魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

文字の大きさ
31 / 43
第2章 ドラゴン襲来編

第31話 弟子志望

しおりを挟む
俺様達は王都中心部にある王宮を去った後、追跡してきた兵士共をエメルの不可視魔法を使い、撒く事に成功した。

追跡を撒いた後、エメル達があらかじめ場所を聞いておいたグレイスが泊まる予定だった宿屋でグレイスと合流。

急遽、宿泊を取りやめたグレイスは宿屋の店主から少し不審に思われつつ、不可視化した俺様達と共に宿屋を後にすることになった。



そしてつい先ほど、不自然なほど無警戒だった王都の大門を抜けて現在はグレイスが住む南のルベリ村へと馬車を走らせていた。





「貴族街で大暴れしたって聞いたがよく無事だったな、アッシュさん」





「ん、あぁ、俺様からしたら大暴れって程の事でもない。魔王軍の魔人と比べればなんてことはない連中だったしな。まぁそれ以前の問題だったが」





王宮へと向かう際に俺様に剣を向けてきたドレアス軍の連中は数こそは多かったが、練度も低く、グレスデン王国のような魔法兵部隊も存在しないのでまるで子供のお遊びのようだった。

アレで世界最強などと言われているのだからやはりこの世界のレベルはかなり低いのだ。

その中ではレイの強さは一線を画しており、他の大国と渡りをつけて準備を整い次第舐めた態度を取ったドレアス王国を叩き潰すつもりでいる俺様としても対悪魔戦を想定した場合外せない戦力と考えている。





「まぁ剣聖はなかなか悪くない」





俺様がそう言うと、グレイスは呆れ顔を浮べながら俺様達が座っている荷台の方に振り向いた。





「そんなこと言えるのはアンタくらいだよ。アッシュさ……って誰だよ!? その子は!?」





グレイスは俺様と向かい合わせに座っているエメルとセラに挟まれている小さな子供へと目を向けそう叫び声ような問いかけに子供の頭を撫でまわしているセラが答えた。





「えへへ、可愛いでしょう? グレイスさん。可愛すぎるので攫ってきちゃいました」





「勘弁してくれよ。人身売買にまで俺を巻き込まないでくれ」





既に色んな事に加担してしまっている事を悟っている貧乏商人グレイスでも流石に人身売買には抵抗があるらしい。

確かに冗談で言っているつもりのセラの笑顔からは事件の匂いしか感じ取る事しかできないが、断じてこれはそんな事件性のある案件ではなく致し方ない理由があるのである。





「このまま親元に返したらあの馬鹿王子の事だ。何をするかわかったもんじゃないからな。あくまで緊急的避難だ」





俺がそう言うと、グレイスはようやくその子供の正体に気付いたのか納得したように呟いた。





「……あぁ、あの時の子供か。確かに危険だな。ルシード王子の事だから意地でも親から子供を取り上げて断罪することもありえる」





「まぁ実際、王城に連れて俺様相手に人質にしたクソ野郎だからな」





「……アッシュさんが王宮で何したかは聞きたくもないが、光景が目に浮かぶよ。あのルシード王子だからな。だが、どうするんだ? アンタらが面倒を見るのか?」





やむなく連れてきたガキだが、このまま親元に返すわけにはいかないので、どこか面倒を見てくれる所に預けるしかない。

まだどの国を目指すか決めていない俺様達だが、小さな子供を連れていくわけにはいかないのだ。



とりあえずグレイスの質問は保留することにして俺様は子供へと視線を向け話しかけた。





「おい、ガキ、名は? 何歳だ?」





「ケイン。12歳です」





これまで声を出さないようにセラに注意を受けていたケインは俺様の誰何にはっきりとした言葉でそう答えた。

あまり大きくなかったので10歳ほどだと思っていたが意外である。





「ケイン、こういう状況だからお前を親元に返すわけにはいかんのは分かるな? 参考までに聞くがお前はどうしたい?」





王都以外で信頼できる親族か知り合いがいるか確認するために俺様はそう尋ねたのだが、ケインはなぜか緋色の大きな瞳を輝かせながら想定外な事を言い出した。





「僕、アッシュさんみたいに強くなりたいです! 僕を弟子にしてください!」





いや、まぁ偉大過ぎる勇者である俺様に憧れてしまうのは分かるが今はそんなことを聞いているのではない。

今の状況分かってんのかこいつ? と思いつつ俺は再度ケインに問う。





「却下だ。ていうかそう言う事を聞いているのではなくてだな。王都以外で親族か知り合いだのはいないのかと聞いている」





「僕は王都から出たことがないので分かりません。それでどうしたら弟子にしてくれますか?」





……頑なだな。だが、残念。俺様は弟子は取らん主義だ。





俺様が心の中でそんな事を思っていると面白がっている表情のエメルと会話中もケインを撫でまわしているセラが口を挟んできた。





「いいじゃない。してあげなさいよ。弟子に」





「そうですよ。こんなに可愛いのですから」





そんな女共2人の援護を受けたケインは期待を膨らませた目で俺様を見る。

途中までは聞いていたグレイスも結果が決まったら教えてくれと言わんばかりに今は馬車の運転に集中していて我関せずと言った感じである。



強引に断る事もできるがこのまま問答を続けるのも面倒になった俺様はケインには分からないように達成不可能な適当な条件をつけて話を切り上げることした。





「分かった分かった。じゃあ明日中に魔法を1つでも習得することができたらその時は俺様の弟子にしてやる」





絶対とは言わないがほぼ不可能な条件だ。

才能があるやつでも1週間、普通なら1か月は魔法の習得には時間がかかると言われている。



そんなことも知らないのかケインは目を更に輝かせた。





「魔法? 剣聖様を倒した時と王子に使ったやつですか?」





「よく分かったな。アレも魔法の一種だが、お前には無理だ。まぁ初心者ならファイヤーボールか? 俺様は忙しいからエメルにでも教えてもらえ」





とりあえずケインの件は保留することにして俺様達はルベリ村へと向かうのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...