136 / 192
第四章 天使にレクイエムを
Episode 25
しおりを挟む--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画デンス セーフティエリア
「うぼぁ……死んだー……」
セーフティエリア内。
私は天使達に殺されリスポーンしていた。
デスペナルティによって全ステータスが下がっているためか、身体を動かすのも中々キツイ。
「うん、とりあえず確認だけはしておきましょうか」
戦闘中見れていなかった区画掲示板を開き、そこにある内容を見ていく。
主に私は中央の方を対処するのに動いていたため、重要拠点側の話をあまり知らないのだ。
勿論、こちらの重要拠点が破壊されたという報告があがっていないため、防衛してくれているプレイヤー達が上手い事凌いでくれているのだろう。
しかしながら、任せっぱなしにしておくこともできない。
オリエンスは兎も角、他の2つの区画の動きが全くもって読めないからだ。
中央区画の攻略に動いているのならばいざ知らず、あの場にはそんな様子のあるプレイヤー達は存在していなかった。
最悪、2つの区画は私達が中央区画の第三勢力を対処している間に攻め入ってくる可能性だってある。
「……うげ、メアリーにばれた。行かないとか」
その場で立ち上がり、手足の感覚を確かめる。
キツイことには変わりないが、それでも戦う事くらいは可能だ。
最悪【強欲性質】でも使ってステータス強化を行えばいいだろう。
外に出たらすぐに戦闘が開始すると考え、手にはハサミ状態の【HL・スニッパー改】を取り出しておいた。
再び、戦場に身を投じよう。
「ちょっとリーダー!それ俺らの獲物!」
「あら、ごめんなさいねッ!」
中央区画へと向かう道中、目の前に出てきた天使の首を鋏み切ると近くにいたプレイヤーから声があがった。
どうやら獲物の横取りをしてしまったらしい。
「この借りはあとで返すわ!今急いでるのよ!」
「いやまぁ分かってるから良いけどな!後で俺らも向かうぜ!」
「ありがとう!」
軽く頭を下げ、許してもらってからその場から走って去る。
いつものステータスではないからか、いつもよりも顔に当たる風の勢いが強くないと思いつつ。
私は足を動かし、進んでいく。
……こんなことなら、中級の印章を先に作っておくべきだったわね。
今思っても仕方ないことだと、少し肩を落としながらも自身の持つ印章を再度捺印し身体能力を強化する。
現在位置はデンスと中央区画の丁度中間辺り。
折り返しという所だろう。
こういう時にショートカットでも出来ればいいと思うのだが、生憎とそういった手段は私には存在しない。
イベント後に移動用の道具を作るのも手だろう。
メアリー辺りに相談することにしよう。
「……天使の素材とか貰えるのかしらね」
イベント後の事を考えるのなら、勿論報酬の事も気になってくる。
前回や前々回のイベントでは、報酬は選べたものの素材がメインだった。
そして今回も恐らく素材が報酬だろう。
何かしらのアイテムを貰うより、素材を貰った方が自分たちの手で加工できる分拡張性が高い。
「まぁ天使の素材を貰った所で、【犯罪者】的に合うかは分からないけれど」
特に私は合わないだろう。
印器や印章を作らないといけない都合上、四肢などは素材には適さない。
血液なんかならインクの素材には使えるだろうが、有限なものはいずれ無くなってしまうため、ラストエリクサー理論よろしく使えない可能性もある。
……ただ、あの光の武器なんかを使えるようになったら面白いわねぇ。
天使達が使う光を凝縮したような武器。
見た限り、即座に生成する事が可能で、壊れたり手から離れたとしても問題がない便利なものだ。
アレがプレイヤー側で使えたらどんなに便利だろうか、と考え……1人既に使っている知り合いを思い出した。
「……あぁ、良いかもしれないわね。メアリーに連絡しておきましょうか」
私は足を止め、中央区画の方へと向かっていた身体を別の方向へと向けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
--浮遊監獄都市 カテナ 第一区画 ネース 第一階層
■【???】ソーマ
「各隊長へ伝達、第三勢力の方はデンスとオリエンスがやってるらしいから、そのままディエスを落とすのに専念してくれ」
『『『了解』』』
「偵察班、守備は?」
『順調だね。……とと、今区画から出ようとしたら通話切られるって警告が出たよ。どうするかい?』
「死なない程度に行ってきてくれ」
『りょっかーい、死なないことに関してならボクがイチバン得意だからね!』
ふぅ、と息を吐く。
第三勢力の巣窟という名のレイド戦の方には、俺達ネースは参加していない。
というのも、行ったところで参加している2つの区画のように同盟を結んでいるわけではないために、戦闘中や攻略が終わった瞬間にこちらを攻撃してくる可能性があったからだ。
流石にそんな危険な場所には行こうとは思えない。
いくらポイント稼ぎが美味しいといえど、だ。
無難に、そして計画的に相手を攻め落とす。
攻城戦では必要な心構えだろう。
俺は重要拠点を守っているため、直接前には出ないものの……所属プレイヤーにとってはこちらの方が安心できるだろう。
そんな事を考えていた時だった。
『あ、ごめーん。ちょっといいかな』
「?どうした?偵察は?」
『いやね、区画の外に出た所でソーマに用があるってプレイヤーが居てさぁ……』
「……同盟などは結ばないと言っていただろう。邪魔なら排除しろ」
『出来たらこうやって連絡してないって。かの『決闘狂い』さんだよー?』
「は?」
偵察班からまたも連絡が入ったかと思ったら。
それは聞かなければ良かったと思う連絡だった。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる