Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 25

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--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画デンス セーフティエリア

「うぼぁ……死んだー……」

セーフティエリア内。
私は天使達に殺されリスポーンしていた。
デスペナルティによって全ステータスが下がっているためか、身体を動かすのも中々キツイ。

「うん、とりあえず確認だけはしておきましょうか」

戦闘中見れていなかった区画掲示板を開き、そこにある内容を見ていく。
主に私は中央の方を対処するのに動いていたため、重要拠点側の話をあまり知らないのだ。
勿論、こちらの重要拠点が破壊されたという報告があがっていないため、防衛してくれているプレイヤー達が上手い事凌いでくれているのだろう。

しかしながら、任せっぱなしにしておくこともできない。
オリエンスは兎も角、他の2つの区画の動きが全くもって読めないからだ。
中央区画の攻略に動いているのならばいざ知らず、あの場にはそんな様子のあるプレイヤー達は存在していなかった。
最悪、2つの区画は私達が中央区画の第三勢力を対処している間に攻め入ってくる可能性だってある。

「……うげ、メアリーにばれた。行かないとか」

その場で立ち上がり、手足の感覚を確かめる。
キツイことには変わりないが、それでも戦う事くらいは可能だ。
最悪【強欲性質】でも使ってステータス強化を行えばいいだろう。
外に出たらすぐに戦闘が開始すると考え、手にはハサミ状態の【HL・スニッパー改】を取り出しておいた。
再び、戦場に身を投じよう。



「ちょっとリーダー!それ俺らの獲物!」
「あら、ごめんなさいねッ!」

中央区画へと向かう道中、目の前に出てきた天使の首を鋏み切ると近くにいたプレイヤーから声があがった。
どうやら獲物の横取りをしてしまったらしい。

「この借りはあとで返すわ!今急いでるのよ!」
「いやまぁ分かってるから良いけどな!後で俺らも向かうぜ!」
「ありがとう!」

軽く頭を下げ、許してもらってからその場から走って去る。
いつものステータスではないからか、いつもよりも顔に当たる風の勢いが強くないと思いつつ。
私は足を動かし、進んでいく。
……こんなことなら、中級の印章を先に作っておくべきだったわね。

今思っても仕方ないことだと、少し肩を落としながらも自身の持つ印章を再度捺印し身体能力を強化する。
現在位置はデンスと中央区画の丁度中間辺り。
折り返しという所だろう。

こういう時にショートカットでも出来ればいいと思うのだが、生憎とそういった手段は私には存在しない。
イベント後に移動用の道具を作るのも手だろう。
メアリー辺りに相談することにしよう。

「……天使の素材とか貰えるのかしらね」

イベント後の事を考えるのなら、勿論報酬の事も気になってくる。
前回や前々回のイベントでは、報酬は選べたものの素材がメインだった。
そして今回も恐らく素材が報酬だろう。
何かしらのアイテムを貰うより、素材を貰った方が自分たちの手で加工できる分拡張性が高い。

「まぁ天使の素材を貰った所で、【犯罪者】的に合うかは分からないけれど」

特に私は合わないだろう。
印器や印章を作らないといけない都合上、四肢などは素材には適さない。
血液なんかならインクの素材には使えるだろうが、有限なものはいずれ無くなってしまうため、ラストエリクサー理論よろしく使えない可能性もある。

……ただ、あの光の武器なんかを使えるようになったら面白いわねぇ。
天使達が使う光を凝縮したような武器。
見た限り、即座に生成する事が可能で、壊れたり手から離れたとしても問題がない便利厄介なものだ。

アレがプレイヤー側で使えたらどんなに便利だろうか、と考え……1人既に使っている知り合いを思い出した。

「……あぁ、良いかもしれないわね。メアリーに連絡しておきましょうか」

私は足を止め、中央区画の方へと向かっていた身体を別の方向へと向けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

--浮遊監獄都市 カテナ 第一区画 ネース 第一階層
■【???】ソーマ

「各隊長へ伝達、第三勢力の方はデンスとオリエンスがやってるらしいから、そのままディエスを落とすのに専念してくれ」
『『『了解』』』
「偵察班、守備は?」
『順調だね。……とと、今区画から出ようとしたら通話切られるって警告が出たよ。どうするかい?』
「死なない程度に行ってきてくれ」
『りょっかーい、死なないことに関してならボクがイチバン得意だからね!』

ふぅ、と息を吐く。
第三勢力の巣窟という名のレイド戦の方には、俺達ネースは参加していない。
というのも、行ったところで参加している2つの区画のように同盟を結んでいるわけではないために、戦闘中や攻略が終わった瞬間にこちらを攻撃してくる可能性があったからだ。
流石にそんな危険な場所には行こうとは思えない。
いくらポイント稼ぎが美味しいといえど、だ。

無難に、そして計画的に相手を攻め落とす。
攻城戦では必要な心構えだろう。
俺は重要拠点を守っているため、直接前には出ないものの……所属プレイヤーにとってはこちらの方が安心できるだろう。
そんな事を考えていた時だった。

『あ、ごめーん。ちょっといいかな』
「?どうした?偵察は?」
『いやね、区画の外に出た所でソーマに用があるってプレイヤーが居てさぁ……』
「……同盟などは結ばないと言っていただろう。邪魔なら排除しろ」
『出来たらこうやって連絡してないって。かの『決闘狂い』さんだよー?』
「は?」

偵察班からまたも連絡が入ったかと思ったら。
それは聞かなければ良かったと思う連絡だった。
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