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第2章 ドラゴン襲来編
第32話 レクチャー
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夜になり、ランプのみの明かりで薄暗い馬車に揺られながら俺達はルベリ村を目指していた。
王都からルベリ村まではグレイス曰く馬車で6時間ほどかかる場所にあるらしく夕暮れ前に出発したので到着は深夜の12時くらいになるとのことだ。
本来なら獣が活動する夜を避けて午前中に出発するのが基本らしいが、そんなものは偉大なる勇者である俺様にとってはなんのデメリットにもならない。
しいてデメリットを上げるなら今、死ぬほど眠いということくらいだ。
よくよく考えたら俺様は魔王をぶっ倒して、頭のおかしいリティスリティアと戦って、更にドレアス軍とも一戦を交えた訳だが、その間俺様はまったく眠っていないのである。
並の勇者なら魔王をぶっ倒した時点で3日間くらい眠りこけた所で誰からも文句は言われないだろう。
「偉大過ぎる勇者には眠る暇さえないのだろうか?」
「さっさと寝りゃいいじゃない」
「馬鹿言え、こんなガタガタの馬車で眠れるか。只でさえ俺様の繊細なケツは限界なのだ。こんな所で寝たらケツが4つに割れるわ」
そんな俺様とエメルのやり取りを横目にセラはすぴすぴと寝息を立てている。
一番繊細なイメージがある聖女だが、俺様のパーティーにはそんな概念は存在しないようだ。
ちなみにだが俺に文句を垂れたエメルも起きているのには理由があった。
俺への弟子入りに闘志を燃やすケインの小さな手を握りながら出来るわけもない魔法の指導を行っていたのである。
「分かる? 今、私の手からケインの手を伝って流し込んでいるのが魔力。ケインの体の中にも同じ物が流れているはずだからそれをかき集めるイメージをしてみて」
「うー、なんか気持ち悪いです。エメルさんから何かが流れてくるのは分かりますけど、僕の中にそれがあるのかがよく分かりません」
どうやら魔力の存在時代は掴めてきてはいるようだが、自身の体にある魔力を存在を掴めずどう集めればいいのかを理解できないようである。
俺様くらいになれば頭で考えずとも感覚でぽーんとやってしまえるので、エメルの教え方はよく分からん。
「こうやればいいのだこうやれば」
「って、ちょ、おい、アッシュさん!」
俺様は手本とばかりに馬車の側面から勢いよく撃ち出したファイヤーボールにびっくりしたのかうっつらうっつらしていたグレイスが驚きの声を上げる。
そして俺様が撃ちだした1m程の大火球は俺達を追跡し、襲い掛かる隙を窺っていた狼らしき獣に衝突すると断末魔を上げる暇もなく、大きな炸裂音と共に大きな火柱を上げたのだった。
「これがファイヤーボール。冒険者がよく最初に覚える初歩の魔法だ。まぁ初歩の魔法とはいえ見ての通り狼程度だとかなりオーバーキルになるから気を付けろ」
「あ、狼が追って来てたのね。最早原型留めてないからよくわかんないけど。ていうかアレはファイヤーボールじゃないから参考にしなくていいわよ、ケイン」
「魔法って凄いんですね」
狼だった物体が燃え盛る明かりに照らされたケインの赤い瞳は今まで以上の輝きを放っている。
そんなキラキラとしたケインとは対照的にグレイスは訝しむように俺様を見てきた。
「まさか貴族街であんなのぶっ放してないよな……?」
「お前、俺様を大量殺人鬼かなんかと思ってるのか? 俺がやったのは吹き飛ばすかぶっ叩くの2つだけだ」
それでもかなり気を使ったくらいだ。
威力や当たり所が悪ければアレでも死ぬ可能性は十分にある。
あの乱戦の最中多分誰も殺してはいないという認識ではいるがあまり自信はない。
あれ以上の手加減は無理なので死んでたら運がなかったと思ってもらうしかないのが正直な所である。
「……まぁそれならいいが」
よく分かってなさそうだが、とりあえず殺傷力の高そうな魔法は使っていない事を理解したのかグレイスは馬車の操縦へと戻り、俺様がふとエメルとの魔法習得を再開するのかと思っていたケインを見るとなぜかこっちを見つめてきた。
「ん? なんだ? クソガキ」
「師匠は優しいのですね」
「ん? あぁ、そうだな。俺様は偉大過ぎる勇者だからな」
眠いのに当たり前な事を言ってくるケインに俺は適当にそう返すと、ケインは「はい!」と無駄に元気な返事をしてからまたエメルとの魔法習得を開始するのだった。
王都からルベリ村まではグレイス曰く馬車で6時間ほどかかる場所にあるらしく夕暮れ前に出発したので到着は深夜の12時くらいになるとのことだ。
本来なら獣が活動する夜を避けて午前中に出発するのが基本らしいが、そんなものは偉大なる勇者である俺様にとってはなんのデメリットにもならない。
しいてデメリットを上げるなら今、死ぬほど眠いということくらいだ。
よくよく考えたら俺様は魔王をぶっ倒して、頭のおかしいリティスリティアと戦って、更にドレアス軍とも一戦を交えた訳だが、その間俺様はまったく眠っていないのである。
並の勇者なら魔王をぶっ倒した時点で3日間くらい眠りこけた所で誰からも文句は言われないだろう。
「偉大過ぎる勇者には眠る暇さえないのだろうか?」
「さっさと寝りゃいいじゃない」
「馬鹿言え、こんなガタガタの馬車で眠れるか。只でさえ俺様の繊細なケツは限界なのだ。こんな所で寝たらケツが4つに割れるわ」
そんな俺様とエメルのやり取りを横目にセラはすぴすぴと寝息を立てている。
一番繊細なイメージがある聖女だが、俺様のパーティーにはそんな概念は存在しないようだ。
ちなみにだが俺に文句を垂れたエメルも起きているのには理由があった。
俺への弟子入りに闘志を燃やすケインの小さな手を握りながら出来るわけもない魔法の指導を行っていたのである。
「分かる? 今、私の手からケインの手を伝って流し込んでいるのが魔力。ケインの体の中にも同じ物が流れているはずだからそれをかき集めるイメージをしてみて」
「うー、なんか気持ち悪いです。エメルさんから何かが流れてくるのは分かりますけど、僕の中にそれがあるのかがよく分かりません」
どうやら魔力の存在時代は掴めてきてはいるようだが、自身の体にある魔力を存在を掴めずどう集めればいいのかを理解できないようである。
俺様くらいになれば頭で考えずとも感覚でぽーんとやってしまえるので、エメルの教え方はよく分からん。
「こうやればいいのだこうやれば」
「って、ちょ、おい、アッシュさん!」
俺様は手本とばかりに馬車の側面から勢いよく撃ち出したファイヤーボールにびっくりしたのかうっつらうっつらしていたグレイスが驚きの声を上げる。
そして俺様が撃ちだした1m程の大火球は俺達を追跡し、襲い掛かる隙を窺っていた狼らしき獣に衝突すると断末魔を上げる暇もなく、大きな炸裂音と共に大きな火柱を上げたのだった。
「これがファイヤーボール。冒険者がよく最初に覚える初歩の魔法だ。まぁ初歩の魔法とはいえ見ての通り狼程度だとかなりオーバーキルになるから気を付けろ」
「あ、狼が追って来てたのね。最早原型留めてないからよくわかんないけど。ていうかアレはファイヤーボールじゃないから参考にしなくていいわよ、ケイン」
「魔法って凄いんですね」
狼だった物体が燃え盛る明かりに照らされたケインの赤い瞳は今まで以上の輝きを放っている。
そんなキラキラとしたケインとは対照的にグレイスは訝しむように俺様を見てきた。
「まさか貴族街であんなのぶっ放してないよな……?」
「お前、俺様を大量殺人鬼かなんかと思ってるのか? 俺がやったのは吹き飛ばすかぶっ叩くの2つだけだ」
それでもかなり気を使ったくらいだ。
威力や当たり所が悪ければアレでも死ぬ可能性は十分にある。
あの乱戦の最中多分誰も殺してはいないという認識ではいるがあまり自信はない。
あれ以上の手加減は無理なので死んでたら運がなかったと思ってもらうしかないのが正直な所である。
「……まぁそれならいいが」
よく分かってなさそうだが、とりあえず殺傷力の高そうな魔法は使っていない事を理解したのかグレイスは馬車の操縦へと戻り、俺様がふとエメルとの魔法習得を再開するのかと思っていたケインを見るとなぜかこっちを見つめてきた。
「ん? なんだ? クソガキ」
「師匠は優しいのですね」
「ん? あぁ、そうだな。俺様は偉大過ぎる勇者だからな」
眠いのに当たり前な事を言ってくるケインに俺は適当にそう返すと、ケインは「はい!」と無駄に元気な返事をしてからまたエメルとの魔法習得を開始するのだった。
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