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第7話
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1
「お兄ちゃんは、麗さんと付き合いたい?」
真白が眉尻を下げて聞いてくる。
夜空はなんと答えるか考えた。
けれど、正直麗のことは全く意識していなかったし、
いきなり付き合うだのなんだのと言われても上手く考えられない。
夜空としてはそれよりも気になることがあった。
「真白、俺に距離を取られるの怖いって言ってなかったか?
俺が付き合い始めたら、嫌でも距離が離れることになると思うぞ?」
「そりゃもちろん怖いよ。
だって身の回りのこと無償でやってくれる便利な召使がいなくなるんだもん。
でもそれだけだから、そんな重く受け止めなくていいよ」
「便利な召使って……、お前俺の事そんな風に思ってたのか」
ちょっと空しくなりながらも夜空はもう少し考える。
「付き合うフリもできなくなるぞ?告白されるの嫌なんだろ?」
「無理やり引き止めてまで付き合うフリを続けるつもりはないよ。
この関係って私が得してるだけでお兄ちゃんには何もメリットないしね」
「……まあ、言われてみれば確かに……そうなのかもな」
と夜空は今頃になって納得する。
真白と付き合うフリを始めてから
嫌味を言われたり嫌がらせを受けたりすることがときたまあるけど、
それに見合ったリターンがあるかと言われれば、確かになかった。
けれど、なんかモヤモヤする。
ん~、と夜空は唸った。
「別に我慢することないよ?
本当は麗さんと付き合いたいんでしょ?」
真白のその言い方に夜空はちょっとイラっとした。
「なんなんださっきから。
お前、俺と麗さんに付き合って欲しいのか?」
「……」
真白は目を逸らすだけで何も言ってこない。
その反応に夜空はさらにイライラした。
そして勢いのままに
「あーわかったよ!麗さんと付き合うことにする!」
と言ってしまった。
真白はその発言を聞くと、穏やかに笑って
「うん。それがいいよ。おめでとう。お兄ちゃん」
と言った。
昼休みの終了の予鈴が鳴る。
「それじゃ、また家でね」
何事もなかったかのように真白は教室に戻っていった。
2
「やばい。どうしよう……」
午後の授業中、夜空はまたもや頭を抱えていた。
あんなこと言うつもりなかったのに。
麗さんと付き合うとか、今のところ想像もできないし、
上手くやっていける自信もない。
でも、真白にああ言ってしまった手前、
付き合わないわけにもいかなくなってしまった。
夜空はちらっと麗の席を見る。
麗は先生の話を聞かずにぼーっと窓の方を見つめていた。
昼休みの出来事があってから元気がない気がする。
なんとなく話しかけずらい。
とりあえず今日、行動に起こすのはやめておこうかな、と夜空は考えた。
3
学校が終わり、夜空は昇降口で靴に履き替える。
最近は真白が昇降口の前で待っていることがほとんどだったのだが、
今日は姿が見えなかった。
付き合うフリがなくなったので、
もう一緒に帰らなくてよくなったのだろう。
ふん、別にいいさ、と思いながら夜空は外に出ようとした。
すると、
「よ、夜空くん!」
と後ろから声がする。
振り返ると、麗が今にも倒れそうなほど緊張した様子で立っていた。
「きょ、今日は真白さんと帰らないの?」
「……うん。そうだよ」
「へ、へぇ~」
麗がわかりやすく嬉しそうにする。
「じゃ、じゃあさ。私と一緒に帰ろうよ」
「え?」
「い、嫌って言われてもついていくから!」
顔を真っ赤にしながら麗は言った。
強気なセリフとは裏腹に手が震えている。
「うん。わかった」
別に断る理由もないので夜空はうなずいた。
4
「もう、夜空くんには私の気持ちバレちゃってるんだよね」
帰り道の途中で麗は言った。
夜空は反応に困った。
「えーっと。あれは本当なんだよね?」
昼休みに麗が言っていた言葉を思い出して夜空は聞いた。
「本当だよ。私は夜空くんのことが好き」
きっぱりと麗は言い切る。
けれど、言ったあとですぐに目線を下げた。
「でも、夜空くんは真白さんが好きなんだよね」
「……は?」
夜空は一瞬何を言われたのかわからなくて変な声が出た。
頑張って頭を動かして、麗の言葉を自分なりに解釈する。
「えと、好きっていうのはあれだよね?ライクの意味だよね?
そりゃ真白は妹だから、好きだけど……」
「いや、そういう意味じゃなくて女の子として好きでしょ」
「なんでそうなるの?確かに付き合うフリはしてたけど、それだけだよ?
女の子として見たことはないって」
夜空が必死で否定すると、麗は目を輝かせる。
「本当に?」
「うん。ホントホント」
「それじゃあさ……」
麗が少し顔を赤くする。
「わ、私と試しに付き合ってみない?」
言ったあとで麗は目を潤ませながら夜空を見た。
「試し?」
夜空は不思議な提案に首を傾げた。
「うん。そう」
と麗は言った。
「夜空くんが私のこと好きじゃないの、なんとなくわかってるから。
だから、試し。
そんな重く考えなくていいから1回私と付き合ってみてほしいの。
嫌だったら、いつでも解消していいから……」
「……」
まさかここまで麗が譲歩してくるとは思っていなかったので、
夜空は驚いた。
夜空としてはこんなにうまい話はない。
これにうんとうなづけば
それだけで付き合ったことになり有言実行になるし、
上手くいかなかったときの
別れを切り出す心理的ハードルもかなり下がった。
これ以上ないベストな条件だ。
……それなのになぜか、夜空は返事を渋っていた。
困っている夜空を見て麗は
「真白さんと付き合ったフリしたままでも、
私は全然かまわないから。だからお願い……」
と祈るように言った。
「いや、もう真白と付き合ったフリはしてないんだ」
「そ、そうなんだ……。じゃあ、何が嫌なの?
私の顔、好みじゃない?」
ぐいぐいと麗は体を近づけてくる。
麗はクラスでも1位、2位を争うレベルでかわいいと評判だった。
きっと麗自身もその自覚と自信があるからこんな発言をするんだろう。
「いや、そういうわけじゃないけど……」
じゃあ、なんで?と夜空は自分でも問いかけてみる。
考えても考えても、思い浮かぶのは真白の顔だった。
「付き合い始めたら、真白の世話ができなくなるから……」
結局出てきたのはそんな言葉だった。
麗はわかりやすく、ずーんと沈んだ顔をする。
「わかった……」
と言って、それ以降麗は何も話さなくなった。
5
「それじゃ、私こっちだから」
分かれ道が来たところで麗は言った。
「うん。じゃあ、ここで。じゃあね」
と夜空は手を振る。
麗も手を振り返して、2人は分かれていった。
6
家に帰って
リビングに入るとおいしそうなカレーの匂いがした。
キッチンに向かうと、
真白がカレーをぐつぐつ煮詰めていた。
「あ、あれ?どうしたんだ?真白が夕食作るなんて」
と聞くと、
「うん。お兄ちゃんの帰りが遅いから自分で作ろうと思って」
と真白が言った。
「……真白、普通に料理作れたんだな」
「知らなかったの?」
真白がきょとんとした顔で言った。
7
その後、真白は1人で制服からパジャマに着替えて、
1人でお風呂に入り、1人で夕ご飯を食べた。
2人でリビングでくつろいでいるときに、
夜空は我慢しきれなくなって言った。
「なあ真白、お前なんかおかしくないか?」
「何が?」
「麗さんが俺に告白してきてから、明らかによそよそしいじゃんか」
「……別にそんなことないよ」
「いや、そんなことあるだろ。言いたいことがあるならちゃんと言えよ
わけもわからず避けられるこっちの気持ちも考えろよ」
「別に避けてないじゃん」
「避けてるだろ?いつも俺に着替えさせてもらって、俺に体洗ってもらって、
俺に夕食食べさせてもらってたのに、なんで今日は1人で全部やるんだよ」
「だって、お兄ちゃんが麗さんと付き合うって聞いたから。
これからは自分1人で生きていかなきゃって思って」
「……ああ。やめたよ。それ」
夜空は決まりが悪そうに頬を掻きながら言った。
「え!」
真白は驚いた。
「な、なんで?付き合えばいいじゃん!
意味わかんない。私が困るんだけど!」
「何でお前が困るんだよ」
わけがわからず、夜空は聞いた。
「だ、だって……」
真白が泣きそうな顔をする。
「お兄ちゃん、麗さんのこと好きでしょ?」
「は?」
と夜空は声を出した。
なんでみんな人の好きな人を勝手に決めつけるんだ?
と夜空は思った。
「好きじゃないけど」
「でも、これからもアタックされつづけて、
好きにならないって言い切れる?」
「そ、それは……」
夜空は言いよどむ。
ほらね。と真白は言った。
「こんな宙ぶらりんな状態でお兄ちゃんと一緒にいるくらいなら、
いっそお兄ちゃんが今いなくなった方が、私はずっとましだよ」
その言葉を聞いた瞬間、夜空の心はすっと軽くなった。
それはつまり真白が
苦しなるくらい一緒にいたいと思ってくれてるということだと思ったから。
離れようとするのは、その気持ちの裏返しだと思ったから。
「麗さんのことはもう一度きっぱり断るよ。
それで、もう会話はしないことにするし、挨拶も返さないことにする」
夜空は泣いている真白の顔を覗き込んだ。
「だから、またいつもどおりに過ごそう。
俺、真白に必要とされないのが一番辛いんだよ」
真白は両手で顔を隠しながら、
「うん。わかった」
とダミ声で言った。
8
翌朝。
「お兄ちゃ~ん。眠いよ~。学校行きたくないよ~」
夜空がいつも通り真白を起こしに行くと、真白はそんな泣き言を言った。
朝ご飯のテーブルに向かわせようとすると、
「動けな~い。お兄ちゃんおんぶして~」
と言ってくる。
今までにないナマケモノっぷりである。
多分、昨日の夜頑張った分の反動が出ているのだろう。
しょうがない。
今日はわがまま聞いてやるか、と思い夜空は真白をおんぶした。
「うへへ~。お兄ちゃん大好き~」
まだ寝ぼけてるのか、真白が緩み切った口調でそう言ってくる。
夜空は口を緩めながら、真白を運んでいったのだった。
「お兄ちゃんは、麗さんと付き合いたい?」
真白が眉尻を下げて聞いてくる。
夜空はなんと答えるか考えた。
けれど、正直麗のことは全く意識していなかったし、
いきなり付き合うだのなんだのと言われても上手く考えられない。
夜空としてはそれよりも気になることがあった。
「真白、俺に距離を取られるの怖いって言ってなかったか?
俺が付き合い始めたら、嫌でも距離が離れることになると思うぞ?」
「そりゃもちろん怖いよ。
だって身の回りのこと無償でやってくれる便利な召使がいなくなるんだもん。
でもそれだけだから、そんな重く受け止めなくていいよ」
「便利な召使って……、お前俺の事そんな風に思ってたのか」
ちょっと空しくなりながらも夜空はもう少し考える。
「付き合うフリもできなくなるぞ?告白されるの嫌なんだろ?」
「無理やり引き止めてまで付き合うフリを続けるつもりはないよ。
この関係って私が得してるだけでお兄ちゃんには何もメリットないしね」
「……まあ、言われてみれば確かに……そうなのかもな」
と夜空は今頃になって納得する。
真白と付き合うフリを始めてから
嫌味を言われたり嫌がらせを受けたりすることがときたまあるけど、
それに見合ったリターンがあるかと言われれば、確かになかった。
けれど、なんかモヤモヤする。
ん~、と夜空は唸った。
「別に我慢することないよ?
本当は麗さんと付き合いたいんでしょ?」
真白のその言い方に夜空はちょっとイラっとした。
「なんなんださっきから。
お前、俺と麗さんに付き合って欲しいのか?」
「……」
真白は目を逸らすだけで何も言ってこない。
その反応に夜空はさらにイライラした。
そして勢いのままに
「あーわかったよ!麗さんと付き合うことにする!」
と言ってしまった。
真白はその発言を聞くと、穏やかに笑って
「うん。それがいいよ。おめでとう。お兄ちゃん」
と言った。
昼休みの終了の予鈴が鳴る。
「それじゃ、また家でね」
何事もなかったかのように真白は教室に戻っていった。
2
「やばい。どうしよう……」
午後の授業中、夜空はまたもや頭を抱えていた。
あんなこと言うつもりなかったのに。
麗さんと付き合うとか、今のところ想像もできないし、
上手くやっていける自信もない。
でも、真白にああ言ってしまった手前、
付き合わないわけにもいかなくなってしまった。
夜空はちらっと麗の席を見る。
麗は先生の話を聞かずにぼーっと窓の方を見つめていた。
昼休みの出来事があってから元気がない気がする。
なんとなく話しかけずらい。
とりあえず今日、行動に起こすのはやめておこうかな、と夜空は考えた。
3
学校が終わり、夜空は昇降口で靴に履き替える。
最近は真白が昇降口の前で待っていることがほとんどだったのだが、
今日は姿が見えなかった。
付き合うフリがなくなったので、
もう一緒に帰らなくてよくなったのだろう。
ふん、別にいいさ、と思いながら夜空は外に出ようとした。
すると、
「よ、夜空くん!」
と後ろから声がする。
振り返ると、麗が今にも倒れそうなほど緊張した様子で立っていた。
「きょ、今日は真白さんと帰らないの?」
「……うん。そうだよ」
「へ、へぇ~」
麗がわかりやすく嬉しそうにする。
「じゃ、じゃあさ。私と一緒に帰ろうよ」
「え?」
「い、嫌って言われてもついていくから!」
顔を真っ赤にしながら麗は言った。
強気なセリフとは裏腹に手が震えている。
「うん。わかった」
別に断る理由もないので夜空はうなずいた。
4
「もう、夜空くんには私の気持ちバレちゃってるんだよね」
帰り道の途中で麗は言った。
夜空は反応に困った。
「えーっと。あれは本当なんだよね?」
昼休みに麗が言っていた言葉を思い出して夜空は聞いた。
「本当だよ。私は夜空くんのことが好き」
きっぱりと麗は言い切る。
けれど、言ったあとですぐに目線を下げた。
「でも、夜空くんは真白さんが好きなんだよね」
「……は?」
夜空は一瞬何を言われたのかわからなくて変な声が出た。
頑張って頭を動かして、麗の言葉を自分なりに解釈する。
「えと、好きっていうのはあれだよね?ライクの意味だよね?
そりゃ真白は妹だから、好きだけど……」
「いや、そういう意味じゃなくて女の子として好きでしょ」
「なんでそうなるの?確かに付き合うフリはしてたけど、それだけだよ?
女の子として見たことはないって」
夜空が必死で否定すると、麗は目を輝かせる。
「本当に?」
「うん。ホントホント」
「それじゃあさ……」
麗が少し顔を赤くする。
「わ、私と試しに付き合ってみない?」
言ったあとで麗は目を潤ませながら夜空を見た。
「試し?」
夜空は不思議な提案に首を傾げた。
「うん。そう」
と麗は言った。
「夜空くんが私のこと好きじゃないの、なんとなくわかってるから。
だから、試し。
そんな重く考えなくていいから1回私と付き合ってみてほしいの。
嫌だったら、いつでも解消していいから……」
「……」
まさかここまで麗が譲歩してくるとは思っていなかったので、
夜空は驚いた。
夜空としてはこんなにうまい話はない。
これにうんとうなづけば
それだけで付き合ったことになり有言実行になるし、
上手くいかなかったときの
別れを切り出す心理的ハードルもかなり下がった。
これ以上ないベストな条件だ。
……それなのになぜか、夜空は返事を渋っていた。
困っている夜空を見て麗は
「真白さんと付き合ったフリしたままでも、
私は全然かまわないから。だからお願い……」
と祈るように言った。
「いや、もう真白と付き合ったフリはしてないんだ」
「そ、そうなんだ……。じゃあ、何が嫌なの?
私の顔、好みじゃない?」
ぐいぐいと麗は体を近づけてくる。
麗はクラスでも1位、2位を争うレベルでかわいいと評判だった。
きっと麗自身もその自覚と自信があるからこんな発言をするんだろう。
「いや、そういうわけじゃないけど……」
じゃあ、なんで?と夜空は自分でも問いかけてみる。
考えても考えても、思い浮かぶのは真白の顔だった。
「付き合い始めたら、真白の世話ができなくなるから……」
結局出てきたのはそんな言葉だった。
麗はわかりやすく、ずーんと沈んだ顔をする。
「わかった……」
と言って、それ以降麗は何も話さなくなった。
5
「それじゃ、私こっちだから」
分かれ道が来たところで麗は言った。
「うん。じゃあ、ここで。じゃあね」
と夜空は手を振る。
麗も手を振り返して、2人は分かれていった。
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家に帰って
リビングに入るとおいしそうなカレーの匂いがした。
キッチンに向かうと、
真白がカレーをぐつぐつ煮詰めていた。
「あ、あれ?どうしたんだ?真白が夕食作るなんて」
と聞くと、
「うん。お兄ちゃんの帰りが遅いから自分で作ろうと思って」
と真白が言った。
「……真白、普通に料理作れたんだな」
「知らなかったの?」
真白がきょとんとした顔で言った。
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その後、真白は1人で制服からパジャマに着替えて、
1人でお風呂に入り、1人で夕ご飯を食べた。
2人でリビングでくつろいでいるときに、
夜空は我慢しきれなくなって言った。
「なあ真白、お前なんかおかしくないか?」
「何が?」
「麗さんが俺に告白してきてから、明らかによそよそしいじゃんか」
「……別にそんなことないよ」
「いや、そんなことあるだろ。言いたいことがあるならちゃんと言えよ
わけもわからず避けられるこっちの気持ちも考えろよ」
「別に避けてないじゃん」
「避けてるだろ?いつも俺に着替えさせてもらって、俺に体洗ってもらって、
俺に夕食食べさせてもらってたのに、なんで今日は1人で全部やるんだよ」
「だって、お兄ちゃんが麗さんと付き合うって聞いたから。
これからは自分1人で生きていかなきゃって思って」
「……ああ。やめたよ。それ」
夜空は決まりが悪そうに頬を掻きながら言った。
「え!」
真白は驚いた。
「な、なんで?付き合えばいいじゃん!
意味わかんない。私が困るんだけど!」
「何でお前が困るんだよ」
わけがわからず、夜空は聞いた。
「だ、だって……」
真白が泣きそうな顔をする。
「お兄ちゃん、麗さんのこと好きでしょ?」
「は?」
と夜空は声を出した。
なんでみんな人の好きな人を勝手に決めつけるんだ?
と夜空は思った。
「好きじゃないけど」
「でも、これからもアタックされつづけて、
好きにならないって言い切れる?」
「そ、それは……」
夜空は言いよどむ。
ほらね。と真白は言った。
「こんな宙ぶらりんな状態でお兄ちゃんと一緒にいるくらいなら、
いっそお兄ちゃんが今いなくなった方が、私はずっとましだよ」
その言葉を聞いた瞬間、夜空の心はすっと軽くなった。
それはつまり真白が
苦しなるくらい一緒にいたいと思ってくれてるということだと思ったから。
離れようとするのは、その気持ちの裏返しだと思ったから。
「麗さんのことはもう一度きっぱり断るよ。
それで、もう会話はしないことにするし、挨拶も返さないことにする」
夜空は泣いている真白の顔を覗き込んだ。
「だから、またいつもどおりに過ごそう。
俺、真白に必要とされないのが一番辛いんだよ」
真白は両手で顔を隠しながら、
「うん。わかった」
とダミ声で言った。
8
翌朝。
「お兄ちゃ~ん。眠いよ~。学校行きたくないよ~」
夜空がいつも通り真白を起こしに行くと、真白はそんな泣き言を言った。
朝ご飯のテーブルに向かわせようとすると、
「動けな~い。お兄ちゃんおんぶして~」
と言ってくる。
今までにないナマケモノっぷりである。
多分、昨日の夜頑張った分の反動が出ているのだろう。
しょうがない。
今日はわがまま聞いてやるか、と思い夜空は真白をおんぶした。
「うへへ~。お兄ちゃん大好き~」
まだ寝ぼけてるのか、真白が緩み切った口調でそう言ってくる。
夜空は口を緩めながら、真白を運んでいったのだった。
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