ゲームクリアから始まるRPG転生生活〜序盤で死ぬ勇者村のモブに転生したのでとりあえず復活前の魔王の心臓を刺してゲームクリアしてみた〜

taki210

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第十五話

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「ぬ、抜きやがった…」

「いや…これは抜いた…ってことなのか…?」

地面ごと勇者の剣をぶっこぬいた俺を、男たちは呆然と見つめている。

「まぁ…これもありかな」

俺は勇者ではないので、この剣が普通に抜けるとは思ってなかった。

ただ単にレベル999の力を試したかっただけなのだが…

しかしまさか俺の力に地面が耐えられなくなって壊れるとはな。

予想外だが、今更剣を元に戻すわけにもいかないし、俺はそのまま勇者の剣をもらっていくことにした。

「おら」

「「「…!?」」」

剣に引っ付いてきた地面の部分を殴ると、地面が粉々になって白銀の刀身が現れた。 

「なかなかだな」

勇者の剣を眺めて俺はそんな感想を漏らした。

あまりに強力すぎる生と死の剣を普段から使っていても戦闘に面白みがない。

よほどのことがない限りは、この剣を使って戦っていくことにしよう。

「さて…」

勇者の剣を手に入れた俺は、婆さんの方を見る。 

「し、信じられないよ…まさかこんな…」 

かつて勇者パーティーの一員だったエルフの婆さんは、勇者の剣を地面ごと引っこ抜いて自分のものにした俺を唖然と眺めていた。

「なんということだい…まさかこんな形で勇者の剣が…」

「すまんな、婆さん。俺は勇者じゃないかもしれないけど…でも抜けたから貰っていくぜ」 

「お待ち!!」

立ち去ろうとする俺を婆さんが止めてくる。

「これを持っていきな」 

「お…」

くれるのか。

風の指輪。

俺、勇者じゃないけど。

勇者の剣を抜いたから、俺に指輪を託すのか。

「何です、これ?」

「風の指輪だよ」

婆さんが俺に渡してきたのは、やはり風の指輪だった。

「風の指輪?」

「つけるだけで風の加護を受けられる。足が早くなるし、跳躍力だって上がる」

「ええ!?レアアイテムじゃないか!!」

あくまで初見のふりをして、俺は驚く。

ふふんと婆さんが鼻を鳴らした。

「持っていきな。お前にこそふさわしいものだ」

「いいのか?貰ってしまって」

「ああ。構わない。この剣を抜くやつにあげようと思っていたんだ」

「そうなのか…じゃあ、遠慮なく」

俺は風の指輪を受け取った。 

婆さんが満足げに頷く。

「頑張るのだぞ……世界を救う次代の勇者よ」

「え…?」

「何でもない。行くがいい」

「お、おう」

婆さんが聞こえないように何かを呟いた。

尋ねても教えてくれない。

だが、俺はなんと言ったか知っている。

多分「世界を救うことになる勇者よ、頑張れ」みたいなセリフだったと思う。

けど、すまん、婆さん。

俺、勇者じゃないんだ。

勇者はアレル。

俺は本来死ぬ予定だった勇者の幼馴染にすぎない。

「それじゃあ、俺はこれで」 

俺は婆さんに別れを告げてその場を後にする。

ずっと勇者が現れるのを待っていた婆さんは、満足そうに俺のことを眺めていた。

この剣と指輪。

アレルの修行編が終わったら流石に渡してやるか。

それまでは俺がありがたく使わせてもらうとしよう。


「さて…次のイベントはどれにするかな」

勇者の剣のイベントを回収した俺は、次にクリアするイベントを王都の景色を見回しながら考える。

王都はイベントや隠しストーリー、設定の宝庫である。

俺はゲームプレイ時の記憶を呼び起こしながら、リプレイの感覚で次に挑むイベントを選ぶ。

「そうだ。あれにしよう」

少し離れたところにある防具店が目に留まった。

こじんまりした個人経営の防具店だが、あそこで起こるイベントをこなせば、ただで高級防具を手に入れることが出来る。

「ごめんください」

俺は嬉々として防具店の中に入っていった。

「おう、らっしゃい」

出迎えたのが、禿頭の二メートルの巨漢。

こいつの名前はギガスと言って、この防具店の店長である。

元々はこの辺りで名の通った戦士であり、引退した後にこの店をオープンした……と設定資料集には書いてあった。

ギガスの店に売られている防具はどれも高価なものばかりで、簡単に手の届く者ではないが、あるイベントをクリアするとその防具をただで譲ってくれるのだ。

「何を探してんだ?小僧。金はあるのか?」

俺を見たギガスが、そんなふうに威圧してくる。

大方俺の見た目から大した客じゃないと侮っているんだろう。

まぁ、金を持っていないのでその通りではあるが。

「防具が欲しい」

「ん…?お前、その剣…なんかあれに似てないか?絶対に抜けない勇者の剣」

ギガスが俺が持っている勇者の剣を指差してそう言ってきた。

む。

鋭いな。

「気のせいだろ」

「…そうかぁ?」

ギガスが俺の勇者の剣をジロジロ眺める。

「やたら似ている気がするが……しかし、お前みたいなヒョロガキがあの剣を抜けるはずもないか…その昔、俺様も挑戦したが、抜けなかったしな」

「へぇ、そうなのか」

ギガスも勇者の剣に挑戦したのか。

どうでもいい裏設定をゲットしてしまった。

「で、何のようだ、小僧。冷やかしか?悪いがお前が帰るような防具はここには置いてないぞ」

「この店で1番高い防具をくれ」

「…は?」

ギガスが正気か?という目で見てくる。

そんなギガスに俺はいった。

「聞こえなかったか?1番高い防具をくれよ」

「…本気で言ってるのか?小僧」

「もちろん」

「…それは…俺と例の勝負をする、ってことでいいんだな?」

俺を見下ろしながら確認してくるギガスに、俺は頷いた。

「ああ。そうだ。あんたとの腕相撲。勝てばこの店で1番高い防具をタダで譲ってくれるんだろ?」

それがこのギガスの防具店で起きるイベントの内容だった。
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