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第5話
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1
「ふん♪ふふん♪ふふーん♪」
朝の通学路を真白が鼻歌を口ずさみながら歩いてる。
春の青空の下、上機嫌な真白はどこか子供のようだった。
「ずいぶんと機嫌がいいな」
と夜空は言った。
前を歩いていた真白はひらりと振り返り、
「そりゃね」
と言った。
「この2週間、特に告白もなくて平和だったから~」
いつになく真白はニコニコである。
それを見てるとなんとなく夜空も気分が良かった。
2
2人が付き合うふりを始めて2週間が経った。
真白が兄と付き合い始めたという噂は瞬く間に広がって、
今では生徒たちの周知の事実となっている。
夜空の方は最初の頃、周りから嫌味を言われたり
嫌がらせを受けたりすることが多かったのだが、
最近では少しずつそれが減ってきていて、
いつも通りの日常が戻ってきている。
真白の方はご覧の通り、
告白が減ってずいぶん楽しい毎日を過ごせているようだった。
3
「とりあえず目的は達成か?」
と夜空が聞く。
「そうだねー。
あとはこの状況を、卒業まで維持するだけかな!」
「……それってつまり、
卒業するまで付き合ったフリを続けるってこと?」
「お兄ちゃんが嫌じゃなければねー」
と真白が言う。
夜空は少し腕を組んで考えた。
なんとなく今回の真白は本気のような気がした。
OKと言ったら、
本当に卒業まで付き合うふりをしなきゃいけなくなりそうである。
夜空が卒業するまであと2年。
真白が卒業するまであと3年。
それは途方もない年月に思えた。
本当にそれで良いのかな?と不安になる。
けれど、こんなに嬉しそうな真白を見て断ることは
夜空にはできそうになかった。
結局夜空は
「いいよ」
と言った。
すると真白は、ぱっと花が咲いたような笑顔でやったーと喜ぶ。
「さっすがお兄ちゃん!これからも頼りにしてるね!」
「はいはい。わかったよ」
都合がいいなあと思いつつ、夜空は笑った。
4
「それじゃあ、あと不安要素は1つだけかなー」
真白が歩きながら呟いた。
「不安要素?」
と夜空は聞いた。
「そう」
と真白が答えた。
「ほら、ここ最近ずっとさ……」
と言いかけたところで真白は急に表情を変える。
(お兄ちゃん!後ろ!)
夜空の耳元に顔を近づけて、真白はささやいた。
さりげない風を装って夜空は後ろをちらっと見る。
すると、電信柱に身を隠しながら、
サングラスをかけてこちらを確認している女の子がいた。
日野麗だ。
彼女は夜空たちが付き合ったフリを始めてから、
ずっとこんな風にストーカー行為を続けていた。
真白が言っていた不安要素は多分これのことだな、と夜空は思った。
(もう!なんなのあいつ!いつまでこんなこと続ける気なの!)
真白が不機嫌そうに言った。
夜空は前に麗に言われた言葉を思い出す。
確か、偽装カップルの証拠を掴んでやる、とか言ってた気がする。
(まだ俺たちのこと疑ってるってこと、かな?)
夜空の言葉に真白は悲しそうな顔をする。
(そんなに私たちカップルに見えないのかな……)
しばらく考えこんだ後、真白は急に夜空の手を握った。
そして
「今日も愛してるよー。ダーリン♡」
と白々しい笑顔で言った。
そのひきつった笑顔が無言の圧力で
お兄ちゃんもやって。と告げている。
多分、ラブラブカップルを装うことで
麗を諦めさせようという作戦なのだろう。
マジかー、と夜空は思った。
けれど、しょうがないので乗ることにした。
「俺も愛してるぜ!ハニー♡」
そう言って白々しい笑顔で真白の頭を撫でる。
「きゅるるるるーん。ダーリンったら今日もかっこよすぎー!」
「はっはっは。なーに言ってんだ。ハニーのかわいさには敵わないぜ!」
学校に着くまでの間、夜空と真白はそんな奇妙なテンションで
カップルを演じ続けたのだった。
5
「はあ」
恥をしのんで演じ続けた夜空は
何か大事なものを失った気持ちになりながら
教室に入り、自分の席に座った。
少し時間が経ってから、麗も教室に入ってくる。
ちょっと迷ったが、夜空は麗に
「おはよう。麗さん」
と挨拶した。
麗はここ最近で一番の笑顔を夜空に向けて
「おはよう」
と言った。
「ねえ、夜空くん。これ聞いて?」
麗はスマホを取り出して、夜空の耳元に近づける。
『……卒業するまで付き合ったフリを続けるってこと?』
『お兄ちゃんが嫌じゃなければねー』
『……いいよ』
『やったー!さっすがお兄ちゃん!』
スマホからは登校中に夜空と真白が交わした会話の音声が聞こえた。
麗はスマホで口元を隠しながら、ふふふ、と笑い、
「これでもう、言い逃れできないね」
と言った。
やってしまった、と夜空は思った。
外で付き合うふりを続けるだのなんだのと話したのは迂闊だったようだ。
それでも、まさか音声を録音するなんて
そんなガチな行動を取られるとは思っていなかったけれど。
というかこれ、
恥を捨ててラブラブカップル演じたの全部無駄だったんじゃないか?
何だったんだあの時間は。
そんなことを考えていると、
「夜空くん。取引しよう?」
と麗が言った。
「もし、この音声を校内放送で流されたくなかったら、
付き合うふりするのをやめて、
しばらく真白さんと距離を取ってくれないかな?」
「え……?」
結構重い内容だったので夜空はたじろいだ。
「……ちょっと考えさせてほしい」
と夜空は言った。
「いいよ。けど、真白さんには絶対に相談しないでね。
回答期限は……そうだなあ、今日の放課後まででお願いね」
「う、うん。わかった」
夜空はうなづくしかなかった。
「ふん♪ふふん♪ふふーん♪」
朝の通学路を真白が鼻歌を口ずさみながら歩いてる。
春の青空の下、上機嫌な真白はどこか子供のようだった。
「ずいぶんと機嫌がいいな」
と夜空は言った。
前を歩いていた真白はひらりと振り返り、
「そりゃね」
と言った。
「この2週間、特に告白もなくて平和だったから~」
いつになく真白はニコニコである。
それを見てるとなんとなく夜空も気分が良かった。
2
2人が付き合うふりを始めて2週間が経った。
真白が兄と付き合い始めたという噂は瞬く間に広がって、
今では生徒たちの周知の事実となっている。
夜空の方は最初の頃、周りから嫌味を言われたり
嫌がらせを受けたりすることが多かったのだが、
最近では少しずつそれが減ってきていて、
いつも通りの日常が戻ってきている。
真白の方はご覧の通り、
告白が減ってずいぶん楽しい毎日を過ごせているようだった。
3
「とりあえず目的は達成か?」
と夜空が聞く。
「そうだねー。
あとはこの状況を、卒業まで維持するだけかな!」
「……それってつまり、
卒業するまで付き合ったフリを続けるってこと?」
「お兄ちゃんが嫌じゃなければねー」
と真白が言う。
夜空は少し腕を組んで考えた。
なんとなく今回の真白は本気のような気がした。
OKと言ったら、
本当に卒業まで付き合うふりをしなきゃいけなくなりそうである。
夜空が卒業するまであと2年。
真白が卒業するまであと3年。
それは途方もない年月に思えた。
本当にそれで良いのかな?と不安になる。
けれど、こんなに嬉しそうな真白を見て断ることは
夜空にはできそうになかった。
結局夜空は
「いいよ」
と言った。
すると真白は、ぱっと花が咲いたような笑顔でやったーと喜ぶ。
「さっすがお兄ちゃん!これからも頼りにしてるね!」
「はいはい。わかったよ」
都合がいいなあと思いつつ、夜空は笑った。
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「それじゃあ、あと不安要素は1つだけかなー」
真白が歩きながら呟いた。
「不安要素?」
と夜空は聞いた。
「そう」
と真白が答えた。
「ほら、ここ最近ずっとさ……」
と言いかけたところで真白は急に表情を変える。
(お兄ちゃん!後ろ!)
夜空の耳元に顔を近づけて、真白はささやいた。
さりげない風を装って夜空は後ろをちらっと見る。
すると、電信柱に身を隠しながら、
サングラスをかけてこちらを確認している女の子がいた。
日野麗だ。
彼女は夜空たちが付き合ったフリを始めてから、
ずっとこんな風にストーカー行為を続けていた。
真白が言っていた不安要素は多分これのことだな、と夜空は思った。
(もう!なんなのあいつ!いつまでこんなこと続ける気なの!)
真白が不機嫌そうに言った。
夜空は前に麗に言われた言葉を思い出す。
確か、偽装カップルの証拠を掴んでやる、とか言ってた気がする。
(まだ俺たちのこと疑ってるってこと、かな?)
夜空の言葉に真白は悲しそうな顔をする。
(そんなに私たちカップルに見えないのかな……)
しばらく考えこんだ後、真白は急に夜空の手を握った。
そして
「今日も愛してるよー。ダーリン♡」
と白々しい笑顔で言った。
そのひきつった笑顔が無言の圧力で
お兄ちゃんもやって。と告げている。
多分、ラブラブカップルを装うことで
麗を諦めさせようという作戦なのだろう。
マジかー、と夜空は思った。
けれど、しょうがないので乗ることにした。
「俺も愛してるぜ!ハニー♡」
そう言って白々しい笑顔で真白の頭を撫でる。
「きゅるるるるーん。ダーリンったら今日もかっこよすぎー!」
「はっはっは。なーに言ってんだ。ハニーのかわいさには敵わないぜ!」
学校に着くまでの間、夜空と真白はそんな奇妙なテンションで
カップルを演じ続けたのだった。
5
「はあ」
恥をしのんで演じ続けた夜空は
何か大事なものを失った気持ちになりながら
教室に入り、自分の席に座った。
少し時間が経ってから、麗も教室に入ってくる。
ちょっと迷ったが、夜空は麗に
「おはよう。麗さん」
と挨拶した。
麗はここ最近で一番の笑顔を夜空に向けて
「おはよう」
と言った。
「ねえ、夜空くん。これ聞いて?」
麗はスマホを取り出して、夜空の耳元に近づける。
『……卒業するまで付き合ったフリを続けるってこと?』
『お兄ちゃんが嫌じゃなければねー』
『……いいよ』
『やったー!さっすがお兄ちゃん!』
スマホからは登校中に夜空と真白が交わした会話の音声が聞こえた。
麗はスマホで口元を隠しながら、ふふふ、と笑い、
「これでもう、言い逃れできないね」
と言った。
やってしまった、と夜空は思った。
外で付き合うふりを続けるだのなんだのと話したのは迂闊だったようだ。
それでも、まさか音声を録音するなんて
そんなガチな行動を取られるとは思っていなかったけれど。
というかこれ、
恥を捨ててラブラブカップル演じたの全部無駄だったんじゃないか?
何だったんだあの時間は。
そんなことを考えていると、
「夜空くん。取引しよう?」
と麗が言った。
「もし、この音声を校内放送で流されたくなかったら、
付き合うふりするのをやめて、
しばらく真白さんと距離を取ってくれないかな?」
「え……?」
結構重い内容だったので夜空はたじろいだ。
「……ちょっと考えさせてほしい」
と夜空は言った。
「いいよ。けど、真白さんには絶対に相談しないでね。
回答期限は……そうだなあ、今日の放課後まででお願いね」
「う、うん。わかった」
夜空はうなづくしかなかった。
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