17 / 192
第一章 ハジメマシテ、【犯罪者】
Episode 15
しおりを挟む--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス
■【リッパーA】ハロウ
「よし、ここら一体はある程度片付いたわね」
「あは、レベルも上がったし良いイベントだねぇ。……っと、急がないと他の区画の連中が来ちゃうかもなんだっけ?」
「まぁ今すぐにとはならないだろうけど。他のプレイヤーも行っちゃったし、私達も後を追いかけましょうか」
私達がある程度ヘイトを稼いでいたからなのかどうなのか。
この場に居たプレイヤーは喫茶店の前へと集まってくるゾンビやゴーレムたちを私達へと任せ、先にダンジョンに向かっていった。
勿論それぞれ断りを淹れながら向かっていったし、私達も私達でヘイトを稼いだままダンジョン前へと向かうような一種のトレイン行為はしたくなかったため問題ない。
……正直、経験値も素材も美味しかったしね。
「どう?スキルは覚えたかしら?」
「うーん、まぁまぁかな。ちょっと次辺りに試しで使っていくことにするよ」
「了解、個人系?」
「個人系」
パーティメンバー全員でダンジョンへ向かって移動を開始し、少し経った後。
進行上にいるゾンビやらゴーレムやらを倒しつつ、適当に会話する。
といっても、話題はやはりランクアップしたCNVLの【犯罪者】だろう。
「でもそうだねぇ……」
「何か問題でもあった?」
「いや、私が何個かスキルを覚えたのは良いんだけど、その中の1つが厄介でね」
【人体蒐集家】。
【人革】がドロップする【ゲイン】のスキル【人革採集】の上位互換的スキルらしい。
効果としては、部位破壊……腕や足を切ってから倒した場合、そのまま腕や足がドロップするパッシヴスキルとのこと。
気になったので、アイテムとして腕を出してもらった。
「うわ、これはまたそのまんま……」
『ヒェッ……(;´Д`)』
「先輩、そういうのは流石にモザイク入れたほうが良いと思いますよ。その、なんというか倫理?とかそういう奴的に」
「おいおい、出してってリクエストしてきたのは君達だぜ?」
そう言いながら苦笑いしつつ、再びインベントリ内へと仕舞ってくれた。
「で?それがどう厄介なのよ」
「いや、単純にコレ解体しないと【人革】や【人骨】として使えないんだよね。しかも解体するのにもスキルが必要っぽくてねぇ……」
「……あー、成程。考えないで部位破壊しちゃうとどんどんアイテムとして貯まっていっちゃうのね」
「それは面倒ですね」
実際、必要になるスキル自体はすぐに手に入るのだろう。
今のCNVLのレベルがどれくらいかは知らないが、それこそそれっぽいアイテムさえ作れば疑似的にそのスキルは得られそうなものだ。
といっても、今そのアイテムを作っている時間があるかと言われれば無いのだが。
暫くして。
ダンジョン前に辿り着いた私達を迎えたのは、スキニット率いる5人のプレイヤーのパーティだった。
彼らは私達の姿を見つけると、そのまま近くにいたゾンビ達を蹴散らしながらこちらへと近づいてくる。
「来たか」
「他のプレイヤーたちは?」
「もう中に入ってる。元々この辺に居たプレイヤーたちも中に居るから、結構な数入ってるんじゃあないか?」
どうやら周辺にいたプレイヤーの中では私達のパーティが一番最後だったらしく。
一応新しくダンジョンから出てきているアクターゾンビやフリューブックをある程度倒した後、私達のパーティも中へ潜ることにした。
ダンジョンのボス討伐が目的のため、ノーマルモードの2Fからのスタートだ。
--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Normal 2F
「じゃあダッシュでボスへの階段見つけにいきましょうか」
「道中の敵はどうするんです?」
「この場合は無視かしらねぇ。掲示板見る限りじゃ、1Fとかにはかなりアクターゾンビ達がスポーンしてるみたいだけどこっちはそんなことないし……多分運が良ければ何にも会わないんじゃないかしら?」
『ソッチの方が楽だけど……それってシェイクスピアがこの掃滅戦に関係ないってことになるよね?(;^ω^)』
「そうよ。むしろそっちの方がいいでしょう?区画順位戦のラストの方で、シェイクスピアが出てくる可能性なんて考えたくないもの」
おさらいしておくと。
今現在、地上……第二区画で確認されている敵性モブはアクターゾンビに少数のソルジャーゾンビ、そしてフリューブックにそれの派生のブックゴーレム程度。
ムービーゾンビは勿論の事、コマンダーやナイトゾンビなんかも目撃報告はない。
時間経過か、それとも一定数まで全体でポイントを稼ぐことによって制限が外れていくのか。
どちらにしても、後半になればなるほど敵が強くなるイベントには違いないだろう。
問題は、際限なくスポーンし続けていることか。
「ま、その場合1Fか2Fの方に特殊なアイテムとか施設が設置されてる可能性が出てくるから、隈なく探索しないといけないのが面倒かしら」
『なるほど('ω')』
「……ところでさ、一つ聞いてもいいかい?」
「ん?」
CNVLを除くある程度ゲームの経験が長い3人で話していると、CNVLに囚人服を引かれ振り返る。
「こういう掃滅戦?っていうのには、そういうボスだったりアイテムだったりの原因ってのが大抵あったりするものなのかい?」
「えーっと……あぁ、モンスターが出てくるのにってことかしら」
「そうだね。私はあんまりそういう知識はないからね」
「まぁイベント事だったら基本的には原因となるモノは配置されたりするわね。今回の場合はモンスターを生み出している何かってことになるかしら」
基本的に、イベントというのは現在……つまりはプレイヤーが実体験する前に何かしらの原因が発生しているものだったりする。
それがお誂え向きの能力を持ったモンスターだったり、どこかの研究者が何故か作り出したアイテムだったり。それこそプレイヤー自身がトリガーになったりする例も少なからず存在する。
勿論、そんな原因はなく。
突然運営がモンスターを大量配置、スポーンさせている可能性もあったりするが……まぁこのゲーム始まって一番初めのイベントだ。そんな手を抜いたシナリオは用意していないだろう。
「成程ねぇ。じゃあアレはその原因の1つだったりするのかな」
「は?」
そうやってCNVLが指した方向には、丁度T字路のようになっている廊下があり。
私達から見て右側に曲がる道から何かがこちらへと近づいてきているのが分かった。
ぐちゃ、ぐちゃ……という音と共にソレは現れた。
ぶよぶよとしたピンク色の肉の塊。時折自重に耐えられないのか、そのピンクの肉が廊下にぐちゃっと落ちては、それらが独りでに動き出し。
そうして人のような形を成していく。アクターゾンビとなって2Fから上の階層に繋がる階段のある方向へと進んで行く。
「……うわぁ」
『……(^-^)』
「……原因ではあると思いますけど……予想外過ぎますね」
「あは、食べ甲斐はありそうだね」
そんなことを言ってる私達に気付いたのか、ソレはこちらへ身体の向きを向けた……ように見える。
【ゾンビスポーナー】。そのままな名前のピンクの肉の塊は、そのままのっそりのっそりとこちらへと近づいてきている。
「運営恨むわ。こんなの相手にするプレイヤーの気持ちにもなって頂戴」
『あ、私掲示板に書き込んでおくので任せます(;^ω^)ノ』
「……【薬を扱う者の信条】、【アタックドーピング】、【ディフェンスドーピング】」
「あれ?マギくんこういうの苦手だっけ?割と慣れてそうな気がしていたけど」
「苦手も苦手ですよ。ゾンビみたいなのは大丈夫ですが、アレみたいなのはダメです。……一応フィルター掛かってるはずなんですけど、苦手ってのはやっぱりフィルター掛かってても苦手なんですかね」
先輩後輩で何やら話している2人は置いておいて。
私はとりあえずで【HL・ナイフ】を構える。
【HL・スニッパー】ではないのは、先ほど見たように【ゾンビスポーナー】から離れた肉自体がゾンビになってこちらが数的不利に陥る可能性を考えた上だ。
それに、見た目は完全にぶよぶよとしたピンク色の肉塊でしかなく。
急所を潰したくても、その急所自体何処にあるのかがわからない。
「CNVL!出来る限り肉を切り離さないようにして!」
「そっちもッ!ねッ!!」
そうして、この気味の悪いモンスターとの戦闘が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる