

 それでも……何かウチも藤堂はんに出来ることをしたい……。
 好きな人の為に……。

「それなら……夜食をお願いできないか?」
「夜食?」
「ああっ、朝乃宮が作る料理が好きなんだ。軽いモノでいいから、頼む」
「……分かりました。はよう帰ってきてな」
「必ず帰る。それと……いや、なんでもない」

 ……。
 す……すきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!

 これって告白! 告白なん! いや、プロポーズ!
 俺の味噌汁を毎朝作ってくれ的な!
 アンタがウチに毎朝作れ♪

 調子狂う! 計画が破綻しそうや!
 リスクが高すぎる!
 昼間は仙石和志との差はそんなになくて五分五分って言った。

 ただ、藤堂はんが千石和志を圧倒するケースもある。けど、それは最も最悪なケース。
 怒りの感情にとらわれ、秋脇のように半殺しにするパターン。

 藤堂はんは激怒すると、理性が吹き飛び、ただひたすら相手を殴る。
 何かストッパーがないと、動けなくなるまで相手を叩きのめす。

 怒ると冷静な判断が出来なくなって実力の半分も出せない……こともなく、逆に藤堂はんはキレると強くなる。
 五感が鋭くなって、御堂はん顔負けの野性的勘が働く。

 それはウチが身をもって知ってる。強はんと青島西中での試合で体験したから間違いない。
 それが一番のリスクやった。負けることではなく、相手を殺すほど傷つける。
 でも……それはもう心配ないと声を聞いて信じられた。

 藤堂はんは……変わろうとしてる。
 それがどう変化するのかは未定やけど、見てみたい。見届けたい。
 藤堂はんのそばにずっといたい……。
 日に日にそう思う。


「今日の千春の運勢は……最高です! 人生最良の日になるでしょう!」


 咲……その占い……外れてます。
 だって、ウチにとって最高は日に日に更新されてますから……。
 藤堂はんと一緒にいるだけで。最良やから……。

 さてと、ウチは明日のことだけ考えよ。
 明日、デートやし! 何着ていこ♪

 んん?
 なんやろ……ウチ、めっちゃ大事なこと、忘れてない?
 ええっと……今、ものすごく大事なこと口にしかけたような……。

 デート? 違う……いえ、デートは大事なんやけど……その後……服……服?
 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 服や! 何着ていこ!
 全く考えなかったわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
 ど、どないしよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 2/9へ続く
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みんなの感想(6件)

放るんと
2023.08.11 放るんと

意思が強い主人公は好きよ

解除
放るんと
2023.08.11 放るんと

ハーレム編のギャグが好き

解除
放るんと
2023.08.10 放るんと

細かいけど一二塁の状況でホームラン打ったら2ランではなく3ランではないでしょうか?

解除

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