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三章 ここから始まるマイナー転生。マイナ、記憶を取り戻す

エヌべディア王国、第一王女『マイナ』十歳!底辺復活

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 トプン。
 トプン。
 トプン。
 水の音が聞こえる。
 トプン。
 トプン。
「ヴァイガジャダヴァ」

……ん。

「マイガダヴァ」

……んん?

「マイナさま」

 ゆさゆさ。ゆさゆさ。
 ゆさゆさ。ゆさゆさ。
 
 身体を揺すられて、私、いや俺。いや、私は目をゆっくり開ける。
 目を開けるとゴシック調の部屋。そしてメイド服……なんちゃってメイドじゃない。本格的な実務で使うようなメイド服を身にまとった美しい異国の少女……いや、アリア……が私の身体をゆさぶる。

「アリア……?」
「マイナ様、朝ですよ」
 ん……。今何語で話してるんだっけ。
 英語か?私はそんな自然とネイティブで会話できるほど……。



「マイナ様……?どうしたんですか?」
「あ、アリア……?いえ。ちょっと悪い夢を見たのです」
「そうですか。お着換えをお手伝いしますね」
 そう言って、俺をベッドから抱きかかえ、そっとソファへと移す。
「……ん」

 パジャマの前をゆっくりと開きパジャマの背を持ってそっと脱がされていく。
 上下一体のパジャマの下は、何も身につけていなかった。

 女じゃないか……。これだと女の子のハーレム作れないだろうが……!
 そう一瞬考えたが、産まれてきてから女性だったのだ。特に気にすることもないか。
 そう考えて私はアリアから新しい服を着せられていく。

 前世の知識は覚えている。
 だが、マイナとして生活してきた期間が長すぎる。
 こういう弊害もあったか。

 美女ハーレムをと思っていたが、美しいアリアを見ても特に何も感じない。
 たしか、私は今十歳で、アリアは十五歳。
 エキゾチックな整った顔立ちや落ち着いた雰囲気からだろうか。
 前世の時の同年代の女の子よりも、さらに五歳は上に見える。

 みかけただけで小躍りして喜ぶような美少女なのに、私はそれを当然の事だと思い込んでいた。

「お着替えが終わりましたよ」
「ありがとう、アリア」
 食事は家族全員で取る。これが決まりだった。

 アリアに連れられ、部屋を一歩出ると私の部屋の見張り番。兵士が私に膝をつく。
「マイナ様!アリア様!特に異常はありませんでした!」
 ほうれんそう、報告連絡相談がきちんとできてるね。よろしい。

「いつも警備、ご苦労様です。おかげでよく眠れました」
「はい!マイナ様、お気をつけて!」
 警備の人にあいさつをすると、警備兵は嬉しそうに元気よく敬礼した。

「マイナは可愛いから誰かに襲われるかもしれん。警備を常におくべきだろう」
 まだまだ子供だと思うのだが、九歳くらいの頃から部屋に見張りが立つようになった。
 そして、部屋から少し離れた位置で、その見張りの見張りも立っている。
 見張りが良からぬ事をした時に、すぐに取り押さえるためだ。

「ご苦労様です」
 見張りの見張りの見張り。
 見張りの見張りの見張りの見張り。
 そして、お父様やお母様。エヌベディアの王、王妃の私室まで見張りの列は続いている。
 もちろん、対象の見張りを見張るだけではなく持ち場の警備も兼ねているのだが。

 緊急事態を除いて、私の部屋へは入れない。
 アリア、お母様、お父様、お爺様以外が侵入しようとすれば、即刻彼らに取り押さえられる事になる。

 八歳の頃、私の顔を一目見たくて、と乗り込んだ高位貴族の令息は、即捕らえられ領地収入何年分とかいうバカげた額の罰金刑となった。
 当然領地経営できなくなるため、家は取り潰しだ。

「私はみんなから愛されてますね」
「愛されない理由がありませんから」
 アリアは私の問いに首をかしげて、そう答えた。
 
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