風紀委員 藤堂正道 -最愛の選択-

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女を黙らせるにはこうするんだろ? 前編 朝乃宮千春SIDE

2/8 その二

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「おはようございます、朝乃宮姫」
「おはようございます、芝はん」

 咲を巻いて学校に着くと、ウチは早々に『子』である芝はんとコンタクトをとる。
 図書室の奥にある資料室で、ウチが頼んでいた依頼の状況を尋ねる。

「準備は?」
「全ては計画通りじゃ。校長も快う協力していただいとるが……」
「理事長が反対してる?」

 芝はんはやれやれとため息をつく。

「あのお方は生徒想いの教育者じゃけぇ厳罰化は反対しとる。けど、問題ない。根回しは終わっとる」
「ありがとうございます」

 ウチはこの学校にいる全員の『子』にお願いをしていた。
 元々下積みと根回しは済んでいるので、突然のウチの『お願い』でも聞き入れてもらえる。
 その為の寄付金。金ほど人を動かす事が出来る便利なモノはない。

「それにしても朝乃宮姫、やることがえぐいのお。凡人にゃあ思いつかん強攻策かつ傍若無人じゃ。『橘』が黙っとるたぁ思えん」
「……別に、必要だからするだけです。それに『橘』なら対策済みですから」

 そう、必要だからすること……藤堂はんを護る為に……。
 相手が橘でも……身内でも……。

「それでは緊急朝礼のときにまた……」
「よろしゅうお願いします」

 さて、次は生徒会長の氷室はんに話しをつけへんと。
 きっと、渋るし、またウチへの不信感がうまれるやろうけど……説得する。
 面倒やけど、藤堂はんが傷つくことよりははるかにマシで些細なこと。
 ウチは氷室はんに連絡を入れる。



「朝乃宮クン! これはどういうことだい! 聞いてないぞ!」

 案の定、氷室はんは激怒していた。
 生徒会室で氷室はんと瀬名はんに今日の朝礼の事が原因。氷室はんは先生方に話しを聞くまで知らなかった。
 だからこそ、怒ってる。

「聞いてない? 昨日言いましたけど?」
「ほ、本気! 正気の沙汰とは思えない! 仙石グループが黙ってないぞ!」

 仙石グループ。

 青島高校で一番勢力のある不良グループ。青島の生徒なら誰もが口をそろえて言う。
 仙石兄弟を怒らせてはならないと。

 橘はんだけやなく、御堂はんも長尾はんも一目置いている兄弟。
 そんな相手に喧嘩を売って……。

「何か問題でも?」
「も、問題だらけじゃないか! もう後一ヶ月で彼は卒業していなくなる! その後でもいいじゃないか!」

 一ヶ月? 一ヶ月も?
 そんなん……。

「待てません」

 ウチは……藤堂はんが傷つくの、我慢できへん。
 たとえ一秒でも……。
 それなら、すぐに行動する。

「ど、どうして! キミは『朝乃宮』が護ってくれるけど、俺達は……」
「だったら、お願いしてみてはどうです?」

 ウチはそっと氷室はんに伝える。どこに助けてもらえばいいのか……いえ……。

「ど、どうして、それを!」
「『朝乃宮』、ナメてます? もしかして、気づかれてないと思ってました?」

 ウチは知ってる。氷室はんの秘密を……そして……。

「ウチ、忘れてませんから。あんさんがウチにした仕打ちを」
「し、仕打ちって! 俺はキミに何も……」

 ウチはある日付を口にする。氷室はんの顔が真っ青になる。

「氷室はん、知ってますやろ? 『朝乃宮』はたとえ子供相手でも……容赦しません。徹底的に社会的に必ず……抹殺します」

 ごくり、と息をのむ声がする。
 そう、『朝乃宮』はやる。とことんやる。
 理性とか、常識とか、そんなものはない。
 ただ、ひたすら、滅びるまでやる。

「それに、仙石グループは……」

 ウチは手の内を氷室はんに晒す。勿論、奥の手は隠しておくけど。
 それを聞いて、氷室はんは……。

「……ほんと、キミは怖いな……」
「それで? 勿論、ご協力いただけます? もし、手伝ってくれたのなら、あの件は手打ちにしますし、ウチも協力します、橘はんと一緒に。それに先ほどの話しを聞いても、まだ仙石グループが怖いと?」

 氷室はんは苦虫をつぶしたような顔をしてる。
 強引なやり口はしたくなかったけど、これは藤堂はんを護るだけやなくて、他にも目的がある。
 その目的の方がウチの本命。
 悟られてはならない。誰にも……。

「分かった。キミのやりたいようにやればいい俺達も動こう」
「おおきに。愛想尽きました? 自分勝手な女で」
「逆だ。更にキミのことが欲しくなった」

 ほんま、くえへんお人。
 けど、外堀を埋めた。根回しも済んだ。
 橘も長尾も邪魔されんよう手は打ってある。
 後は……。



「なあ、何が始まるんだろうな?」
「寒いのに集めるなよな」
「やっぱり、淫行教師の事じゃねえ?」
「俺もヤリてえ~」
「最低」

 緊急の朝礼として、三年生以外のほぼ全生徒が体育館に集まってる。三年は受験があるので授業がない。

 生徒達はこう思ってるはず。
 なぜ、集められたのか? 憶測をとばしあいながら不安と苛立ちを紛らわそうとしている。

 本当のことを知ったら、皆はんはどう思うやろ?
 ウチは去年の生徒会長の事を思い出す。

 ハーレム騒動。
 ある男子生徒の恋愛トラブルが引き起こした騒動。ただの週刊誌並のゴシップですぐに忘れ去られるって思ってた。

 まさか、橘はんが伊藤はんを庇って辞任したことは驚きやったし、ある種の緊張が高まったけど、ウチにとっても得られるモノは大きかった。
 あの騒動があったからこそ、ウチは生徒会副会長の座を手に入れようと行動した。
 押水元生徒会長は藤堂はんにとっては難敵かもしれへんけど、ウチにとってはブルネレスキの卵。

「おはようございます。本日の朝礼を始めます」

 始まった。
 もう後戻りはできへん。ウチはウチの道を突き進む。

 咲と藤堂はん、ウチ。
 その三人が幸せに過ごせる場所を作るため、『障害』を排除する。

 御堂はんも仙石グループも教師でさえ……ウチの望む学校生活の為なら排除する。
 わずかに残された時間をせめて、儚い夢のような優しい世界に浸るために……ウチがウチらしく生きることが出来た証を最愛の人の心に残すために……。
 その思い出を胸に地獄を生きていく為に……せめて……この学校にいるときだけは……。

「それでは生徒会副会長、朝乃宮千春さんからご説明致します」

 ウチは背筋をピンと伸ばして壇上に向かう。
 藤堂はん……咲……許してな……ウチの我が儘を……。

「生徒会副会長、朝乃宮千春です。まずはこの寒い中集まってくださった生徒、先生方に感謝致します。本日はここにいる皆様に提案とお願いがあります」

 ウチは堂々と生徒に押しつける。
 己の勝手な願いを……。

「我が校の教育方針をご存じでしょうか?『自由な空間と豊かな環境の中、自己啓発じこけいはつうながす』です」

 咲と目が合う。

「私服登校が認められ、他の高校よりもある程度自由が認められている高校ですが、自由を拡大解釈し、周りの生徒に迷惑をかけている生徒達がいます」

 藤堂はんと目が合う。

「その生徒達は器物破損、建造物等損壊、恐喝、暴行といった犯罪行為を繰り返しています。先日も私達生徒会が卒業生に贈る花を踏みにじられました」

 咲……そんな目で見んといて……。

「ボロボロにされた花はフリージア。花言葉は『感謝』。ここにいる皆様の中には部活や委員会等でお世話になった先輩がいると思います。感謝の気持ちを伝えたい、生徒会も同じ気持ちです。そんな気持ちを彼らは踏みにじったのです。その理由は、生徒会長に注意されて腹が立った、と彼らは言っていました」

 藤堂はん……ウチは大丈夫やから……せやから、そんな悲しげで自分を責めるような目で見んといて……。

「そんな理不尽がなぜ許されるのでしょうか? どうして、真面目でフツウに学校生活を送っている生徒が馬鹿を見なければならないのでしょうか? それはこの青島の風土、いえ、この土地に住む不良達が残した『負の遺産』のせいです。不良の聖地。そんなくだらない悪しき流れを……ウチは断ち切ろうと思い、行動に移すことにしました」

 生徒達がざわめき始める。
 先生方が静かにするよう生徒を注意する。

 橘はんは不快感を示している。
 これからやろうとしているのは、橘はんがやってきたことをぶち壊す行為。綿密に行ってきた計画を土足で踏みにじる行為。

 堪忍な、橘はん……あんさんをウチは……許す気ない。
 あんさんは裏切り者や……ウチや藤堂はん、御堂はん、長尾はんを騙していた。
 そのせいで咲と藤堂はんは……。

 ウチはあることが気になって『子』に調査させた。そして、知った。
 この学校に……レッドアーミーのナンバーズが在籍していることを。
 そして、そのナンバーズは……。

「生徒会副会長朝乃宮千春が提案する校則は、不良達の迷惑行為の取り締まりを厳しくし、厳罰化することです。今までは注意や反省文で済ませていた罰を停学、もしくは退学まで引き上げます」

 ざわめきはどんどん大きくなる。

「そして……旧校舎の取り壊しを提案致します」
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