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第2章 ドラゴン襲来編
第36話 ドラゴン襲来
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「少し遅いですね」
父上はすぐに文官を寄こすと言っていたのにいつまで経ってもやってこないことを不審に思った私はそう呟いた。
アッシュという戦士がいつまでもドレアス王国に留まっているとも限らないのですぐに文官を派遣すると言ったのは父上の方だというのに。
すると、エミュラが何かに気付いたのか口を開く。
「そういえば先程からちょっと騒がしくないですか?」
「えー、そうですか?」
アイルは気のせいではと言うが確かに言われてみればエミュラの言う通り部屋の外が何やら騒がしい気がします。
何かあってそれで文官の到着が遅れているのかもしれません。
そう思った私は部屋の外の様子をエミュラに確認しに行ってもらおうとその時でした。
突然ノックも無しに部屋へと男が入ってきたのです。
「エ、エリシア様!」
慌てふためいて入ってきたのは父上が私の部屋に寄こすと言っていた文官でした。
どうやらかなり急いでいたのか息が上がり、表情は緊張に包まれています。
「どうしたのですか? 少し外が騒がしいようですが」
私が文官に尋ねると、どうにかむりやり息を整えた文官は私達に言いました。
「そ、それどころではありません! ド、ドラゴンが!」
「ドラゴン?」
確かレイに撃退され、神獣の領域へと逃げ戻ったはずですが今になって戻ってきたという事でしょうか?
確かに由々しき事態ですが、それならば今回もレイが撃退するのかと考えていると文官は悲壮感に包まれた声で続け様に言いました。
「ドラゴンの群れです! 既に王都南部に300体以上が集結しており、今もどんどん増えています!」
「……は? さ、300体ですか?」
2,3体ならいざ知らず300体などという突拍子もない数に私は思わず、文官へと疑いの目を向けてしまいましたが、文官の顔は真剣そのものでした。
そもそも父上が重用するような優秀な文官がこのような時に嘘を吐くなんてことがあるはずがありません。
「レイはどうしたの?」
レイであれば王国の危機に立ち上がらないはずはありません。
ドラゴンが出たというのならば私よりも先にレイに連絡が行っていてもおかしくはないのですから。
そして、私がそう文官に尋ねたその時でした。
「レイという剣聖を出せぇー!!」
そんな大音量の怒りに満ちた女の声が私の頭の中に響き渡りました。
その瞬間、私は300体ものドラゴンが王都までやってきた理由を悟ります。
「300体のドラゴンがたった1体のドラゴンのために報復に来たってこと?」
つまり、レイが撃退したドラゴンがその事を今、大声を上げた女(ドラゴン?)に報告して、その事に激怒した女が300体を超える軍勢を引き連れてやってきた。
現状、レイの名が出てきた以上それしか理由は考えられませんが、そもそもドラゴンは相互に意思疎通ができるものなのでしょうか?
ドラゴンの生態についてよくは知られていませんが、女が人間の言葉を話しているという事から考えればドラゴン同士もそれが可能なのかもしれません。
「父上に会いに行きます」
私はそう宣言し、椅子から立ち上がると、エミュラ達を連れて、父上がいる玉座の間へと戻る事にしました。
本来であれば王の謁見には事前の申請が必要で第一王女である私でも会いたいからと言ってその日に会えるほど気軽に行えるものではありません。
ですが、普段であれば重々しく閉ざされた玉座の間は私が向かった時には扉が開け放たれ、重要な要件であれば誰もが自由に出入りできるようになっていました。
王への安全への危機管理から考えればありえない事態ですがそれほどまでに今は緊急事態だということでしょう。
私は誰に引き留められることなく、玉座の間に入ると既に解散したはずの重臣達とレイ達が集まっていました。
「父上! 先程の声は!?」
エミュラ達を引き連れ、私が玉座の間に入ってすぐに玉座に座る父上へと大きな声を上げると、父上と重臣たちの視線が私へと集中した。
「エリシア、まだいたのか。だが、都合がいい。今、ベルゼスがドラゴンの元へと急行している。ベルゼスが戻るまで其方もここに待機していろ」
私の問いに答えることなく父上はそう言うと、重臣たちとの会話に戻りました。
つまり、今後どうなるかは分からないが、とりあえず軍務長官であるベルゼスを女への交渉を試みるという事なのでしょう。
そして、その交渉次第では私の役目の重大性も大きく変わってくるのかもしれません。
(父上はアッシュという戦士をドラゴン達にぶつける気なの? つまり私の交渉が失敗すればレイは……?)
考えたくはありませんが、レイがこの場にいる事、私をベルゼス様の交渉が終わるまでここに留めておくことから考えればそうなる可能性も高い気がします。
私が王直属親衛隊の傍に立っていたレイへと視線を向けるとレイもこちらへと顔を向けました。
恐らく、その仮面の下では小さな笑みを私へと向けているのでしょう。
白銀の仮面でその表情を目で見ることはできませんが、私には分かります。
そして私達はベルゼス様が女との交渉が終わるまで玉座の間で待機することになりました。
父上はすぐに文官を寄こすと言っていたのにいつまで経ってもやってこないことを不審に思った私はそう呟いた。
アッシュという戦士がいつまでもドレアス王国に留まっているとも限らないのですぐに文官を派遣すると言ったのは父上の方だというのに。
すると、エミュラが何かに気付いたのか口を開く。
「そういえば先程からちょっと騒がしくないですか?」
「えー、そうですか?」
アイルは気のせいではと言うが確かに言われてみればエミュラの言う通り部屋の外が何やら騒がしい気がします。
何かあってそれで文官の到着が遅れているのかもしれません。
そう思った私は部屋の外の様子をエミュラに確認しに行ってもらおうとその時でした。
突然ノックも無しに部屋へと男が入ってきたのです。
「エ、エリシア様!」
慌てふためいて入ってきたのは父上が私の部屋に寄こすと言っていた文官でした。
どうやらかなり急いでいたのか息が上がり、表情は緊張に包まれています。
「どうしたのですか? 少し外が騒がしいようですが」
私が文官に尋ねると、どうにかむりやり息を整えた文官は私達に言いました。
「そ、それどころではありません! ド、ドラゴンが!」
「ドラゴン?」
確かレイに撃退され、神獣の領域へと逃げ戻ったはずですが今になって戻ってきたという事でしょうか?
確かに由々しき事態ですが、それならば今回もレイが撃退するのかと考えていると文官は悲壮感に包まれた声で続け様に言いました。
「ドラゴンの群れです! 既に王都南部に300体以上が集結しており、今もどんどん増えています!」
「……は? さ、300体ですか?」
2,3体ならいざ知らず300体などという突拍子もない数に私は思わず、文官へと疑いの目を向けてしまいましたが、文官の顔は真剣そのものでした。
そもそも父上が重用するような優秀な文官がこのような時に嘘を吐くなんてことがあるはずがありません。
「レイはどうしたの?」
レイであれば王国の危機に立ち上がらないはずはありません。
ドラゴンが出たというのならば私よりも先にレイに連絡が行っていてもおかしくはないのですから。
そして、私がそう文官に尋ねたその時でした。
「レイという剣聖を出せぇー!!」
そんな大音量の怒りに満ちた女の声が私の頭の中に響き渡りました。
その瞬間、私は300体ものドラゴンが王都までやってきた理由を悟ります。
「300体のドラゴンがたった1体のドラゴンのために報復に来たってこと?」
つまり、レイが撃退したドラゴンがその事を今、大声を上げた女(ドラゴン?)に報告して、その事に激怒した女が300体を超える軍勢を引き連れてやってきた。
現状、レイの名が出てきた以上それしか理由は考えられませんが、そもそもドラゴンは相互に意思疎通ができるものなのでしょうか?
ドラゴンの生態についてよくは知られていませんが、女が人間の言葉を話しているという事から考えればドラゴン同士もそれが可能なのかもしれません。
「父上に会いに行きます」
私はそう宣言し、椅子から立ち上がると、エミュラ達を連れて、父上がいる玉座の間へと戻る事にしました。
本来であれば王の謁見には事前の申請が必要で第一王女である私でも会いたいからと言ってその日に会えるほど気軽に行えるものではありません。
ですが、普段であれば重々しく閉ざされた玉座の間は私が向かった時には扉が開け放たれ、重要な要件であれば誰もが自由に出入りできるようになっていました。
王への安全への危機管理から考えればありえない事態ですがそれほどまでに今は緊急事態だということでしょう。
私は誰に引き留められることなく、玉座の間に入ると既に解散したはずの重臣達とレイ達が集まっていました。
「父上! 先程の声は!?」
エミュラ達を引き連れ、私が玉座の間に入ってすぐに玉座に座る父上へと大きな声を上げると、父上と重臣たちの視線が私へと集中した。
「エリシア、まだいたのか。だが、都合がいい。今、ベルゼスがドラゴンの元へと急行している。ベルゼスが戻るまで其方もここに待機していろ」
私の問いに答えることなく父上はそう言うと、重臣たちとの会話に戻りました。
つまり、今後どうなるかは分からないが、とりあえず軍務長官であるベルゼスを女への交渉を試みるという事なのでしょう。
そして、その交渉次第では私の役目の重大性も大きく変わってくるのかもしれません。
(父上はアッシュという戦士をドラゴン達にぶつける気なの? つまり私の交渉が失敗すればレイは……?)
考えたくはありませんが、レイがこの場にいる事、私をベルゼス様の交渉が終わるまでここに留めておくことから考えればそうなる可能性も高い気がします。
私が王直属親衛隊の傍に立っていたレイへと視線を向けるとレイもこちらへと顔を向けました。
恐らく、その仮面の下では小さな笑みを私へと向けているのでしょう。
白銀の仮面でその表情を目で見ることはできませんが、私には分かります。
そして私達はベルゼス様が女との交渉が終わるまで玉座の間で待機することになりました。
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